8月6日に国交省関東地方整備局が八ッ場ダムの工期延長のため、基本計画変更手続きを開始しました。
このニュースは翌日の地方版に一斉に掲載され、上毛新聞では、一面トップと社会面で大きく取り上げられました。八ッ場ダム事業は国の事業ですが、詳しい報道はダム予定地を抱える群馬の地方版が主体です。
工期延長に関する問題については、こちらで解説しています。
https://yamba-net.org/wp/?p=5380
関連記事を転載します。
■2013年8月7日 上毛新聞一面より(ネット上では、後半が省略されています。)
http://www.raijin.com/ns/1513758004149339/news.html
-八ツ場完成19年度 国交省が計画変更 事業費は増額せずー
国土交通省は6日、長野原町で進めている八ツ場ダム建設事業の基本計画で定めている完成時期を、現在の2015年度から19年度に変更すると発表した。
民主党政権のダム事業見直しに伴う遅れが主な理由。事業費は、遅れや地滑り対策に伴う増加が懸念されているが、現計画の約4600億円を据え置く。本県など流域都県の意見を聞いた上で正式に決定する。
国交省関東地方整備局が今後の工程を精査した結果、19年度後半に完成する見通しとなったという。
民主党政権下で同局が行った検証の報告書は、完成までに「本体工事の入札公告から7年3カ月必要」としていたが、検証後、完成年度を示したのは初めて。ダム本体の着工や水を貯め始める時期など今後の具体的な工程は明らかにしていない。
報告書では事業費について、工事の中断と遅れで55億円、地滑り対策などで149億円の増額が必要とされたが「(設計の精査や工法の工夫による)コスト縮減により、当初の額から変更せずに対応できる」(国交省)と判断した。
今回の変更では、八ッ場ダム地点で想定される吾妻川の最大の流量「計画高水流量」を毎秒3900㌧から3千㌧に引き下げ、洪水時にダムが貯める水量を毎秒2400㌧から2800㌧に引き上げる。日本学術会議などの指摘を踏まえて再計算した。
今後は、本県など1都5県の知事がそれぞれ、基本計画変更への意見を示す議案を各県議会に提出し、議決を経て意見表明する。太田昭宏国交相は、これらの意見表明に加えて藤岡市や北千葉広域水道企業団などの関係利水者からも意見を聞き、計画変更を最終的に判断する。
長野原町の高山欣也町長は「基本計画の変更は必要だと思っていたが(今から)6年は長い」と指摘。代替地への旅館移転が進む川原湯温泉を引き合いに「湖畔の宿を思い描いている人は、水がたまって初めて生活再建がスタートする。長引いた分だけ年を取る」と工期短縮の必要性を強調した。
大沢正明知事は「本体工事に着手するための手続きが開始されたことは評価したい。最新の技術力を駆使して更なる工期短縮、費用削減を進めてほしい」とコメント。治水、利水両面で関係する東京都の水資源建設副産物担当課は「4年遅れることは極めて遺憾だ」と先送りに反発している。
■2013年8月7日 上毛新聞社会面
-八ッ場ダム完成先送り 今度こそ計画通りに 「現実認めた工期」/「地元に相談ない」
国土交通省が八ッ場ダムの完成時期を4年先送りし2019年度にすると発表した6日、地元長野原町の住民は、民主党政権下での事業凍結を踏まえ「現実を認めた工期」と一定の理解を示す声の一方、「地元に相談がない」と不信感もにじませた。度重なる工期延長に、変更後の計画が本当に実現可能か疑問視する住民。「現場の状況をよく見て判断してほしい」と太田昭宏国交相の現地視察を求める声が上がった。
「民主党のダム見直しで4年延びている。(工期延長は)覚悟の上のこと」。川原湯温泉の代替地で9月下旬に再出発する山木館14代目の樋田洋二さんは、計画変更を淡々と受け止める。「(2015年度完成という)できないことをいつまでも言っているよりは、現実を認めたのはいいこと。ただ、今度こそ計画通りに完成しなければ、とんでもない話だ」と続けた。
道の駅「八ッ場ふるさと館」運営会社の篠原茂社長は、変更後の工期に疑問符を付ける。「何をもって完成なのかよく分からない。ダムができ、試験湛水を行って、安全を確認してダム湖を造ることを考えれば4年延長で済まないのでは」と指摘。ただ、完成時期が示されたことで地域振興事業が進むことへの期待はあると説明した。
