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流域治水関連法案、閣議決定

 流域治水関連法案が2月2日に閣議決定されました。国土交通省のホームページにその概要が記されていますので、お知らせします。
 流域治水への取り組みは治水の要になるものですが、今回の法案が流域治水を具体的に進める機能をどの程度持っているのかはまだわかりません。
 この法案に関する京都新聞の社説もお知らせします。この社説が指摘しているように、流域治水を有効なものにするためには住民参加が不可欠です。しかし、凍結されてきた球磨川水系の川辺川ダムや淀川水系の大戸川ダムを巡る最近の動きを見ると、河川行政は「住民参加」において大きく後退し、ダム計画に反対する学識者は最初から会議のメンバーに入れず、科学的で多角的な検証とは程遠い状況が見られます。

★国土交通省ホームページ 報道発表資料

令和3年2月2日 
「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案」(流域治水関連法案)を閣議決定
 ~流域全体を俯瞰し、あらゆる関係者が協働する「流域治水」を実現します!~
 https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo02_hh_000027.html?theme=6

 気候変動の影響による降雨量の増加等に対応するため、流域全体を俯瞰し、あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」の実現を図る「特定都市河川浸水被害 対策法等の一部を改正する法律案」(流域治水関連法案)が、本日、閣議決定されました。

1 . 背景
 近年、全国各地で水災害が激甚化・頻発化するとともに、気候変動の影響により、今後、降雨量や洪水発生頻度が全国で増加することが見込まれています。
 このため、ハード整備の加速化・充実や治水計画の見直しに加え、上流・下流や本川・支川の流域全体を俯瞰し、国や流域自治体、企業・住民等、あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」の実効性を高めるため、以下を内容とする「流域治水関連法案」を整備することとします。

2 . 改正案の概要
(1) 流域治水の計画・体制の強化
   ・流域治水の計画を活用する河川を拡大
   ・流域水害対策に係る協議会の創設と計画の充実

(2) 氾濫をできるだけ防ぐための対策 
  ・利水ダムの事前放流の拡大を図る協議会の創設
  ・下水道で浸水被害を防ぐべき目標降雨を計画に位置付け、整備を加速
  ・下水道の樋門等の操作ルールの策定を義務付け
  ・沿川の保水・遊水機能を有する土地を確保する制度の創設
  ・雨水の貯留浸透機能を有する都市部の緑地の保全
  ・認定制度や補助等による自治体・民間の雨水貯留浸透施設の整備支援      等

(3) 被害対象を減少させるための対策
  ・住宅や要配慮者施設等の浸水被害に対する安全性を事前確認する制度の創設
  ・防災集団移転促進事業のエリア要件の拡充
  ・災害時の避難先となる拠点の整備推進
  ・地区単位の浸水対策の推進                                 等

(4) 被害の軽減、早期復旧、復興のための対策
  ・洪水対応ハザードマップの作成を中小河川に拡大  
  ・要配慮者利用施設の避難計画に対する市町村の助言・勧告制度の創設  
  ・国土交通大臣による災害時の権限代行の対象拡大                   等

◆2021年2月5日 京都新聞 社説
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/496872
ー社説:流域治水関連法 百年の計に住民参加をー

 川の中に閉じ込める治水からの歴史的な転換といえる。

 政府は、地域全体で水害対策に取り組む「流域治水」関連法案を国会に提出した。

 明治期から続く堤防やダムによって洪水を防ぐという発想は、限界に来ている。人口増に伴う住宅地の拡大や、気候変動による想定外の豪雨などで毎年、甚大な被害に見舞われ多くの犠牲者が出ている。

 流域治水は災害多発時代に向き合う新たな考えだ。ハードだけでなくソフトが重要になる。行政任せでなく、私たち住民も主体となるべく意識改革が求められる。

 正式な法案名は「特定都市河川浸水被害対策法等の一部改正」という。水防法や都市計画法、建築基準法などの改正を束ねており、施策は多岐にわたる。

 被害を軽減するため規制に踏み込んでいる。川幅が狭く、本・支流が合流するなど、氾濫しやすい河川周辺の指定区域で新築は許可制とする。雨水がしみ込む緑地は開発制限の対象だ。川沿いの田んぼなどに保全制度を導入する。

 浸水想定区域や避難ルートなどを示すハザードマップを、中小河川にも適用し、住民にリスクを知ってもらう。

 注目したいのは、国や都道府県、市町村の関係者、学識経験者らで構成する流域水害対策協議会の設置だ。浸水区域の土地利用や雨水対策の強化などを議論し、その結果は対策計画に反映される。

 法案には明記されていないが、住民も「必要と認める者」として参加することが欠かせない。

 1997年の河川法改正で、治水・利水に加えて、環境保全と住民参加がうたわれた。淀川水系流域委員会が発足し、住民も河川整備計画の議論に加わっている。

 協議会は得てして官主導の場になりがちだ。対策の土台となるデータを多角的に検証し、広い観点から議論できるよう、土木工学だけでなく環境や生物などの専門家を入れ、住民の生活に根差した意見を聴くべきだ。

 流域治水の道のりは長く、「百年の計」と言えるが、災害は待ってくれない。特に高齢者施設で水害による犠牲が相次いだ問題の対策は差し迫っている。法案には、市町村長は避難への助言、勧告ができるとあるが、施設だけで対応できないのが現状だろう。

 なぜ救えなかったのか検証し、避難支援の手だてを流域治水の計画に盛り込みたい。これまでの災害の教訓を洗い出すことで、実践的な流域治水になるはずだ。