7月の水害を受けて、今後の球磨川の治水対策について検討することになった熊本県では、蒲島郁夫知事が10月15日から流域の各団体を呼んで意見聴取を行ってきました。20日には河川環境を守る運動を行ってきた四つの市民団体から意見聴取を行いました。
水害を機に、球磨川支流の川辺川に国が計画した巨大ダム建設が蘇ろうとしていることに危機感を抱く各団体は、いずれも蒲島知事に川辺川ダム建設の弊害を訴え、意見聴取後、蒲島知事は取材に対して「大変参考になった」と述べましたが、翌21日の定例会見では、国と共に川辺川ダム復活を目指すことを伺える発言を行い、報道各社がこれを報じています。
意見聴取における流域団体の意見は、川辺川ダムについて賛否が割れていましたが、知事が意見聴取をこのように総括したことで、27日に始まる球磨川の今後の治水対策を決める協議は、11月にも知事が公表するとされる川辺川ダム復活の下地づくりとなりそうです。
国、県、流域12市町村で球磨川流域の治水対策を協議する球磨川流域治水対策協議会が27日(火)16時、県庁地下会議室で開催されます。
詳細や傍聴の申し込み方法は下記に掲載されています。
http://kawabegawa.jp/2020/20201027CHISUITAISAKUKYO.pdf
関連記事をまとめました。
◆2020年10月21日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201021/k00/00m/010/073000c
ー熊本・蒲島知事「ダムによらない治水は実現可能性遠い」 11月中にも方針判断かー
7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、熊本県の蒲島郁夫知事は21日の定例記者会見で、「(国と県、流域市町村が参加した豪雨被害に関する)検証委員会を経て、ダムによらない治水は実現の可能性が遠いという印象を持った」と述べた。国と県、流域自治体は27日から新たに設置した協議会で治水対策の議論を始めるが、蒲島知事は11月中にも新たな治水方針を判断するとみられる。
国は6日に開かれた検証委最終会合(2回目)で、2008年に蒲島知事が「白紙撤回」を表明し、09年に旧民主党政権が建設計画を中止した川辺川ダムの効果について「ダムがあれば、人吉地区の浸水面積を約6割減らせた」との推計を提示。それを受け、蒲島知事は約20回の予定で流域の団体や住民から直接意見を聴取する会を開いている。
蒲島知事は豪雨後、「川辺川ダムも選択肢の一つ」と明言。21日の会見では「新たな体験のもとで新たな治水のあり方を考えるのが私の使命。国は最大限、ダムによらない治水を検討したが、経費面や期間の面でも実現可能性が遠いという印象を持った」と述べた。【城島勇人】
◆2020年10月21日 熊本日日新聞
https://news.goo.ne.jp/article/kumanichi/region/kumanichi-1649936.html
ー豪雨災害防止へ対策検討 球磨川流域治水協、27日に初会合ー
熊本県は21日、7月豪雨で氾濫した球磨川の具体的な治水策を検討する「流域治水協議会」の初会合を27日に県庁で開くと発表した。7月豪雨災害と同規模の水害発生を防ぐ目標を掲げ、ハード面とソフト面の対策を総動員した「流域治水」による対策を検討する。
協議会メンバーは、国土交通省九州地方整備局長と知事、流域12市町村長、九州農政局長、熊本地方気象台長。市民団体などが求めていた被災者や河川工学の専門家は含まれておらず、県は「必要に応じて意見を聴く」としている。
初会合は県庁地下大会議室で27日午後4時から。蒲島郁夫知事が「選択肢の一つ」としている川辺川ダム建設も議論の俎上[そじょう]に乗せる見通し。別会場の熊本テルサ(熊本市中央区)やインターネットで傍聴できる。
国、県、流域市町村による6日の検証委員会は、7月豪雨災害について「川辺川ダムがあったとしても全ての被害を防げなかった」とし、新たな検討の場を設置することで合意していた。
一方、蒲島知事は会見で、球磨川流域の団体や住民を対象に始めた治水の意見聴取に触れ、「(川辺川ダムを白紙撤回した2008年)当時はダム不要の意見が強かった。豪雨災害を経験して建設を望む声が強くなったと感じる」と述べた。
市民団体が指摘した自然環境への影響や緊急放流への懸念については「ダムへの恐れを最小化し、生命・財産を守る安全安心も最大化しなければならない」と強調。ダムによらない治水は「経費、期間の面で実現可能性は遠いと思った」と述べた。(高宗亮輔)
◆2020年10月21日 テレビ熊本