八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会の篠原憲一事務局長は、一方的な計画変更を批判。「工期延長は分かるが、地元に何の相談もなく不信感がある。事業費の変更はないとしているものの、もし下流都県の負担が増えた場合、理解が得られるのか不安だ」と訴える。その上で「(国に)現状を把握してもらえば、もっと工期を短縮できるのではないか」と、太田国交相の現地視察を要望する。
八ッ場あしたの会の渡辺洋子事務局長は「工期は(本体着工から)7年掛かると言われてきたのに、4年延長で済むというのは無理がある。事業費の変更がないのもおかしい。その場、その場で行き詰って計画変更し、この事業の実態が明らかにされていないことが問題だ」と指摘した。
■2013年8月7日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130807100580001.html
ー八ツ場ダム工期 4年延長方針ー
国土交通省は6日、八ツ場ダム(長野原町)建設の基本計画を変更して工期を2019年度に4年間延長する方針を明らかにし、関係6都県の知事らに意見照会した。
ダム本体への着工に不可欠な手続きで、約4600億円の総事業費は「変更なし」とし、県などは歓迎した。ただ、民主党政権下の再検証で必要とされた事業の一部を「現時点では調査中」(関東地方整備局河川部)として判断を先送りしており、なお事業費が増える可能性は残る。
八ツ場ダムの基本計画変更はこれが4度目。工期は民主党政権の約3年3カ月の間、入札手続きが止まったことなどが影響した。
現行の2015年度完成は非現実的と計画変更を求めていた大沢正明知事は手続き開始を歓迎する一方、「工期が4年も延期されることは、極めて遺憾」とし、なお工期短縮や費用削減に取り組むよう求めた。
ただ、民主党政権下での再検証結果では、本体工事の公告から試験湛水(たん・すい)まで7年3カ月とされた。同整備局は「本体関連工事を今年度から進めており、残りの工程を精査した結果だ」と説明した。
一方、再検証では、総事業費4600億円は、21億7千万円減額できるものの、工事の中断や遅延に伴う費用55億3千万円と地すべり対策や移転代替地の安全対策費149億3千万円が新たにかかり、差し引き約183億円増となる計算だった。関係自治体は追加負担を懸念していた。
関東地方整備局によると、八ツ場ダム建設事業は今年3月末段階で3725億円を執行済みで、残事業費は900億円弱になっている。
しかし、同整備局はこの日、工事の中断や遅延に伴う費用は「4600億円の中で対応できる」と説明。
一方、地すべり対策などは「地質調査などを踏まえ、必要かどうか調査中」とした。そのうえで、再検証で出た金額は「必要な対策を最大限見積もった数字」だとして、圧縮可能という見解を示した。
基本計画の変更に知事が意見を示す際は、議会の議決が必要。国交省がめざす14年度の本体工事予算計上の円滑な実現には、各都県の9月議会で同意を得る必要があり、この時期に意見照会したとみられる。
地元の高山欣也・長野原町長は「工期見直しはやむを得ないと思うが、自公政権になっての半年余りも加わって4年になったことにちょっと不満はある。努力は認めるが、今後は少しでも早く完成させてほしい」と話した。
これに対し、ダム見直し派の市民団体「八ツ場あしたの会」事務局長の渡辺洋子さん(前橋市)は「本体工事予算獲得のための場当たり的対応」と批判。
「工期は民主党政権への責任転嫁。事業費は従来も余裕がなくなると変更してきた。今後も計画変更は避けられない」と主張した。(長屋護、泉野尚彦、小林誠一)
■2013年8月7日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20130806-OYT8T01388.htm
ー八ッ場工期4年間延長 19年度中に完成へー
国土交通省関東地方整備局は6日、八ッ場ダム(長野原町)の工期を2015年度までと定めている基本計画を変更し、工期を4年間延長すると発表した。工事が順調に進めば、八ッ場ダムは19年度中に完成する。
工期の遅れは「織り込み済み」だった地元は、完成時期の見通しが示されたことを歓迎する一方で、引き続き早期完成に努力するよう国に求めている。
計画を変更するには、事業費の一部を負担する群馬など6都県の知事や利水者らの意見を聴く必要があり、同局は同日、意見聴取を開始した。知事が意見表明する際には各議会の議決も必要で、群馬県は「9月議会に提案できるかを含めて検討する」(特定ダム対策課)としている。
