宮城県では、水道・下水道・工業用水の事業の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」の準備が進められています。宮城県から県水の供給を受けている市町村は今後の成り行きを心配しているということです。
◆2021年5月5日 河北新報
https://news.yahoo.co.jp/articles/8dd3b046b7f8c8eb5aec19518deb50ae61bd463f
ー水道「みやぎ方式」に市町村やきもき 水質管理、災害対応の説明なしー
上下水道と工業用水の運営権を一括して民間に売却する宮城県の「みやぎ型管理運営方式」を巡り、県広域水道の受水市町村が気をもんでいる。県は運営権設定の議案を県議会6月定例会に提出する方針だが、水質管理や災害時対応など重要事項に関し、詳細な説明がなされていないためだ。全国初となる管理運営方式だけに、受水自治体は丁寧な対応を県に求める。(報道部・古賀佑美)
運営権を売却する9事業のうち、水道用水は「仙南・仙塩広域水道」「大崎広域水道」の2事業。仙南・仙塩は17市町、大崎は10市町村が受水する。県が卸売り、受水自治体が小売りの関係。市町村は県から水を買って各世帯に供給する。
各市町村の2019年度の給水量に占める広域水道からの受水割合は表の通り。自己水源がある自治体もあり、広域水道への依存度はそれぞれ異なる。
県は4月9日、受水市町村との会議を開き、3月に優先交渉権者に選んだ水処理大手メタウォーター(東京)など10社グループの事業方針を説明した。だが、詳細な提案書は企業独自の技術が流出する恐れがあるとして、公開しなかった。
仙台市水道局は、仙南・仙塩広域水道受水団体連絡会の代表幹事を務める。神倉崇経営企画課長は「水質をどのような管理体制で維持、向上させるか確認させてもらいたい。危機管理上、災害時の連絡窓口が誰になるのかもできるだけ早く知りたい」と話す。
連絡会は昨年9月、運営権売却を進める県に対し、(1)水質モニタリングの確保(2)災害時の対応(3)撤退時の事業継続(4)費用削減効果を料金に反映(5)県民への丁寧な説明-の確実な実施を求める要望書を提出した。
優先交渉権者の選定から議案提出までは、わずか3カ月。県は限られた期間で県民や受水自治体に説明を尽くすことになる。
郡和子市長は4月28日の定例記者会見で「県への要望はこれまで何度も伝えている。市民、県民に説明が行き渡るようご努力いただきたい」と念押しした。
給水量の100%を広域水道に頼る柴田町。滝口茂町長は「民営化自体は反対しないが、なぜこんなに急ぐのか分からない」と首をかしげ「価格改定時は市町村との協議の場を必ず設けてもらう」と注文する。
県は30年にわたり、浄水場の運転管理を民間委託してきた。ある受水自治体の担当者は「運営権の一括売却は、これまでの民間委託の拡大にすぎないとして、特別丁寧な説明が必要だとは思っていなかったのではないか」と推測する。
県は5月下旬に受水市町村の担当者を集めた会議を開催し、水質管理やモニタリング計画の骨格を示すことにしている。田代浩次水道経営課長は「市町村の助言を得ながら事業開始約1カ月前の来年2月中に実施計画をまとめる」と話す。