球磨川の支流に計画された川辺川ダムが昨年の水害を機に復活したことから、球磨川漁協の動向が注目されています。
2000年代、国が川辺川ダムの建設を強行できなかった原因の一つは、球磨川漁協のダム反対姿勢にありました。当時、実際には川漁師でない人々が組合員となり、ダム反対を覆そうとする動きがありましたが、今また、ダムに対して曖昧な姿勢の執行部と対立する総代会をつぶす動きが強まっているようです。
関連記事を転載します。
◆2021年3月11日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASP3B6WP0P3BTLVB001.html
ー球磨川漁協が総代会廃止案を否決 背景にダム問題の見方ー
球磨川漁業協同組合(堀川泰注組合長、924人)は10日、熊本県八代市で臨時総会を開き、球磨川流域の各地区代表でつくる総代会(100人)の廃止など執行部提出の議案を協議した。採決の結果、可決に必要な3分の2以上の賛成にわずかに届かず、否決された。
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球磨川漁協の動向は、川辺川への流水型ダム建設の行方に関連して注目されている。臨時総会には執行部役員や総代ら49人が出席。会場には来なかったが賛否を表示した書面議決書の提出者が679人おり、議長を除く計727人のうち賛成481、反対241、無効5で、賛成が3分の2の得票に4票足りなかった。
堀川組合長は総会後、記者団に、「3分の2のハードルは高いが、予想以上に(総代会廃止案に)理解をいただいた。今後も廃止を訴えていく」と語った。否決された背景については「川辺川のダム問題も関係している」との見方を示し、「組合員以外の人が、ダムに反対の立場から書面議決書を集めていた」と話した。
球磨川漁協は約20年前、川辺川ダム計画に伴う国からの漁業補償案を否決し、ダム計画の行き詰まりにつながった経緯がある。昨年7月の豪雨災害を受けて改めて持ち上がった流水型ダムの整備について、堀川組合長は漁協内の賛否が「拮抗(きっこう)している」と話す。
執行部は総代会の廃止案について、総代への手当などがなくなり、組合運営のコストを下げて組合員の負担を軽減できると説明。議事は総会で行えばよく、総会のほうが組合員の意向を民主的に反映できる、と訴えている。
これに対し、反執行部の総代らは「執行部役員たちが不正行為や自分勝手なことをしないよう、総代会が目を光らせてきた」と反発。反執行部の代表格である総代の一人、羽手村悦雄さんは「今後のダム問題の補償交渉でも、執行部だけに任せず、総代会で議論して透明化を図ることができる」と主張する。
球磨川漁協ではアユ漁の運営や役員人事などをめぐる対立が深まり、反執行部が多数派の臨時総代会で2017年、役員の改選を決議した。だが、指導する立場の県が「定款上、役員選任は総会でしかできない」などの解釈を示して以来、混乱が続いている。この日はヤジが飛び交い、議事が混乱する場面もあった。(村上伸一)