同局は、基本計画で約4600億円としている事業費については「変更なし」とした。11年度に行った検証では約183億円の増額が必要としたが、「コスト縮減に努め、計画内での完成を目指す」という。
八ッ場ダムは工事用道路の整備など関連工事の手続きが始まったばかりで、本体工事着工の見通しは立っていない。現行の基本計画で定められた残り約2年半の工期での完成は事実上不可能で、県は早期の計画変更を国に求めていた。
基本計画は1986年に告示され、当初の工期は2000年度、事業費は約2110億円だった。その後の計画変更で工期は15年度、事業費は約4600億円に延長・増額された。計画変更はこれで4回目となる。
国の計画変更について、大沢知事は、「本体工事着工の条件となる手続きが開始されたことは歓迎する」としながらも、「当時の(民主党)政権による一方的なダム中止表明で工期が4年も延期されることは遺憾」とコメント。さらなる工期短縮や費用削減に努め、ダム本体や地元住民の生活再建事業の早期完成に全力で取り組むよう国に求めた。
長野原町の高山欣也町長は「(代替地に移転する)川原湯温泉がダム湖を見渡せる『湖畔の宿』になるまで、あと6年かかることになる。地元で生活している人にとっては痛い。計画変更はこれで最後にしてほしい」と訴えた。
代替地で9月下旬に営業再開を予定している老舗旅館「山木館」の樋田洋二さん(66)は「民主党政権で工事が中止された分、工期が延長された。だが、恨んでも完成が早まるわけではない。自分ができることは新しい旅館を早く軌道に乗せることだ」と語った。
一方、建設見直しを求める市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は「4年間の工期延長は短すぎるし、事業費も500億~600億円増加するはず。場当たり的な計画変更だ」と批判している。
■2013年8月7日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20130807ddlk10010247000c.html
-八ッ場ダム建設:完成延期、容認の声 「総事業費増」の指摘も /群馬ー
八ッ場ダム(長野原町)の完成を2019年度に延期する方針を国土交通省関東地方整備局が発表した6日、県内の関係者からはおおむね容認する声が寄せられた。一方で、総事業費の増額の可能性を指摘する声も出ている。【奥山はるな】
長野原町の高山欣也町長は「本体工事は、民主政権で頓挫し、自公政権になっても着手されていなかった。さらなる延期は残念だが、完成に向けてのスタートラインと思って、受け入れるしかない」と複雑な表情。また、大沢正明知事は「本体工事に着手するための手続きが開始されたことは評価したい。技術力を駆使して、さらなる工期短縮、費用の削減を進め、遅れを取り戻し、早期完成を図るとともに、生活再建事業の早期完成に取り組んでほしい」などとするコメントを発表した。
総事業費は4600億円で据え置かれたが、増額の可能性がある。同整備局が11年11月にダム事業を再検証した結果、工事の遅れに伴う人件費の増加などで55億円、地滑り対策拡充などで149億円の負担が新たに必要になると試算。用地補償費を21億円削っても、183億円増額すると見積もった。
人件費の増加は現在の総事業費の枠内に収まる見通しだが、地滑り対策は地質調査を行っている最中で、4600億円の中に含めていないという。同整備局は「全体的にコストを縮減して対応したい」と説明する。しかし、ダム見直しを求める市民団体「八ッ場あしたの会」は500億〜600億円の増額が必要という試算を行っている。
■2013年8月7日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20130807/CK2013080702000153.html
-大沢知事「手続き開始歓迎」 八ッ場ダム基本計画変更ー
大沢正明知事は六日、国土交通省が八ッ場(やんば)ダムの基本計画変更の手続きを始めたことに「本体工事を始める条件となる手続きが開始され歓迎する」とのコメントを出した。
完成時期の先送りには「一方的なダム中止表明で、四年も延期されることは極めて遺憾」と民主党政権を批判。「最新の技術力を駆使して工期短縮や費用削減を進め、遅れを取り戻してほしい」と要望した。
八ッ場ダムの地元、長野原町の高山欣也町長は「完成の四年延期は残念だが、やむを得ない。自助努力で工期を短縮し、一日も早く完成させてほしい」とした上で「基本計画が変更されれば、生活再建事業も本格的に動きだすだろう」と期待を込めた。