八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

利根川の河川改修工事

 利根川の治水において最も重視されているのは、利根川が関東平野に入り、多くの支流を集めて流れる群馬県平野部から埼玉県平野部にかけての区間です。八ッ場ダム計画のきっかけとなった1947年のカスリーン台風水害では、利根川と支流の渡良瀬川の合流地点のすぐ下流に位置する埼玉県栗橋付近で利根川の堤防が決壊し、大きな被害をもたらしました。

 この台風豪雨では、八ッ場ダムが試験湛水中で、ダムが完成した今年4月以降であったら利水容量として貯めていた分まで洪水を貯めることができました。しかし、遠い山間のダムの洪水調節効果は平野部では減少してしまいます。
 台風による豪雨の後、公表された以下の論考によれば、利根川中流部の埼玉県栗橋地点における八ッ場ダムの水位低減効果は、わずか17cmでした。一方、栗橋地点の利根川の河床は、上流からの土砂で河川整備計画で求められた位置より70cmも上昇していました。
写真=2019年10月の台風襲来後、利根川の河川敷には洪水で流れてきた大量の土砂。(前橋市の群馬県庁の上流側)

「台風19号、利根川における八ッ場ダムの洪水調節効果」
 

 国土交通省は限られた治水予算の中で、ダム事業を優先し、河床掘削などの河川改修を後回しにしてきました。それでも、首都圏を流れる最重要河川とされる利根川の本川は、他の河川より予算が潤沢で、堤防なども余裕をもってつくられているため、昨年の台風豪雨でも、玉村町から埼玉県栗橋地点にかけての中流域では最高水位は堤防の天端より2メートル以上も下でした。

 利根川中流部に位置する群馬県玉村町では、昨年11月以降、大規模な河床掘削などの河川改修工事が行われています。7/25付けの上毛新聞では、昨年の台風19号の際、玉村町でも利根川本流以外で内水氾濫があったことを伝えています。
 玉村町は利根川の治水基準点のある群馬県伊勢崎市八斗島のすぐ上流側にあり、烏川が利根川に合流する重要区間です。利根川の管理は、伊勢崎市八斗島より約5キロ上流地点(玉村町)より上流側が群馬県、下流側が国土交通省となっています。

 玉村町在住の会員によるレポートを紹介します。2メートルもの深さの土砂が掘削されていることなどが現場の写真からよくわかります。

★野道 山道 「利根川で土砂を撤去」
 https://geoharumi.blogspot.com/2020/06/blog-post_4.html

「このあたりの利根川の川筋では、手を付けていない所はないのではと思うほど、あちらでもこちらでも、土嚢を積んだりコンクリートのブロックが敷き詰められたり、浚渫したり、工事が行われています。」
「利根川は洪水の対策がよく行われる川と思うのです。一方で、中小河川の氾濫が大きな被害を起こしてもいます。みなさんの近所の川はどうですか。」

◆2020年7月25日 上毛新聞
ー玉村町 川監視カメラ ネットに映像ー

 台風の本格的なシーズンを前に、玉村町は川の水位を監視するカメラを3カ所に設置し、インターネットで閲覧できるシステムを整える。昨年10月の台風19号(令和元年東日本台風)で内水氾濫のあった五料、上福島両地区には水防倉庫を新設。地区アプリを活用した「内水氾濫マップ」も新たに作成し、住民の自助、共助に役立ててもらう。

 カメラは烏川支流の矢川沿いに1カ所、利根川支流の高橋川沿いに2カ所設置する。いずれも台風19号で川の水があふれ、周辺に内水被害をもたらした。9月までに、住民がスマートフォンなどで映像を確認できるようにする。

 土のうを備蓄する水防倉庫は五料、上福島両地区に一つずつ新設する。台風の事前対策として住民が自由に利用することを想定する。

 過去の被災状況をもとに作成した「内水氾濫マップ」は、地図アプリ上に浸水が想定される地域や道路を表示する。町環境安全課は「危険な場所を周知し、事前に避難ルートを確認しやすくすることで、万が一への備えを後押ししたい」としている。

 台風19号を巡っては、同町で最大約1600人が避難所に身を寄せたほか、住宅の床上、床下浸水や道路冠水が各地で発生した。県は伊勢崎、玉村地域の利根川の護岸工事を進めており、6月には全長2.6㌔にわたって大型土のうを積み上げる緊急工事を終えた。2024年度までに築堤するなどの河川改修も行う。