宮城県が上下水道と工業用水の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」で、水処理の国内最大手メタウォーター(東京)のグループが優先交渉権者に選定されました。
メタ社のグループには、フランスに本拠を置く世界最大規模の水道事業者「ヴェオリア」のグループ会社や、オリックス、日立製作所なども加わっています。契約20年間でのコスト削減額は、県が求めた197億円以上に対し、グループは287億円と提案したことです。
コスト節減がメリットとされる「水道運営権の民間への売却」ですが、ライフラインである水道事業が営利目的となることによって中身が変容するという本質的な問題があり、宮城県では市民団体が警鐘を鳴らしています。
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◆2021年3月12日 河北新報
https://kahoku.news/articles/20210313khn000002.html
ー水道みやぎ方式 運営権売却先に「メタウォーター」選定ー
宮城県が上下水道と工業用水の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」で、応募3グループを審査した有識者組織「県民間資金等活用事業検討委員会」は12日、水処理の国内最大手メタウォーター(東京)が代表の企業グループを優先交渉権者に選定したと村井嘉浩知事に答申した。契約20年間でのコスト削減額は、県が求めた197億円以上に対し、グループは287億円と提案した。
県は県議会6月定例会に運営権を設定する議案を提出し、議決を経て厚生労働相に認可申請する方針。実施契約を締結した後、2022年4月の事業開始を目指す。実現すれば、上下水道と工業用水の運営権を民間に一括売却する事業としては全国初となる。
グループは「水メジャー」の一角、仏ヴェオリア傘下のヴェオリア・ジェネッツやオリックス、東急建設など10社で構成。橋本店、産電工業、復建技術コンサルタントの在仙3社も参加する。
検討委は水質管理や設備の改築修繕、削減額など11項目を計200点満点で審査。リモート監視システムによる最新技術の導入に加え、構成企業の出資で運転管理・維持会社を設立し、雇用創出を図る構想が評価された。
他に応募したのは、前田建設工業やスエズウォーターサービス、東急など9社でつくるグループと、JFEエンジニアリングや水ingAM、東北電力など8社によるグループ。
審査では、メタグループが約170点、前田グループが次点の約156点を得た。JFEグループは、20年間の損失を織り込んだ下水道計画の一部が「健全経営ではない」と判断され、失格となった。
村井知事は「削減額は考えていたよりも100億円近く上回り、県民の利益として還元される。全国のモデル事業になる」と強調した。
検討委員長の増田聡東北大大学院教授(地域計画)は「県が水道3事業にどのように関わり、グループがいかに持続可能なサービスを提供していくのか、県民に分かりやすく情報提供していく必要がある」と指摘した。
市民団体などからは飲み水の安全性への不安や危機管理、水道事業に精通した県職員が減少する懸念、削減額の根拠の弱さなどを指摘する声がある。
みやぎ型管理運営方式は民間の経営ノウハウを生かし、薬品代や光熱費の抑制、業務効率化でコスト削減を図るのが狙い。20年3月に公募を開始。同5月に1次審査、21年1月に最終審査に入った。
◆2021年3月13日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASP3D6W71P3DUNHB005.html
ー水道運営、「メタウォーター」グループに売却へー
水道事業の委託先を検討していた宮城県は12日、水処理大手「メタウォーター」(東京都)など10社でつくるグループが最有力になったと発表した。委託することで、20年間で計287億円のコスト削減を見込んでおり、2022年4月の事業開始をめざす。
専門家による県の諮問委員会がこの日、検討結果を村井嘉浩知事に答申した。応募した3グループのうち、メタ社が代表を務めるグループを最も高く評価した。前田建設工業(東京)が代表のグループが次点で、東北電力などでつくるグループは収支計画が基準を満たさず失格だった。
メタ社のグループには、フランスに本拠を置く世界最大規模の水道事業者「ヴェオリア」のグループ会社や、オリックス、日立製作所なども加わっている。各社が出資して運営会社を設立し、メタ社が議決権の過半数を占めることになるという。
さらに、施設の運転や維持管理を担う会社も県内に設立する予定で、諮問委では、新たな雇用の創出が期待できるほか、修繕などのノウハウを積極的に導入することなどが評価された。
こうした民間委託の背景には、水道事業を巡る厳しい経営環境がある。今後、人口減少にともなって利用者が減る一方で、施設設備は老朽化が進み、更新費用がかさむ見通しがあった。危機感を抱いていた県は昨年3月、民間委託でコストを削減しようと事業者を募集し、審査を進めてきた。
売却の対象となるのは、市町村への上水の供給や、企業への工業用水の供給など計9事業。施設の所有権は県が保持したままで、運営権だけを売却する「コンセッション方式」だ。今回は、一括して20年間の運営権を売る。
県によると、これら9事業の20年間の事業費は1850億円かかる見通しだったが、メタ社グループの計画では287億円が削減できる見通しだという。
答申を受け取った村井知事はこの日、報道陣に対し、「我々が考えていたよりも100億円近く削減効果が出た。人口減や施設の老朽化に対して、早めに手を打つことは非常に重要だ」と売却の意義を強調。災害時に設備に影響が出た場合は、「責任を持って行政が改修、交換をする」とした。
厚生労働省によると、大阪市も22年4月から上水事業にコンセッション方式を導入しようと検討している。実現すれば、ともに全国初になるという。(徳島慎也、窪小谷菜月)
◆2021年3月12日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB123O40S1A310C2000000/
ー宮城の水道事業、メタウォーターのグループに委託へー
宮城県が水道事業の運営を民間事業者に委託する「みやぎ型管理運営方式」を巡り、応募事業者を審査した検討委員会は12日、最優秀提案者に水処理大手のメタウォーターなどで構成するグループを選び、村井嘉浩知事に結果を答申した。県は2022年4月に同グループに水道事業を委託する方針だ。
村井知事は「人口が減り施設も老朽化する中、全国のモデルになるだろう」と民間委託の意義を訴えた。県は3月中にもメタウォーターのグループが水道事業を運営する特別目的会社(SPC)と協定を結び、6月議会に民間委託を決める議案を提出する。
SPCはメタウォーターのほか、オリックスや日立製作所、水処理世界大手の仏ヴェオリアの日本法人、ヴェオリア・ジェネッツ(東京・港)など10社で構成する。運転管理や保守点検に最先端技術を導入し、20年間の水道事業のコスト削減額を県の条件よりも90億円多い287億円に設定した。SPCとは別に水道施設の維持管理などを担う企業を立ち上げ、地元の雇用創出にもつなげる。
みやぎ型管理運営方式は浄水場などの設備を県が保有したまま上水道と下水道、工業用水の3事業の運営を事業者に任せる「コンセッション方式」で水道事業を民間委託する全国初の取り組み。20年5月に始まった事業者の審査には3グループが応募していた。