八ッ場ダムの水没地域は1783(天明3)年、浅間山の爆発により発生した泥流に覆われたため、全域が遺跡でした。八ッ場ダム事業では1994年からダムの試験湛水が始まる2019年10月まで、26年間にわたり発掘調査が実施されました。遺跡数は60を超え、発掘面積は100万平方メートル(1平方キロメートル)を超え、縄文草創期から江戸時代に至るまで、豊かな文化が育まれたかけがえのない歴史遺産であることが明らかになりました。
長野原町は浅間山麓で浅間火山博物館を運営してきましたが、火山博物館を閉館し、新たにダム湖畔に浅間山の火山噴火によって埋もれた遺跡等を展示解説する博物館をオープンします。泥流下には江戸・天明期の遺跡のさらに下に縄文時代に至る面が所により重層して出土しており、それらの出土品も公開されるとのことです。
右写真(ミュージアムの公式サイトより)=ダム湖の左岸側に整備されたミュージアムは国道沿いにあり、周辺に八ッ場道の駅ふるさと館、水辺公園などがある。
このほど報道関係者向けの内覧会が開かれ、関連記事が配信されています。一般向けの正式なオープンは4月3日午後1時半からとのことです。アクセスや最新情報は、以下の公式ホームページをご確認ください。
【参考ページ】
★やんば天明泥流ミュージアム公式ホームページ
★長野原町公式サイト やんば天明泥流ミュージアム
関連記事を転載します。
◆2021年4月3日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20210403/ddl/k10/040/128000c
ー「天明泥流」の被害伝える きょうミュージアムオープン 長野原ー
八ッ場ダム水没地域、発掘調査の成果展示
運用開始から1日で1年となった八ッ場(やんば)ダムの水没地域の発掘調査の成果を展示する博物館「やんば天明泥流ミュージアム」(長野原町林)が3日にオープンする。江戸時代の1783(天明3)年の浅間山大噴火で起こった「天明泥流」で埋もれた村落の出土品を展示し、当時の生活や被害の甚大さを伝える。
天明泥流は同年8月5日に発生。大爆発で発生した土石流が吾妻川に合流し、川沿いにあった村落をのみ込んだ。1523人が死亡し、遺体は現在の東京湾や千葉県銚子市付近まで流れ着いたという。
水没地域の発掘調査は1994年に始まったが、ダム建設が一時中止されるなど複雑な経過をたどったことで、調査期間は2019年までの26年間という異例の長さに及んだ。調査区域も約100万平方メートルとなり、のみ込まれた村落が丸ごと発掘された。
また、泥流にのみ込まれたことで200年以上たった現在でも当時とほとんど変わらないまま出土品が残った。館内では、茶葉が内部に残る茶釜や、たばこが詰められたままのキセル、のみ込まれた家屋の一部など約500件の資料が置かれている。このほか、当時の様子を再現した映像を流す大型シアターや、被害を伝える当時の資料を展示したコーナーもある。長野原町教委の古沢勝幸文化財専門員は「自然災害とどう向き合っていくか伝えるのが使命だ。日常を奪った災害のすさまじさを知ってほしい」と話した。
財源はダム関係都県による「利根川・荒川水源地域対策基金」約18億6000万円。ダム建設に伴い整備された、道の駅などの「地域振興施設」としては最後の施設となる。
同館横には水没地域にあった旧町立第一小学校の校舎も移設されている。観覧料は一般600円、小中学生400円。水曜日定休。問い合わせは0279・82・5150。【妹尾直道】
◆2021年3月30日 上毛新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/88e6442b7d05ccacbaf4bfdddb17c0a84662d162?p
ー「やんば天明泥流ミュージアム」が来月3日に開館 八ツ場ダム工事で出土 浅間大噴火と当時の人々の暮らしを展示ー
1783(天明3)年の浅間山大噴火に関する展示施設「やんば天明泥流ミュージアム」(群馬県長野原町林)が4月3日、開館する。八ツ場ダム建設に伴う大規模発掘調査で出土した、大噴火の泥流にのみ込まれた集落の生活用品などを展示。当時の人々の営みに触れながら、自然災害といかに向き合うかを考えてもらう。
出土品、映像、ジオラマで紹介
大噴火の様子を再現した映像を流す体感シアターと、出土品やジオラマ、古文書などを紹介する天明泥流展示室で構成。天明以前の地層から発掘された縄文~平安時代の土器も並ぶ。
発掘調査は1994~2019年、県埋蔵文化財調査事業団や長野原町教委が、同町と東吾妻町にまたがる吾妻川沿い約100万平方メートルで実施した。泥流がパックの役割を果たしたことから、見つかった生活用品の保存状態は良く、中には青々としたしそ巻きの梅干しも出てきたという。
大噴火が発生したのは天明3年8月5日。そのとどろきは、大阪まで届いたと伝わる。大惨事を伝えるために当時の名主らが残した多くの書物から、死者は1523人、被害家屋は1605戸と算出されている。火山灰や溶岩が川の水などと混じった黒色で高温の泥流の威力はすさまじく、集落を埋め、東京湾や銚子(千葉県)まで流された遺体もあったとされる。
