八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム水陸両用バス、自動操縦を実証実験

 八ッ場ダムの貯水池で来月、運航が始まる水陸両用バスが自動運転の実証実験を行うとの記事が、地元紙・上毛新聞の一面トップに掲載されました。
 ダム湖の貯水位は、7月1日から10月5日までの期間(洪水期)、洪水に備えて555.2m以下に下げられます。(⇒「八ッ場ダム湖の水位変動と水陸両用バス」
 八ッ場ダム事業では水没する上湯原橋や下田橋を撤去することになっていましたが、なぜか撤去せずに終わりました。ダム湖には伐採されずに沈んだ樹木が立ち枯れているところもあります。水位が下がると橋や樹木が障害になりますので、洪水期の水陸両用バスの運航コースは限られたものになると考えられます。 
 水陸両用バスの自動操縦が八ッ場ダムを抱える地域の振興にどのように役に立つのでしょうか?

 参考までに、ダム湖と橋の位置関係を示した国交省の資料を以下に掲載します。

下図=「八ッ場ダム水面利用協議会説明資料」より、「水面利用の前提となる条件(吾妻川縦断図)」

 

◆2020年6月16日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/219501
ー八ツ場の水陸両用バス 自動操縦を実証実験 日本財団が支援へー

  日本財団は、海運や造船、ITなど40を超える企業・団体が2021年度末までに、群馬県の八ツ場ダム(長野原町)での水陸両用バスを含め、五つの無人運航船の実証実験を始めると明らかにした。八ツ場ダムでは、IT企業など5社・団体でつくるコンソーシアム(共同事業体)が湖上や陸地を行き来する自動操縦に挑戦する。日本財団は本年度、五つの実験に計約34億円を支援し、世界に先駆けて25年までの実用化を目指す。

◎離島の物流体制構築にも活用
 八ツ場ダムでの実験は、IT企業のITbookホールディングス(東京都)、通信機器メーカーのエイビット(同)、埼玉工業大(埼玉県)のほか、有人での水陸両用バスの観光利用を計画する長野原町と日本水陸両用車協会(東京都)が参加する。

 自動車用の自動運転システムを改良して水陸両用バスに搭載。本年度は有人での観光運用時に速度や揺れなどに関するデータを収集し、データを基に21年度に自動操縦の試行に入る。

 実験結果は観光面での利用にとどまらず、離島などでの物流体制の構築にもつなげていくとみられる。実験の詳細について町などは7月3日、記者会見で明らかにする。

 実験で利用する水陸両用バスは県内で初めて町が導入し、7月中下旬の観光利用の開始を目指している。現在、運転手(船長)の養成、運航ルートの調整を進めている。

 日本財団は八ツ場ダムでの実験に本年度分として約2億3000万円を支援する。

 八ツ場ダムでの実験のほかに、太平洋上でのコンテナ船の実験や、敦賀(福井県)-苫小牧(北海道)を航行するカーフェリーによる座礁の回避などの実証を予定している。

 厳しい労働環境で働く船員の人手不足と高齢化が深刻化しており、無人運航は解決策として期待される。財団によると、国内を運航する船の半分を40年までに無人化できれば年1兆円の経済効果が期待できるとする。

 日本財団の笹川陽平会長は「日本が先鞭をつけることで、無人運航の国際的なルール作りに大きな影響力を持つことができる」と強調している。

◆2020年6月16日 NHK群馬ニュース
https://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/20200616/1060007038.html
ー水陸両用バスの自動運転実験へー

 長野原町の八ッ場ダムで来月から導入される水陸両用バスを使って、自動運転の実証実験が行われることになりました。
実用化が進めば、海運の分野での人手不足などの課題の解決につながると期待されています。

 この春、完成した八ッ場ダムでは、地元の長野原町が観光の呼び物として水陸両用バスを導入し、ダム湖と周辺を巡るツアーを企画していて、来月の運航開始を前に試験運転が始まっています。

 長野原町と日本財団、それに東京のIT企業や埼玉工業大学などは、この水陸両用バスを使って自動運転の実証実験を行うことになりました。
船などの海運の分野での自動運転の研究はこれまではほとんど行われていないということで、自動車の自動運転のシステムを応用する形で開発を進めるということです。
 そして来年度末までに自動で操縦する実験を行い、安全性などを確認した上で、5年後までに実用化を目指すとしています。

