昨日6月16日、国土交通省九州地方整備局の川辺川ダム砂防事務所は「「流水型ダム環境保全対策検討委員会」を開催しました。
球磨川支流の川辺川に国が計画した川辺川ダムは、流域住民の反対運動などにより10年以上前に一旦は中止とされましたが、昨年7月の球磨川豪雨を機に、国交省はダム計画をよみがえらせました。新たなダム計画は、これまでのアーチ式から流水型(穴あき)に変更するため、環境アセスメントが必要ですが、国交省は従来のダム計画が環境影響評価(アセス)法施行以前に策定されたことを根拠に、環境アセスメントは不要としています。
国交省は環境アセスメントと「同等の」環境影響調査を実施すると説明しており、昨日の検討委員会は、調査の中身を決めるにあたり、専門家から意見を聴取するためのものでした。いずれにしても、専門家の意見も流域住民の意見も、調査に反映させるかどうかは国交省が決めるのですから、河川環境の保全よりダム事業をスムーズに進めることが優先されることになります。
〈参考ページ〉➡「環境アセス、過去の調査活用 川辺川流水型ダム 国交省九地整が方針」
関連記事を転載します。
◆2021年6月17日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/274019
ー川辺川のダム建設で環境影響調査に着手 国交省が専門家委員会ー
昨年7月の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水を巡り、国土交通省は16日、支流川辺川で検討中のダム建設が環境に与える影響の調査に着手した。専門家組織「流水型ダム環境保全対策検討委員会」を設置し、初会合を開催。国交省は委員会の検討結果や市町村長、知事、大臣の意見を踏まえ、必要な環境保全措置などを決定する。時期は未定。
建設を検討しているのは治水専用の流水型ダム。国交省は、1999年に環境影響評価(アセスメント)法が施行される前から、従来の川辺川ダム計画の関連工事に着手しているため、新たなダム建設は法的アセスの対象外との見解を示した。ただ、蒲島郁夫知事の要望なども踏まえ、アセス法と同等の調査をすると表明した。
検討委は、鳥類や魚類、植物などの専門家10人で組織。アセス法と同様の評価項目を設定し、ダム建設が環境に与える影響の調査や予測をする。2021年度は動植物について調査するとした。
アセス法にならって検討委では、4段階のリポートを作成する。ただ、第1段階の「配慮書」に相当する「環境配慮レポート」の公表時期も含め、長期的なスケジュールは未定とした。
初会合はオンラインであり、楠田哲也九州大名誉教授を会長に選んだ。委員からは「ダム計画が貯留型から流水型に変わったことで留意する点をもっと議論すべきではないか」「土砂がどこにどの程度流れるのか、基本情報がないと環境への影響は見通せない」といった意見が出た。
従来の川辺川ダム計画は、蒲島知事や流域首長らの反対により、国がいったん中止を表明した経緯がある。流水型ダムの建設については流域住民の賛否が割れており、法に基づかない環境影響調査の意義や根拠を疑問視する声もある。(澤本麻里子)
◆2021年6月20日 NHK熊本放送局
https://www.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20210616/5000012554.html
ー球磨川流域 ダム建設に伴う環境への影響 調査へー
去年7月の豪雨災害を受けて、球磨川流域の川辺川に新たな流水型のダムが建設された場合の環境への影響を検討する委員会の初会合が開かれ、国は今年度から球磨川流域の環境調査を始める計画を示しました。
去年7月の豪雨を受けて、国が検討している川辺川での新たな流水型ダムについて、国は環境アセスメントと同様の手順で周辺環境への影響の調査や評価を行うことにしています。
このため、国は環境への影響を調べるために、河川工学や野生生物などの専門家10人で作る「流水型ダム環境保全対策検討委員会」を設置して、16日、相良村で初会合が開かれました。
この中で、国の担当者は、出水期に5回程度球磨川流域の水の濁りを調べたり、球磨川流域に生息する動物や植物の現地調査などを行う計画を示しました。
これに対し、専門家からは、流水型ダムの建設によって球磨川の流れがどうなるかや、洪水時に土砂はどこにどの程度たまるかを早急に調べてほしいとか、昆虫に与える影響を調べる場合、成虫だけでなく、幼虫や卵がどこに生息しているか、カエルの場合、鳴き声まで考慮した慎重な調査をしてほしいといった指摘がありました。
検討会の事務局の川辺川砂防事務所では、スピード感をもって環境への影響評価を進めていきたいとしています。
—転載終わり—
★国交省九州地方整備局川辺川ダム砂防事務所HPよりプレスリリース
「第1回 流水型ダム環境保全対策検討委員会」の開催について」