体感シアターでは、大噴火をCGと実写で克明に再現した約10分の映像を紹介。迫力の爆発音と、足元まで泥流が迫ってくるかのような照明演出で、日常を一瞬で奪った大災害のすさまじさを感じることができる。展示室は出土品約150点などが並び、家の位置から畑の畝まで、発掘成果から詳細に再現した750分の1のジオラマも設置する。
「展示を見ると、質素で貧しいという当時の農家のイメージは変わるだろう」と同館の文化財専門員、古沢勝幸さん。出土が全国でも数例という、8分目以上注ぐと底の穴から一気に流れ出てしまうからくり酒器「十分(じゅうぶん)盃(さかずき)」のほか、伊万里、瀬戸で作られた食器、お歯黒やくし、鏡といった化粧道具など、文化的な生活の様子もうかがえるものもある。
古沢さんは「災害や自然とどう付き合うべきか、私たちが経験した災害をどう後世へ伝えるべきか、思いを巡らせて」としている。
隣に旧第一小校舎移築 ダム水没地区振興で開設
やんば天明泥流ミュージアムは、長野原町がダム水没地区の生活再建を助ける地域振興施設として開設した。
敷地面積は約2500平方メートル、施設はRC造3階建てで延べ床面積約1700平方メートル。展示スペースのほか、体験学習室もある。
新型コロナウイルス感染症の収束後、収蔵品のレプリカを使って江戸期の長野原の暮らしを紹介する企画を予定している。
施設隣には、水没した久森地区から移築した旧長野原第一小校舎が設置されている。1911~2002年に使用された校舎の一部で、入場無料で当時の机や教育教材を見ることができる。
ミュージアムは午前9時~午後4時半(3日は同1時半開館)。水曜休館。入館料は一般600円、小中学生400円。町民は無料。問い合わせは同施設(0279-82-5150)へ。
◆2021年3月24日 上毛新聞 (紙面記事より転載)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/culture/282302
ー出土品が伝える240年前の大噴火 やんば天明泥流ミュージアム 長野原に来月開館ー
群馬県長野原町が整備していた博物館「やんば天明泥流ミュージアム」の報道向け内覧会が23日、同町林の同館で開かれた。八ツ場ダム建設に伴う発掘調査で出土した1783(天明3)年の浅間山大噴火の泥流にのみ込まれた生活用品など約500点が並ぶ=写真。一般公開は4月3日午後から。
展示しているのはいずれも出土品で、家屋の柱など構造物以外に食器や煙管きせるに残る刻みたばこ、梅干しなどがあり、約240年前の生活用品を当時のまま陳列。噴火当日を再現した映像シアターでは平穏な暮らしから、大噴火や泥流発生までを生々しく伝える。
発掘調査は県埋蔵文化財調査事業団や町教委が1994~2019年、吾妻川沿いのダム水没地区や移転代替地など約1平方㌔で実施。泥流以前の地層から発掘された縄文時代や平安時代の土器、石器も展示している。入館料は大人600円、小中学生400円。
敷地内には旧長野原第一小校舎の一部を移築した建物(入場無料)もある。
◆2021年3月24日 群馬テレビ
https://this.kiji.is/747268973782843392
ー発掘調査の成果を紹介「やんば天明泥流ミュージアム」が完成 群馬・長野原町ー
八ッ場ダムの建設において伴い行われた発掘調査の成果を紹介するやんば天明泥流ミュージアムが群馬県長野原町に完成し、報道に公開されました。 この、やんば天明泥流ミュージアムは発掘調査による出土品を有効活用するまた、その時代について理解してもらう長野原町が整備を進めて展示施設としててきたものです。23日は4月3日のオープンに先駆け、報道陣向けの内覧会が開かれました。 ミュージアムは、3階建てで、1,2階が収蔵庫、3階が展示施設になっています。このうち、映像シアターでは、天明3年1783年に浅間山の噴火によって発生した泥流が、どのように八ッ場地区を襲ったのかをコンピュータグラフィックや再現ドラマを交え紹介しています。
◆2021年3月24日 朝日新聞 (関連部分のみ転載)
https://digital.asahi.com/articles/ASP3R6WNYP3RUHNB001.html
ー八ツ場ダム 水没地区から移転の小学校が閉校ー
第一小近くには、ダム建設の見返りとなる地域振興施設「やんば天明泥流ミュージアム」が完成した。4月3日午後1時半から一般公開される。
目玉は、1783(天明3)年の浅間山の大噴火による吾妻川沿いの泥流被害の展示だ。「天明泥流」と呼ばれた大災害で、死者は1523人、家屋被害2065戸に及んだとされる。浅間山から約30キロ離れた八ツ場ダムの水没地区周辺でも、ダム建設工事に伴う1994~2019年の発掘調査で数多くの住居跡や生活用具などが確認された。
その調査の成果として、漆塗りの食器や各地の陶器、お茶が入ったままの茶釜、きせるなど約500件が展示され、当時の豊かな暮らしぶりや災害の様子を伝える。「天明泥流体感シアター」では、映像などで大噴火と泥流などを再現している。
