毎日新聞が連載記事で取り上げた川原湯温泉の老舗、山木館の若旦那さんが朝日新聞群馬版でも取り上げられました。
八ッ場ダムの水没地にあった川原湯温泉は、往時は20軒近くの旅館があり、飲食店などが軒を並べる一大観光地でした。ダム建設に伴い、川原湯温泉はダム湖畔に造成された代替地に移転することとなり、これまでに山木館などの旅館5軒、飲食店3軒が営業を開始しています。山木館の若旦那(樋田勇人さん)の言葉、「行政の計画は年をとらないけど、住民は年をとってだんだん気力もなくなる」は、八ッ場ダムと住民との関係を示唆しています。
一方、昨日のNHKニュースによれば、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、伊香保温泉ではキャンセルが1万7000人分キャンセルされたとのことです。現時点では群馬県ではまだ感染者の報告はありませんが、多くの観光客が自粛ムードで、群馬県の観光業にとっての打撃が懸念されます。
◆2020年2月27日 朝日新聞群馬版
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14380821.html
ー(SCENE)八ツ場ダム、元気は沈まぬー
この春完成する八ツ場(やんば)ダム。群馬県長野原町の川原湯温泉で江戸時代から360年ほど続く老舗旅館「山木館」からは、すでに試験貯水で水をたたえたダム湖が望める。
15代目の樋田勇人さん(25)は前橋市育ち。高校3年の夏に山木館でアルバイトをした際、跡取りにと声を掛けられた。大学在学中に、親戚で14代目の洋二さん(72)と文子さん(71)夫婦の養子となった。
川原湯に来てから、70年近くダム計画にほんろうされた先人たちの苦労を知った。10年前に亡くなった13代目の富治郎さんはダム反対期成同盟の委員長から町長に。国や県と板挟みになり、条件付き賛成へと転じた。洋二さんはダムを前提とした地域の再生について数十年悩み続けた。
水没した旧温泉街から移った高台の造成地で再開した旅館は5軒。最盛期の4分の1程度だ。住民の流出と高齢化も進んだ。「行政の計画は年をとらないけど、住民は年をとってだんだん気力もなくなる」と勇人さんは実感している。
そんな川原湯で1月20日の早朝、400年続くとされる伝統の奇祭「湯かけ祭り」があった。地元で貴重な若手の勇人さんも下帯姿で参加した。「不安はある。ただ、話題性のあるダムを観光資源に活用し、町を元気にしたい。訪れた人たちの人の輪が次々と生まれるような旅館にしたい」。ダムツアーの企画やガイドにも精力的な若旦那。まなざしは真剣だ。
(文・丹野宗丈、写真・長島一浩)