国交省、球磨川治水めぐり、河川整備方針見直しへ ダム建設手続き始まる

 国土交通省九州地方整備局は、球磨川の河川整備を進めるための基本方針を見直し、まだ策定されていない河川整備計画を作る見解を明らかにしたと報道されています。
 1997年の河川法改正により、河川整備に関する計画は2段構えで策定されることになりました。
「河川整備基本方針」とは、河川管理者(全国の主要109の一級水系では国土交通大臣、二級水系では都道府県知事)が治水対策のために長期的な河川整備の目標を定めるものです。この基本方針は、今後20~30年間の整備内容を定める「河川整備計画」の上位計画です。ダム事業は河川整備計画に明記されることで、法的に治水対策として位置づけられることになります。

国土交通省九州地方整備局 八代河川国道事務所ホームページより 第5回 球磨川流域治水協議会 
 資料3 (令和 3年 6月 2日開催)「河川整備基本方針の変更について」

◆2021年6月3日 熊本日日新聞
https://nordot.app/773048942251999232
ー球磨川治水、整備方針見直しへ 九地整、ダム建設手続き始まるー

 国土交通省九州地方整備局は2日の流域治水協議会で、球磨川の河川整備基本方針を見直し、未策定の河川整備計画を作る方針を説明した。これで、支流・川辺川への流水型ダム建設を法的に位置付ける手続きが始まることになる。

 基本方針は、河川法に基づき、水系ごとに長期的な河川整備の目標を明記する。洪水対策の目標とする基本高水のピーク流量を設定。ダムなど洪水調節施設でカットする流量や、河道に流す量を盛り込む。

 2007年に策定された現在の基本方針は、1953~2005年の降雨データを基に基本高水を設定。人吉地点は毎秒7千トンで、昨年7月豪雨の推定ピーク流量の毎秒約7900トンを下回っている。

 2日の協議会後、同局は基本高水の引き上げに言及。基本高水を大きく設定すると洪水調節施設も高い能力が必要となり、中核となる流水型ダムの規模や貯水量も大きくなる可能性がある。

 球磨川は、ダムに頼らない治水策の議論がまとまらず、全国に109ある1級水系の中で唯一、整備計画が策定されていない河川だ。国の社会資本整備審議会の意見を聞いて決める基本方針とは異なり、整備計画の策定時には必要に応じて住民意見を反映させることが求められている。

 整備計画には、ダムや遊水地など具体的な洪水調節施設の場所や機能が明記される。住民意見をどのような方法で取り入れるのか。今後の進め方が注目される。(太路秀紀)

—–転載終わり—–

 河川整備基本方針では具体的なダム名などは記載されませんが、治水対策を検討するための洪水流量(「基本高水流量」)と、ダム等の洪水調節施設を建設したのちの「計画高水流量」が設定されます。基本高水は流域に降ると想定される雨量ですから、河川管理者の思惑によって基本高水と計画高水の数字は大きくも小さくもなり得ます。机上では基本高水と計画高水の差が大きければ大きいほど、ダム等の洪水調節施設をつくる必要性が高まることになります。

 球磨川水系では、半世紀以上前から球磨川支流の川辺川に国の巨大ダム計画があり、2007年、川辺川ダムを前提とした河川整備基本方針が策定されました。
 当時、熊本県では川辺川ダム反対運動が盛り上がっており、民意を受けた潮谷義子知事(当時)は川辺川ダムを基本方針の前提にすることに反対し続けましたが、国に押し切られました。

 2007年に策定された球磨川水系河川整備基本方針では、基本高水流量(80年に一度規模の想定洪水流量)を熊本県人吉地点で7000㎥/秒とし、そのうち、川辺川ダムと既設の市房ダムで3000㎥/秒を調節し(そのうち、約2600㎥/秒は川辺川ダム)、河道で対応する計画流量(計画高水流量)を残りの4000㎥/秒としました。
 しかし、川辺川ダムに反対する声はさらに高まり、国は川辺川ダムを明記した河川整備計画は策定できず、川辺川ダムは中止するとしながら中止手続きを取らずに昨年の球磨川水害に襲われました。

 昨年(2020年)7月豪雨の雨の降り方は、球磨川治水計画の従来の考え方を大きく超えるものでした。人吉地点のピーク流量は7000㎥/秒を上回り、最大支流の川辺川の流域よりも、球磨川中下流部の支川(山田川、万江川、小川など)の流域における雨の降り方が凄まじく、当時、川辺川ダムが仮にあっても、その効果は極めて限られていたと考えられるからです。
 しかし、川辺川ダムの推進勢力は水害を絶好のチャンスとして、川辺川ダム推進のための河川整備計画をつくろうとしているようです。