町教育委員会の古沢勝幸文化財専門員は「江戸時代の生活がよみがえった。日常を奪った災害のすさまじさを知ってほしい」。年間約6万人の入館を見込む。
ミュージアムの別棟として、第一小で1911~2002年まで使われた旧校舎の一部を活用する。第一小の卒業生で、戦後間もない47年、「上毛かるた」をつくって普及させた財団法人群馬文化協会(現在は解散)の理事長だった故浦野匡彦氏(元二松学舎大学長)の資料などを展示する。
ミュージアムは利根川・荒川水源地域対策基金から約18・6億円を拠出して建設された。観覧料は一般600円、小中学生400円。第一小の旧校舎は無料。水曜定休。
◆2021年4月6日 読売新聞群馬版
https://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20210405-OYTNT50117/
ー浅間山の環境伝える 長野原に新施設9日オープンー
長野原町営観光施設「浅間園」(嬬恋村鎌原)内に、浅間山の成り立ちや自然環境を伝える「浅間山北麓ビジターセンター」が9日、オープンする。
鉄骨平屋、約300平方メートルの施設を改装し、閉館した「浅間火山博物館」から山麓や植生の移り変わりを紹介する模型、イヌワシなど生息動物の剥製はくせいを移設して展示する。浅間山の噴火で生じた溶岩や軽石にも触れられる。休憩コーナーを設けて、自然遊歩道や山麓を巡る「スカイロックトレイル」の玄関口として利用してもらう。
天明3年(1783年)の噴火や歴史を紹介する施設は、八ッ場ダムの水没地区周辺で出土した噴火当時の遺物を集めた町営「やんば天明泥流ミュージアム」と、嬬恋村鎌原地区の被災に重点を置く「嬬恋郷土資料館」がある。長野原町企画政策課の中村剛課長は、「浅間山北麓ジオパークを多面的に理解してもらうため、3施設で連携していきたい」と話している。
営業は、金~日曜の午前9時~午後5時。料金は自然遊歩道の利用を含めて高校生以上300円、小中学生100円。年内は11月末まで。問い合わせは、同センター(0279・86・3000)へ。
◆2021年4月6日 朝日新聞群馬版
https://digital.asahi.com/articles/ASP4572HJP45UHNB004.html
ー「天明泥流」被害伝える やんばミュージアムが開館ー
八ツ場ダム建設に伴う発掘調査の出土品を展示する「やんば天明泥流ミュージアム」(群馬県長野原町林)が3日、オープンした。1783(天明3)年の浅間山大噴火で村落をのみ込んだ「天明泥流」による被害の実態を伝えている。
天明泥流の死者は1523人、家屋被害は2065戸とされる。昨年3月に完成した八ツ場ダムの水没地などでは1994年から2019年の26年間にわたり、県埋蔵文化財調査事業団や町教委が発掘調査を行った。調査地は約100万平方メートルに及ぶ。
展示物は約500点。被害を受けた家屋の一部や農具などのほか、漆塗りの食器や梅干しの種が残った容器、たばこが詰められたままのキセルなどが並ぶ。出土品は保存状態がよいものが多く、泥流被害直前の暮らしの様子を垣間見ることができる。映像シアターや、体験学習のためのスペースもある。
博物館外には、長野原町立第一小学校の旧校舎の一部が移築され、内部には郷土資料が展示されている。
古沢勝幸館長は「ここには天明泥流、ダム建設という大きな壁を乗り越えた地域の歴史が詰まっている。地元の誇りになるよう、活動していきたい」と話していた。
事業費は、ダムの水を利用する下流の都県による「利根川・荒川水源地域対策基金」から約18億円を活用した。入館料は大人600円、小中学生400円。町民は無料。水曜休館。問い合わせは同ミュージアム(0279・82・5150)へ。(星井麻紀)
◆2021年4月17日 NHK
ー浅間山噴火の泥流被害伝える施設開設 長野原町ー
江戸時代に浅間山の噴火で泥流が発生し、大きな被害が出た歴史を発掘された出土品とともに紹介する施設が群馬県長野原町にオープンしました。
オープンしたのは、去年から運用が始まった八ッ場ダムのダム湖のほとりに建設された「やんば天明泥流ミュージアム」です。
展示しているのは、ダム建設に伴う発掘調査で出土したもので、およそ240年前の天明3年、浅間山で大きな噴火があった際に起きた泥流で、川沿いにあった村が壊滅的な被害を受けたときの資料などが中心です。
調査結果を基に、噴火で泥流が発生し村が飲み込まれる様子が映像で再現され、出土品は「たべる」や「つくる」などテーマごとに並べられています。
さらに、周辺から見つかった縄文土器や土偶など、江戸時代より前の出土品を展示するコーナーも設けられています。
長野原町文化財保護対策室の富田孝彦室長は「災害を受けた遺跡を広範囲に発掘した例は、全国的にもあまりないので、その成果を示せればと思っています」と話しています。
施設は午前9時から午後4時半まで開いていて水曜が定休日です。
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【参考ページ】 水没する歴史遺産