 日本財団によりますと、船の運航に関わる人たちの高齢化や人手不足が深刻になっていることから、実用化が進めばこうした課題の解決につながると期待されるということです。
 長野原町ダム対策課の黒岩久一課長は、「自動運転が開発されれば離島などでの交通にも活用できると聞いている。実験が成功してほしい」と話していました。
また、日本財団の海野光行常務理事は「水陸両用の自動運転の開発は、世界初の取り組みとなる。世界をリードする技術が群馬で開発されることを期待しています」と話しています。

◆2020年7月4日 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/96aecfcbebff932f291c48a0f03c07fb78abb45c
ー水陸両用車、世界初の自動運航実験 群馬・八ッ場ダム 事故減少狙うー

 群馬県長野原町などは3日、八ッ場ダム(同町)のダム湖で、水陸両用バスの自動運航に関する実証実験を世界で初めて実施すると発表した。日本財団の支援で2021年度末までに行われる無人運航船の実証実験の一つ。財団は25年までの実用化を目指しており、無人運航船が実現すれば船員不足の解消のほか、人為的ミスが原因の8割とされる海難事故の減少につながると期待される。

 車の自動運転に関する実証実験は各地で行われているが、水上は陸上に比べて揺れが大きいためセンサーによる障害物の認識が難しく、船舶の自動運転の実用化には課題が多い。今回の実証実験は22年2~3月、長野原町▽埼玉工業大▽IT企業「ITbookホールディングス」(東京都)――など五つの企業・団体で組織するコンソーシアム(共同事業体)で実施。日本財団が安全性の検証をする予定だ。

 20年春に完成した八ッ場ダムでは、観光振興を目的に水陸両用バスが7月下旬に導入される。20年は11月までの利用が検討されており、それが終わる冬季に自動運転設備を設置する。

 八ッ場ダムは計画浮上から完成まで68年かかり、工事が一時中断するなど紆余(うよ)曲折を経てきた経緯がある。萩原睦男町長はこの日の記者会見で「問題視されてきたダムをブランドに変えたい。町の新たなイメージを作っていければ」と実験への期待感を示した。【菊池陽南子】

◆2020年7月4日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/39836
ーザブン!水陸両用バス 八ッ場ダム、今月末から観光運行ー

 地方自治体のICT(情報通信技術)コンサルティングを手掛ける「ITbookホールディングス」(東京都)など五団体は三日、八月に開業予定の長野原町の地域振興施設「川原湯温泉あそびの基地NOA」で記者会見を開き、今月末から同町の八ッ場ダムで水陸両用バスの観光向け有人運行を開始すると発表した。運行は水陸両用の無人運転技術を開発するのが目的で、日本初の試みという。二〇二二年二〜三月に約一週間予定する実証実験に向けて開発する。(市川勘太郎)

 観光向けでは、当面は道の駅八ッ場ふるさと館が発着地となる。陸路で八ッ場ダムに向かい、乗客は降車しダムを見学する。再度乗車し、八ッ場あがつま湖に入水。水路で八ッ場ダム付近まで行き、道の駅に戻る。約八十分のコースで料金は大人三千五百円、中学生以下二千円の予定。

 開発には、長さ約一一・八メートル、幅約二・五メートル、乗車定員最大四十二人の水陸両用バスを使う。湖が凍結する冬季は有人運行せず、実証実験に向け自動運転に必要な機器を取り付ける。二一年春ごろから運行を再開し、技術開発を進める。

 五団体のうち残る四団体では、長野原町が水陸両用車と湖面管理をし、NPO法人日本水陸両用車協会が運行を手掛ける。埼玉工業大は湖に入る際や水上運行のための遠隔操作技術を開発する。遠隔操作に必要な通信技術は通信機器メーカーのエイビット(東京都)が支援する。
 本年度予算は約二・五億円で、約二億円を日本財団が支援し、その他はITbookが負担。同町の萩原睦男町長は「町の新たなイメージを発信していきたい」と期待を込めた。