草津温泉の玄関口、長野原草津口駅についての記事が載っていました。
八ッ場ダム予定地にはJR吾妻線が走っており、川原湯温泉駅と長野原草津口駅という二つの駅があります。このうち川原湯温泉駅は水没予定地にあるため、水没地より標高の高い位置に新駅を建設中です。一方、長野原草津口駅はダム湖予定地の最上流に位置し、水没はしません。しかし、この地域の公共施設はほとんどすべてがダム事業によって一新されることになっており、長野原草津口駅の駅舎も新しくなります。
年間の観光客が270万人といわれる草津は、この地域の商業上の中心地です。首都圏方面から草津へ車で向かう観光客は八ッ場ダム予定地を通過するため、ダム事業によってメインロード沿いに建設された道の駅や、再建される川原湯温泉も、草津の観光客を惹きつけることがビジネス上の大きな目標になります。
ダムは山の奥地に造られるのが一般的で、八ッ場ダムのように上流に草津温泉のような大きな観光地を抱えるダムは前例がありません。
かつて草津温泉では、八ッ場ダム事業によって国道が拡幅され、交通の利便性が高まることを期待して、八ッ場ダム事業が強力に推進された経緯があります。新しい国道が建設され、交通の便がよくなった草津温泉は一人勝ちという声も聞かれますが、温泉観光業はかつてよりはるかに厳しい状況にあります。止まらない八ッ場ダム事業と草津温泉は、今後、どのように関係し合ってゆくのでしょうか。
共同通信、読売新聞の記事には、大沢群馬県知事のほか、地元選出の山本一太参院議員、小渕優子衆院議員らがテープカットをする写真が載っています。
記事を転載します。
■2013年7月28日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130728100580001.html
-長野原草津口駅、新駅舎完成祝うー
八ツ場ダム建設に伴う生活再建対策として整備されたJR長野原草津口駅(長野原町長野原)の新駅舎の完成式典が27日あった。8月1日から利用できる。
式典で、山本一太沖縄・北方相は「八ツ場ダムは民主党政権下で迷走を続けたが、安倍政権は完成に向けてしっかり対応する」、小渕優子財務副大臣は「不安な気持ちで過ごさせてしまったことをすまなく思う。生活再建もスピード感をもってやる」と述べた。
大沢正明知事は、この日も2015年度完成と非現実的な八ツ場ダムの基本計画変更を国に要求。高山欣也町長は「町でも駅前広場を整備中で周辺地域の振興を図る」と決意を示した。
新駅舎は総事業費14億3千万円。国、県、JRが3分の1ずつ負担し、県には群馬と下流4都県による基金の補助が出ている。草津温泉などの観光地への玄関口で、情報発信や物産展示のコーナーを設置。高齢者や身体障害者が利用しやすいつくりにもなっている。(小林誠一)
■2013年7月28日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20130728-OYT8T00026.htm
ー長野原草津口駅 吾妻の顔にー
八ッ場ダム(長野原町)建設に伴う生活再建策の一環として、県などが整備していたJR吾妻線・長野原草津口駅の新駅舎完成式が27日、関係者約70人が出席して開かれた。8月1日から利用を始める。
新駅舎は旧駅舎の西側に位置し、鉄骨2階建て。1階には改札のほか、長野原町や草津町、中之条町などの観光情報や地元の特産品などを紹介する「情報スペース」がある。総事業費は約14億円。
大沢知事は「駅が吾妻の顔として地域活性化に寄与することを期待する」と述べた。来賓の山本一太沖縄・北方相は「八ッ場ダムは民主党政権下で迷走を続けたが、参院選で『ねじれ』も解消されたので、完成への動きをしっかりさせたい」と語った。
■2013年7月27日 共同通信配信
(北海道新聞、河北新報、東京新聞、福井新聞、西日本新聞、熊本日日新聞などに掲載)
http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013072701001457.html
-八ツ場ダム再建事業の新駅舎完成 群馬県長野原町ー
八ツ場ダム(群馬県長野原町)で水没する地元住民の生活再建事業の一環で、県とJR東日本が建設した長野原草津口駅(吾妻線)の新駅舎の完成式が27日、開かれた。8月1日から乗客の利用を開始する。
県は「首都圏からの観光客の玄関口で、地域振興の核となる施設」として昨年8月に着工。国の補助金など約14億3千万円をかけて建設した。
八ツ場ダムは、2009年の衆院選で政権交代を果たした民主党が目玉公約の一つとして建設中止を掲げたが、自民党が政権奪還して13年5月にダム本体関連工事の入札公告が始まった。14年度中に本体着工する見通し。
■2013年7月25日 日本経済新聞
-「草津温泉駅」は幻に 八ツ場ダム予定地に新駅舎 ー
八ツ場ダムが建設される群馬県長野原町にあるJR長野原草津口駅の新しい駅舎がほぼ完成し、8月から利用が始まる。ダム予定地周辺の活性化を目的とした「生活再建事業」の一環だ。同駅は日本有数の温泉地、草津温泉(草津町)の最寄り駅でもある。新駅舎の開業を機に駅名を「草津温泉」に変更しようという構想もあったが、幻に終わった。
長野原草津口駅は高崎駅から特急で1時間余りで、1日の平均乗車人員は700人弱。新駅舎は下部が石垣、上部が木を使った和風建築で、観光情報などを発信するコーナーも併設する。現在の駅舎の隣に建設中で、完成間近だ。
八ツ場ダムはまだ本体着工の見通しが立っていない。しかし付け替え道路や用地買収などは周辺住民の生活を補償するため、「生活再建事業」として民主党政権の時から継続している。長野原草津口駅は水没しないが、同事業で建て替えた。工費は約14億円で、JR東日本、国、群馬県のほか、東京都など下流の自治体が負担している。
長野原草津口駅から草津温泉まではバスで20~30分。駅利用者の多くが草津への観光客だ。草津温泉観光協会はJR東日本に新駅舎開業を機に駅名を「草津温泉」または「草津温泉口」に変更してほしいと申し入れたが、「多額な費用が必要で難しいといわれた」(山田寅幸会長)。JR東日本によると、一般に駅名の改称には、看板の交換や各地の券売機の変更などで2億~3億円必要という。
実は費用の問題がなくても駅名変更に反対の草津の観光関係者は少なくない。ある旅館の女将は「草津温泉駅になれば、駅まで送迎バスを出さざるをえなくなる」と話す。送迎バスを出すとなれば、中小の業者にとって負担は小さくない。
ただ、観光客の利便性を考えれば、駅名変更の有無にかかわらず、送迎は検討せざるをえない課題である。これまでは駅前広場が狭く、路線バスやタクシー以外の車両が乗り入れるスペースはほとんどなかった。これを理由に送迎を断ることができたが、新駅舎に合わせて広い駅前広場も整備される。どこかが送迎を始めれば、競争上、追随する業者が相次ぐ可能性も十分ある。
長野原草津口と草津温泉を結ぶ路線バスは学生や病院に通うお年寄りが利用する生活路線でもある。「観光客が旅館の送迎バスに乗り、利用者が減れば、地域の足の存続が危ぶまれる」との声も漏れる。
年間270万人が訪れる観光地、草津の観光関係者はどのような選択をするのか。(前橋支局長 鈴木禎央)