八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

環境アセス、過去の調査活用 川辺川流水型ダム 国交省九地整が方針

 国土交通省九州地方整備局が6月2日に開催した球磨川流域治水協議会において、球磨川支流の川辺川に新たに計画する流水型ダムの環境影響評価調査について、従来の「川辺川ダム事業」で過去に実施した環境調査結果を活用する方針を明らかにしました。

 国土交通省は5月21日に、川辺川流水型ダムは環境影響評価法に準じた調査ですませることを記者発表で明らかにしました。
 ➡国土交通省水管理・国土保全局ホームページより 報道発表資料「球磨川の「新たな流水型ダム」の環境影響評価について環境省と連携して実施します」

 「環境影響評価法に準じた調査」と、「環境影響評価法に基づく手続き」は似て非なるものです。前者は単なる調査であるのに対して、後者は手続きが複雑で、アセスの結果によっては(可能性が高いとは言えませんが)事業がストップされることもあります。
 しかも、川辺川流水型ダムの事業者である国土交通省九州地方整備局が過去に実施した環境調査結果を活用するということですから、川辺川流水型ダムの環境影響評価調査はさらに簡略化されそうです。

 国土交通省は従来の川辺川ダム事業が環境影響評価法(別名:環境アセスメント法)の施工前から道路等の関連工事を進めていることを理由に、環境アセス法の対象外であるとしています。赤羽国交大臣も5月21日の記者会見で、「法的に言えばやらなくてもよいものなのですが、地元知事からは、そうであっても地元の皆さんと今後の環境のこと等、様々考慮して同じような対応をしてほしいということでしたので」、環境影響評価法に基づくものと同等の環境影響評価を実施すると説明しています。
 これを素直に受け止めれば、環境問題に真摯に取り組むかのように錯覚してしまいますが、実際は逆です。従前の川辺川ダム計画に対して、検討中の川辺川ダム計画は流水型ダムで、ダムの形状が根本から変わります。法的根拠も特定多目的ダム法から河川法に変りますから、環境影響評価調査を一から実施すべきものです。

◆2021年6月3日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/749013/
ーアセス、過去の調査活用 球磨川流域の流水ダム 九地整が方針ー

 昨年の7月豪雨を受け、球磨川流域に整備が検討されている「新たな流水型ダム」を巡り、国土交通省が実施を表明した環境影響評価(アセスメント)法と「同等」の調査について、同省九州地方整備局は2日、現行計画の「川辺川ダム事業」で過去に実施した環境調査結果や、環境保全の取り組みの成果を活用する方針を明らかにした。

 同日の流域治水協議会で示した。川辺川ダム事業では1976年度から環境調査や保全措置の検討を始め、2000年にはアセス法の評価項目を踏まえた「環境レポート」を公表。国交省関係者は「現状を調査する必要はあるが、過去の調査結果も『下地』として活用し、スピード感を持って取り組む」としている。

 九地整は、この環境調査に関し、専門家による「流水型ダム環境保全対策検討委員会(仮称)」を設置することも明らかにした。アセス項目の設定や調査、評価などの各段階で専門的な助言を行う。

 球磨川流域の環境調査は、赤羽一嘉国交相が5月21日に実施を表明。同省は今後、気候変動による降雨量の増加を踏まえて河川整備基本方針を見直し、並行して河川整
備計画の策定にも取り掛かる。 (古川努)

—転載終わり—

 従来の川辺川ダム事業で実施した環境調査結果を活用する方針が明らかにされたのは、6月2日に国交省九州地方整備局が開催した球磨川流域治水協議会でした。この協議会では、川辺川ダムを正式に法的に位置づける球磨川水系河川整備計画を策定することなども明らかにされています。
「国交省、球磨川治水めぐり、河川整備方針見直しへ ダム建設手続き始まる」

 協議会の資料は同局の以下のサイトに掲載されています。
 環境影響調査に関しては、説明資料2(1/4)の6~8ページがあてられており、西日本新聞が取り上げた記述はこの資料の8ページの最後の「■「新たな流水型ダム」の環境保全の取り組みについて」にあります。

国土交通省九州地方整備局八代河川国道事務所 第5回球磨川流域治水協議会(令和 3年 6月 2日開)

説明資料2(1/4) 「球磨川水系流域治水プロジェクトの取組状況について」の7~8ページ