国土交通省は昨日(1月29日)、2020年7月豪雨で甚大な被害が発生した最上川(山形県)と球磨川(熊本県)の緊急治水対策プロジェクトに着手すると発表しました。
国土交通省の発表は下記の通りです。
令和2年7月豪雨で、特に甚大な被害の発生した最上川、球磨川において、再度災害防止のための「緊急治水対策プロジェクト」に着手します。
本プロジェクトでは、河道掘削、遊水地、堤防整備等を実施する他、国、県、市町村等が連携し、雪対策と連携した住居の高床化への支援、まちづくりと連携した高台への居住誘導などの対策を組み合わせた対策を進めてまいります。
<概要>
[1] 最上川中流・上流緊急治水対策プロジェクト
【河川】事業内容 :河道掘削、堤防整備、分水路整備、遊水地改良 等
全体事業費 :約656億円
事業期間 :令和2年度~令和11年度
[2] 球磨川水系緊急治水対策プロジェクト
【河川】事業内容 :河道掘削、堤防整備、輪中堤・宅地かさ上げ、遊水地 等
全体事業費 :約1,540億円
事業期間 :令和2年度~令和11年度
【ダム】事業内容 :新たな流水型ダム、市房ダム再開発
調査・検討に令和3年度から本格着手
※詳細は各地方整備局の記者発表資料をご覧ください。
[1]最上川について(東北地方整備局)
球磨川に関しては河道掘削、堤防整備、輪中堤・宅地かさ上げ、遊水地設置等を約1,540億円の事業費で2020~2029年度に実施することになっています。これだけの事業費をかけて河道掘削、堤防整備等を進めれば、球磨川の安全度をかなり高めることができると思うのですが、その上にさらに支流の川辺川に流水型ダム(川辺川ダム)が必要だということになっています。
河道掘削、堤防整備、輪中堤・宅地かさ上げ、遊水地設置等の規模を見直し、より有効なものにすれば、川辺川ダムは不要ということになるのではないでしょうか。
なお最上川では、昨年の豪雨水害直後の8月3日に、支流の最上小国川に治水専用ダムを完成させたことを祝して竣工式が開催されました。最上小国川ダムは国の補助金で山形県が進めた事業です。事業費は88億3000万円にのぼり、昨年まで最上川流域の治水予算の多くがこのダム事業に注がれてきました。
治水効果がなく、河川環境を破壊する最上小国川ダムを造るより、今回の緊急対策プロジェクトに組み込まれた河川改修に力を注いでいれば、水害を軽減できたのではないでしょうか。
関連記事を転載します。
◆2021年1月30日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/728034841886965760?c=92619697908483575
ーダムは21年度調査着手ー
国土交通省は29日、昨年7月の豪雨災害で氾濫した熊本県の球磨川の「緊急治水対策プロジェクト」を公表した。2029年度までの10年間で、約1540億円を投入し、河道掘削や遊水地整備などに集中的に取り組む。今回、事業費に盛り込まなかった川辺川ダムに代わる新たな流水型ダムについては、21年度から本格的な調査や検討に着手する。
国、県が取り組む個別事業の試算を合計した。事業費のうち、国が実施するのは約1380億円(本年度分、約76億9400万円)。河道掘削は八代市の坂本地区や球磨村の一勝地地区、人吉市など5地区で実施。このほか、川幅を広げる引堤や遊水地整備、輪中堤・宅地かさ上げにも取り組む。
県の事業分は約160億円。内訳は河川改良を一部含む災害復旧費が約149億円、支流・万江川から分岐する御溝川(人吉市)の放水路整備が約12億円となっている。
一方、事業費には流水型ダム建設や市房ダム再開発は盛り込んでいない。両ダムに関しては21年度から本格的に着手し、具体的な事業期間を決める。水田の貯水機能を活用する「田んぼダム」も今後、対象地区などを検討する。
赤羽一嘉国交相は同日の閣議後会見で「今年の出水期に合わせ、災害の再発防止に努める」と話した。今年の梅雨までに、川底に堆積した土砂撤去などに取り組む。
同省や県は本年度末までに、同プロジェクトを含めた中長期的な治水対策「流域治水プロジェクト」をまとめる。(嶋田昇平、高宗亮輔)
◆2021年1月29日 産経新聞
https://www.sankei.com/life/news/210129/lif2101290069-n1.html
ー総額656億円「最上川緊急治水対策」 国、山形県、市町村が連携ー
昨年7月末の記録的大雨で氾濫した山形県内を流れる一級河川、最上川について、国や県と県内市町村でつくる最上川流域治水協議会は29日、国の令和2年度第3次補正予算の成立を受け、総額656億円の「最上川中流・上流緊急治水対策プロジェクト」を決めた。事業期間が11年度までの10年に及ぶ大規模流域治水事業となる。
プロジェクトは、昨年の記録的大雨と同規模の洪水被害を軽減するため国、県が連携し、河道掘削、堤防整備、分水路整備、遊水地改良を行うほか、雪対策を兼ねた住居の高床化支援や水田貯留など市町村と連携した対策も組み合わせた。
主な事業範囲は、大江町から戸沢村までで、堤防整備は延べ約8キロ、河道掘削は約90万立方メートルに及ぶ。記録的大雨でほぼ満水状態になった大久保遊水地は越流堤のかさ上げをする。今年度はまず、氾濫で壊れた護岸の修復や河道掘削から始める。
◆2021年1月28日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASP1W6SYTP1WUZHB00T.html
ー最上川の氾濫地区に堤防整備、国が整備案 豪雨から半年ー
山形】最上川などが氾濫(はんらん)した昨年7月の豪雨から、28日で半年になる。国土交通省は27日、オンラインで最上川流域治水協議会を開き、同規模の洪水被害を軽減するために緊急で取り組む対策を盛り込んだ「最上川中流・上流緊急治水対策プロジェクト」の原案を示した。これまでの整備計画にはなかった被災地区への堤防整備も新たに盛り込んだ。
プロジェクトは、戸沢村~大江町の最上川中・上流域が事業範囲。「再度災害防止対策」として河道掘削約90万立方メートル、堤防整備約8キロ、遊水地改良1カ所、分水路整備1カ所を挙げる。最上川の水位を下げて氾濫を抑える狙いだ。国の新年度予算案の審議を踏まえ、近日中に完成させる。
大石田町や大蔵村、大江町などの氾濫があった地区で堤防整備を計画。最上川水系河川整備計画には盛り込まれていない河北町溝延地区への築堤も実施する。最上川が大きく蛇行する村山市内では、分水路も設けて流下能力を高める。
発災時の対応をまとめたタイムラインの改善など、ソフト面での対策の方向性も盛り込む。事業は短期・中期などに分けて、住民の理解を得ながら進める方針だ。
協議会では、国が進める新たな治水対策「流域治水」の考え方を踏まえた「最上川水系流域治水プロジェクト」を今年度内に公表予定。それに先んじて緊急プロジェクトを示すことについて、山形河川国道事務所の竹下正一所長は「被災者や流域の皆様の不安を少しでも解消し、復興の支援を進める」と狙いを述べた。(上月英興)
——-
[2]球磨川について(九州地方整備局)より