河川行政では、国と都道府県がそれぞれ管理する河川の今後の治水対策を「河川整備計画」として策定することになっています。
★群馬県ホームページより「河川整備計画(圏域毎)」
https://www.pref.gunma.jp/06/h4010093.html
河川整備計画は1997年の河川法改正によって導入されました。河川法(第16条の2)では、河川管理者が作成した原案を公開し、公聴会やパブリックコメントを行って流域住民等の意見を反映させて計画を決定するのが本来の趣旨でした。しかし、ダム等に反対する住民の意見は反映されることが殆どなく、最近は手続きそのものが形式的になっています。
利根川支流の吾妻川は、八ッ場ダムが建設されるまで「河川整備計画」が策定されてきませんでしたが、ダムが完成した昨年、群馬県が計画原案をまとめて公開しています。
★利根川水系吾妻川圏域河川整備計画(原案)
https://www.pref.gunma.jp/contents/100178287.pdf
群馬県によれば公聴会で意見を述べることを希望した住民はいないとのことで、公聴会は中止になりました。
https://www.pref.gunma.jp/06/h40g_00105.html
この整備計画で予定されている主な治水対策は、八ッ場ダム上流の嬬恋村における吾妻川支流の放水路と、ダム下流の高山村における支流の河川改修工事です。
しかし、2019年10月に襲来した台風19号による豪雨では、嬬恋村で吾妻川沿いの国道や橋が崩落し、国道はいまだに修復工事が完了していません。八ッ場ダム下流の渋川市小野上付近では小学校や新しい住宅が吾妻川のすぐ脇にたっており、水位が上がった時、果たして安全が保障されるのか心配なところがあります。
関連記事が地元紙の一面に載っていましたので、転載します。
◆2021年1月24日 上毛新聞
ー吾妻川上流 放水路で浸水解消 県、年度内に計画申請へー
河川の長期的な整備方針を定める河川整備計画で、県は23日までに、吾妻川圏域の計画原案をまとめた。上流域の河川に放水路を新設し、住宅の浸水被害の解消などを図る。年度末までに国への申請を目指しており、認可されれば、県が策定を進めてきた全10圏域での計画が出そろう。県は既存の計画について、近年の気象災害や対策の傾向を踏まえて順次見直しに入る。
吾妻川圏域は渋川市西部と吾妻郡で構成される。原案では住宅の浸水被害を解消させるとして、嬬恋村の治郎兵衛川と高山村の名久田川での工事を予定している。いずれの河川も堤防がなく、一部区間は流下能力が低下しているとする。
県河川課によると、工事予定の2河川は、南牧村での被害が局地激甚災害に指定された2007年9月の台風19号や10年8月の豪雨の際、川の水があふれそうになったり、実際にあふれたりした。20年を期間とする今回の計画では、これらの気象災害と同程度の雨でも住宅の浸水被害が起こらないようにする。
治郎兵衛川は、嬬恋村田代の住宅密集地の上流側にバイパスとなる放水路を新設する。放水路では元の川より多くの流量を設定して吾妻川に流し込み、住宅地に水があふれることを防ぐ。名久田川では3.8㌔の区間のうち流下能力が低い地点で、川幅を広げたり護岸を新設したりする。
国による許可は21年度中と見込まれる。県策定の計画は01年に太田市などで構成する石田川圏域を皮切りに、他の圏域でも順次策定されてきた。いずれも計画期間は20~30年間だが、随時見直すことになっている。邑楽・舘林、石田川の両圏域では県が見直しの準備を進めている。
県内各地で計画に基づく整備が進められてきた一方、気象災害の頻発・激甚化が際立ち、19年の台風19号では県内各地で人命も含めて甚大な被害に見舞われた。近年では行政だけでなく、住民や企業などが一体的に取り組む「流域治水」が重要視され、新たな県土整備プランでも転換が掲げられている。
県河川課は「頻発・激甚化する気象災害は新たな脅威。しっかり対応できるよう時代に合わせて見直していく」としている。
—転載終わり—
吾妻川圏域河川整備計画(原案)より、二つの整備対象区間が示された位置図