2015年9月の台風(関東・東北豪雨)では利根川水系の鬼怒川が決壊し、茨城県常総市などで甚大な水害となりました。
豪雨による水害が多発する中、ダムや堤防を中心としたこれまでの対策では、洪水に対応しきれなくなってきています。国土交通省は新たな治水対策として「流域治水」を打ち出しており、鬼怒川と小貝川でもこの方針を具体化する動きが始まっています。以下の記事では、流域治水を目指す協議会の初会合で、各市長から内水氾濫などについて具体的な要望や提言が相次いだことを伝えています。
なお、鬼怒川水害を巡っては、被災住民が2018年8月に国家賠償を求める訴訟を起こしています。
◆2020年8月5日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200805/ddl/k08/010/038000c
ー鬼怒川・小貝川 「流域治水」強化へ 10市町が水害対策、協議会設立ー
鬼怒川と小貝川の流域10市町と国や県が協力して水害対策に取り組む「鬼怒川・小貝川下流流域治水協議会」が4日、設立された。国が打ち出した、流域自治体などが一体になって対策を進める「流域治水」の方針に基づく取り組みで、協議会の設立は県内では初。総合的なメニューを2021年3月をめどに練り上げる。【安味伸一】
近年、国内では気候変動が原因とされる豪雨が多発。従来の治水対策の柱だったダムや堤防では対応しきれず、深刻な洪水被害が続いている。
このため国土交通省は治水政策を転換し、7月に流域の自治体や住民と共に行う「流域治水」による防災・減災施策を公表した。例えば雨水を一時的にためたり、排水したりする施設を流域に整備する施策などが考えられるといい、各主要河川ごとの具体策は、協議会を設置してまとめる。
この日の初会合は新型コロナウイルス感染防止のためウェブ会議で開催。事務局の国交省下館河川事務所の工藤美紀男所長が「皆さんとより良いものをつくりたい」とあいさつした後、各首長らが現在の取り組みや意見を述べた。
常総市の神達岳志市長は「昨年の台風19号以上の雨が降ると中心市街地が水につかる。内水氾濫対策を進めたい」と述べた。筑西市の須藤茂市長は「小規模な遊水地の整備は有効な内水氾濫対策になる」と提言。
下妻市の菊池博市長は「鬼怒川の堤防では樋門(ひもん)、樋管(ひかん)など一部で幅が狭い箇所がある。対応を期待する」と要望。龍ケ崎市の中山一生市長は「流域で降った雨が下流にどんな影響を与えるのか、刻一刻と情報を教えてもらうことが自治体の判断材料になる」と求めた。
◆2020年8月5日 茨城新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/156831a3447fe31bfaef11294bd2c866e24f3993
ー鬼怒川・小貝川の防災情報共有、発信へ 国・茨城県10市町村 流域治水協が発足ー
筑西や常総など茨城県内10市町と国、県で構成される「鬼怒川・小貝川下流流域治水協議会」が4日、発足した。内水氾濫を含む両河川流域の防災対策や浸水被害軽減策などの情報を交換・共有し、住民に分かりやすく発信することが狙い。同日、事務局が置かれる筑西市二木成の国土交通省下館河川事務所と各市町をオンラインで結び、初会合が行われた。
同協議会は1級河川の流域ごとに立ち上げられ、同省関東地方整備局管内では初めての設立となる。両河川流域の筑西、結城、下妻、八千代、つくば、常総、つくばみらい、龍ケ崎、守谷、取手の10市町の首長と、県土木部長、国交省下館河川事務所長で構成。同省の築堤整備をはじめ、各市町による雨水貯留施設の計画、防災対策、県管理の支流河川整備計画などの情報を交換し共有。2021年3月までに河川、流域、避難・水防の各施策を「流域治水プロジェクト」としてまとめ公表する。
初会合で工藤美紀男所長(55)は「プロジェクトを年度内にまとめ上げ、皆さまとより良いものを作りたい」とあいさつ。各首長はウェブ上から、協議会への期待と治水に関する要望を率直に表明した。
筑西市の須藤茂市長は「大規模な治水施設は難しいが、小規模な遊水地を多く整備できないか。有効な内水氾濫対策になる」と提案。下妻市の菊池博市長は「小貝川には樹木が繁茂したり狭隘(きょうあい)な場所がある。伐採や掘削により河道を確保し、大雨時の流下能力の向上が必要」と要望した。
県内では6日、霞ケ浦流域治水協議会が設立される。