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熊本県議会、川辺川ダム含む治水求める意見書可決、自民押し切り

 2009年に中止とされた川辺川ダム計画を復活させる動きが着々と進められています。
 熊本県議会では最終日の8日、川辺川ダムを含む治水対策を求める意見書が自民党の賛成多数で可決されました。
 熊本県議会は自民党が多数派を形成しており、もともとダム推進です。2008年に知事就任後半年しか経過していなかった蒲島郁夫知事が川辺川ダム計画の白紙撤回を表明した背景には、潮谷義子・前知事の時代、熊本県が住民に川辺川ダムに関する情報を公開し、川辺川ダムの建設を望まなかった民意が明らかになった経緯があります。7月の大水害からまだ立ち直っていない流域の被災地では、民意がまとまるだけの余裕もまだありません。蒲島知事はこの間の言動からも、ダム計画に不利な取り組みを行って国土交通省に対峙するだけの気概があるようには思えません。

◆2020年10月9日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/feature/kawabegawa/1636908/
ー川辺川ダム含む治水求める意見書可決、自民押し切りに野党系会派「議論不足」 熊本県議会ー

 熊本県議会最終日の8日、川辺川ダム建設を含む抜本治水策を国に求める意見書が可決された。最大会派の自民党県議団が押し切った格好だが、野党系会派からは「議論不足で、議会の総意とは呼べない」との声も上がる。この日の本会議で自民の溝口幸治氏(人吉市区)は「命や財産を失った人を思う時、大きな責任を感じる」と涙ながらに賛成討論。これに対し、くまもと民主連合の
岩田智子氏(熊本市1区)は「ダムを造るべきと言わんばかり。自然と共存する視点も大事だ」と反対姿勢を強調した。

 今回の意見書を巡っては、野党系会派から「乱暴な進め方だ」との批判も出た。流域12市町村長の「川辺川ダム建設促進協議会」が県議会に意見書提出を求めた請願を審議した、2日の総務常任委員会。自民の賛成多数で請願を採択した直後に意見書案が委員に初めて配られた。文面の読み上げもないまま、数分で総務委による提案が決まった。
 意見書案は、請願の表題になかった「川辺川ダム」の文字を強調した内容に。常任委は正副委員長を自民が独占しており、ベテランの1人は「(意見書は)知事へのメッセージだ」と明かす。

 これに対し、委員の山本伸裕氏(共産党、熊本市1区)は「文案をしっかり確認する間もなかった。抜き打ちで採決されたようなもの」と振り返った。

 閉会後、蒲島郁夫知事は「(意見書を)重く受け止めている。方向性を示すまで時間はないが、最大限の力を発揮したい」と述べた。(内田裕之)

◆2020年10月8日 朝日新聞熊本版
https://digital.asahi.com/articles/ASNB8667WNB8TLVB005.html
ー川辺川ダム建設求める意見書可決 知事「重く受け止め」ー

 熊本県南部を中心とした7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した球磨(くま)川の治水対策をめぐり、熊本県議会(定数49)は8日、川辺川ダム建設を含む抜本的な治水対策を国に対して要望する意見書を賛成多数で可決した。流域12市町村でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」が、県議会に請願していた。

 蒲島郁夫知事は議会後、記者団に対し、意見書の可決について「重く受け止めている。あらゆる可能性を排除せず、これから治水対策を行っていく」と述べた。

 意見書は、国が11年前に計画を中止した川辺川ダムが仮に今回の災害時に存在した場合、人吉市街地を流れる球磨川の水量が最大4割程度抑えられた可能性が、国や県などの検証委員会で示されたと指摘。流域住民が安心して生活できるように「川辺川ダム建設を含む球磨川流域の科学的、客観的で抜本的な治水対策」をスピード感をもって講じるよう国へ求めている。

 採決では自民、公明の会派などが賛成する一方、旧民進系や共産の会派が反対した。討論では、自民会派の議員が「二度と同じような被害を出さないためにハード面もソフト面もできる対策はすべてやってほしい」、旧民進系会派の議員は「(緊急放流など)ダムがあった場合のリスクも明らかにしなければならない。流域住民の意見を聞いて判断すべきだ」と主張した。(伊藤秀樹)

◆2020年10月8日 毎日新聞熊本版
https://mainichi.jp/articles/20201008/ddl/k43/040/295000c
ー九州豪雨 国の川辺川ダム効果、推計 賛否分かれる評価 熊本県議会ー

  九州豪雨で氾濫した球磨川の被害を検証する委員会で国が「川辺川ダムがあれば被害を軽減できた」とする推計結果を示したことを受け、熊本県議会は7日、全員協議会を開いた。自民党会派の県議が結果を評価した一方、非自民の県議からは検証が不十分との声が相次いだ。

 国は6日の検証委で旧民主党政権が2009年に計画を中止した川辺川ダムがあった場合、人吉市内の浸水範囲が6割減っていたとする検証結果を示した。自民党の前川收(おさむ)県議はこれを評価し、「水位を下げ被害を防げるのであれば政治の責任で断行してほしい」と述べ、ダムを含めた治水対策を求めた。

 一方、くまもと民主連合の鎌田聡県議は「流量などの数値が妥当か、もう一度検証が必要。知事は(国と)違った見解を持つ人の声も聞いて決断すべきだ」と語った。

 出席した蒲島郁夫知事は終了後の取材に「いろんな方の意見を聞いた上で、安全安心と球磨川の清流を両立できる計画を考えていきたい」と述べた。【城島勇人】

◆2020年10月8日 熊本日日新聞
https://www.47news.jp/localnews/5349160.html
ー「安全と住民の思い踏まえる」 球磨川治水策で蒲島熊本県知事ー

 熊本県の蒲島郁夫知事は7日の県議会全員協議会で、球磨川流域の治水対策に関し「流域の安全安心と、球磨川の恵みに対する住民の思いの両面を踏まえて考える。時間的緊迫性も大事だ」と述べ、年内の早い時期に治水の方向性を示す考えを改めて強調した。

 全協では、県執行部が6日に開かれた7月豪雨の検証委員会の結果を報告。川辺川ダムが存在した場合に人吉市の浸水面積が6割減少する推定値などを説明した。

 自民党県議団の前川收氏(菊池市区)はダム建設について「過去には無駄な公共事業という風潮もあったが、10センチでも水位を低下させ、1人でも命を救えるのなら無駄ではないはずだ。政治の責任で断行しないといけない」と力を込めた。

 くまもと民主連合の鎌田聡氏(熊本市2区)は「ピーク流量など国が示した数値と違う専門家の意見もある。結果が妥当か検証が必要ではないか」と指摘。共産党の山本伸裕氏(同市1区)は流入量と同じ量を流すダムの異常洪水時防災操作について触れ、「ダムが洪水調節能力を失う事態が各地で発生しており、そうした事態を想定した河川整備を行うべきだ」と訴えた。

 蒲島知事は終了後、「多様な意見を聞きながら政治家として責任を持って決める」と語った。(内田裕之)