天ヶ瀬ダム再開発事業、水路トンネル貫通

 京都で工事中の天ケ瀬ダム再開発の水路トンネルが貫通したという記事をお送りします。
 天ヶ瀬ダム再開発事業は当初計画では工期1998~2001年度、事業費330億円でしたが、現在は完成予定2021年度、事業費660億円となっています。

 すでに2500基ものダムが建設されているわが国では、新たなダム建設の適地が残されていないことから、近年、国土交通省は既存のダムの機能強化を目的とした再開発事業を積極的に進めています。天ヶ瀬ダム再開発事業もその一つです。
右画像=天ヶ瀬ダム再開発事業HPより

 天ヶ瀬ダムは淀川水系のダムの一つです。2000年代中頃、ダム偏重の河川行政の見直しを目指した国土交通省近畿地方整備局の淀川水系流域委員会は、天ヶ瀬ダム再開発事業とともに、余野川ダム、丹生(にう)ダム、川上ダム、大戸川(だいどがわ)ダム)の各建設事業の中止を勧告しました。しかし、その後の改革への揺り戻しにより、余野川ダム、丹生ダムは中止になったものの、天ヶ瀬ダム再開発、川上ダム、大戸川ダムは推進になりました。

 天ヶ瀬ダム再開発は治水機能の増強を名目としており、トンネル式放流設備も治水が目的とされていますが、機能を増強(放流能力を毎秒1500トンに拡大)しても、ダム下流の流下能力が低く、計画通りの放流を行うためにはきわめて大規模な河床掘削等の工事が必要となり、巨額の費用と長い年月を要します。
 また、この水路トンネルにより、京都府は新規水源を確保することになるのですが、全国の他の地域と同様、京都府水道の給水量も減少傾向になっています。今後は京都府の人口の減少に伴って、給水量がさらに縮小していくと考えられます。

(参考ページ)
★国土交通省近畿地方整備局 天ヶ瀬ダム再開発事業HPより 
 https://www.kkr.mlit.go.jp/biwako/amadam/outline.html
 「事業の目的」

★水源開発問題全国連絡会ホームページより
 http://suigenren.jp/news/2017/11/14/9718/
 「淀川水系の天ヶ瀬ダム再開発事業の虚構」

◆2020年7月23日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/313852
ー国内最大級の水路トンネル貫通、光差し込む 京都・天ケ瀬ダムに放流設備、豪雨対応を強化ー

  宇治川にある天ケ瀬ダム(京都府宇治市槙島町)を機能強化する国土交通省近畿地方整備局の再開発事業で、ダム湖の水を最大毎秒600トン流せるトンネル式放流設備(全長617メートル)が22日、貫通した。既存のダム本体と合わせて放流能力が同1500トンに拡大することで、宇治市など下流に向けた洪水調節能力の増強と、上流の滋賀県での浸水被害軽減を見込む。トンネルを含む再開発事業の完成は2021年度末の予定。

 トンネルはダム本体の左岸側を迂回する。ダム湖から流入した水は直径10・3メートルの導流部を下った後、水の勢いを緩める幅23メートル・高さ26メートルの減勢池部に達し、宇治川に流れる。水路トンネルとしては国内最大級。この日の貫通は報道陣に公開され、流入部と導流部をつなぐ厚さ1・5メートルの岩盤を工事業者が重機で穴を開けた。貫通後も減勢池部の内側工事などを続ける。

 天ケ瀬ダムでは豪雨時、ダム湖で水をためながら、その一部を宇治川に放流する。トンネルが加わって放流能力が強化されることで、宇治市など下流への洪水調節機能がより長く持続し、規模の大きい豪雨にも対応しやすくなる。上流の滋賀県にとっては琵琶湖の水位がより早く低下するようになり、琵琶湖沿岸部の浸水被害が軽減する。

 利水活用も増え、京都府は新たに1日約5万2千トン(約17万人分)の水道水を確保できる。また水を早く放流できるため、雨の多い夏場でも、天ケ瀬ダム上流にある揚水発電用の喜撰山ダム(宇治市)が多くの水を送れ、新たに11万キロワットを電力供給できる。

 天ケ瀬ダム再開発事業を巡っては、当初330億円と想定していた事業費が、トンネル工事現場付近でもろい地層が見つかったり、人件費が高騰したりで、660億円に倍増。完成時期もたびたび延びて21年度末となっている。

◆2020年7月22日 NHK関西
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200722/2000032715.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
ーダムからの地下水路トンネル貫通ー

 京都府宇治市にある天ヶ瀬ダムで、大雨の際、水の放流を効率的に行うための地下水路が来年度、完成するのを前に、水路のトンネルを貫通させる作業が行われました。

 宇治市にある天ヶ瀬ダムでは、平成25年から、ダムの貯水池から直接下流の川に通じる全長600メートル余りの地下水路の建設を進めています。
22日はこの地下水路の取水口近くで、工事関係者が掘削機を用いて水路のトンネルを貫通させる作業が公開されました。
 報道関係者がトンネルの薄闇の中で見守る中、15分ほどかけて厚さ1メートル余りの岩盤に、外側から直径1メートルほどの穴が開けられると、地面にたまった湧き水に光がきらきらと反射していました。
 地下水路は来年度の完成を予定していて、下流にある放水口付近は、高さが26メートル、幅23メートルで地下水路の規模としては日本最大級だということです。

 国土交通省琵琶湖河川事務所の味田悟 副所長は「今回の水路によって水害のおそれが減り、住民のより安心で安全な暮らしにつなげていくことができると思います」と話しています。

◆2020年7月23日 朝日新聞京都版
https://digital.asahi.com/articles/ASN7Q7T82N7QPLZB00B.html
ー岩盤から光 天ケ瀬ダムで水路トンネルが貫通ー

  天ケ瀬ダム(京都府宇治市)の放流量を増やす国の再開発事業をめぐり、整備していた水路トンネル(617メートル)が22日に貫通し、報道陣に公開された。

 貫通したのは、ダム湖(鳳凰(ほうおう)湖)から宇治川へ流すトンネル流入部(入り口)。地下約40メートルにある厚さ約1・5メートルの岩盤に重機で穴を開けると、投光器の光が漏れた。今後、直径10・3メートルのパイプ状にする。

 宇治川への出口(吐口部)に近い部分は水勢を弱めるため、高さ約26メートル、幅約23メートルの巨大トンネルになる。2022年に完成予定で、放流能力は毎秒900トンから1500トンに増える。下流だけでなく、上流の琵琶湖周辺の洪水軽減も図れるという。(小西良昭)