https://www.tku.co.jp/news/20201021%EF%BD%853/
ー知事 ダムによらない球磨川治水「実現可能性遠い」ー
蒲島知事は21日の定例会見で「ダムによらない球磨川の治水は実現の可能性がとても遠い」と語りました。治水対策について流域の住民や団体から意見を聞く会を先週スタートさせましたが、これまでのところ川辺川ダム建設を白紙撤回した2008年と比べ「ダムを造ってほしいとの声が多い印象だった」と発言。「ダムによらない治水は経費面でも期間の面でも実現可能性がとても遠いという印象」との認識を示しました。ただ「ダムへの懸念や不安を最小化し、流域住民の安心安全を最大化するものでなければならない」とも述べました。治水対策を巡っては国と熊本県、流域の市町村長でつくる新たな協議会の初会合が今月27日に開催される予定。知事はこの協議会での議論と住民らの意見を踏まえ、年内のできるだけ早い時期に治水対策の方向性を示すとしています。
◆2020年10月21日 日本テレビ
https://www.news24.jp/nnn/news86823559.html
ー治水対策「100%満足は困難」ー
蒲島知事が年内にも方針を決める球磨川の治水対策。これまで流域住民などから意見を聞いていたが会見で蒲島知事は「全員を100%満足させる事は難しい」と述べた。
球磨川の治水対策をめぐって国や県などでつくる検証委員会で“川辺川ダムも選択肢の一つ”として協議が進められ、仮にダムがあった場合「7月の豪雨による人吉市の浸水面積を6割減少できた」などの調査結果をまとめていた。
蒲島知事は治水対策を検討するため先週から流域の住民や団体などの意見を聞く会を開催していて川辺川ダムについては賛否が分かれる形となっている。
21日の会見でこれまでの印象を聞かれた蒲島知事は…。
蒲島郁夫知事「印象的に言うと(ダムを白紙撤回した)2008年にお伺いした時はもっとダムはいらない意見が強かった」「全員を100%満足させるような治水対策はとても難しいのではないかと思うけれどほとんどの人がこの辺がいいなと思うあたりで治水対策をやる事ができれば、それが私に与えられた役割ではないか」
また蒲島知事は新たに「球磨川流域治水協議会」を設置すると発表した。農地を使った治水対策や気候変動に伴う初動対策なども検討することからこれまでの検証委員会のメンバーに九州農政局と熊本地方気象台を加えたという。
今月27日に1回目の会合を開催する予定で、蒲島知事は年内の早いうちにこの新しい協議会の場で治水対策の方向性を示す方針。
◆2020年10月21日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/691511575968564321?c=39546741839462401
ー球磨川治水対策協、27日に初会合 国、熊本県、流域市町村が参加ー
熊本県の蒲島郁夫知事は21日の定例会見で、球磨川の治水対策を検討する国、県、流域12市町村による新たな協議の場の初会合を27日に県庁で開くと発表した。名称は「球磨川流域治水協議会」。
6日に終了した国、県、流域市町村の7月豪雨検証委員会で、3者が具体的な治水策を協議する場の設置で合意していた。市民団体などは新たな協議会に被災者や識者の参加を求めており、21日の会見で蒲島知事は「協議会で専門家の意見も聴く」とした。
◆2020年10月22日 西日本新聞
https://news.livedoor.com/article/detail/19095776/
ーダムなき治水「実現性遠い」 熊本知事が発言、協議に影響もー
7月豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川流域の治水策を巡り、蒲島郁夫知事は21日の定例記者会見で「ダムによらない治水は、経費面と期間の面で実現可能性がとても遠いという印象だ」と述べた。12年前には蒲島氏本人が川辺川ダム建設を「白紙撤回」しているだけに、本格化する治水協議にも影響しそうだ。
ダム計画の中止後、流域では遊水池や河川掘削など「ダムによらない治水」を検討。だが多額の費用や100年超の工期がネックとなり、まとまらないまま今回の豪雨災害に見舞われた。
国は豪雨検証委員会で「川辺川ダムがあれば浸水範囲を6割減らせた」とする推定を公表し、蒲島氏は15日から被災地の住民らへの意見聴取を進めている。
蒲島氏は会見で「安心安全を最大化し、環境悪化やダムへの恐れを最小化する方向でいかなければいけない」とも発言。「豪雨災害後、ダムを望む声が強くなっていると感じるか」と問われ、「私はそう感じた」と答えた。(古川努)
◆