強制収用手続きにもめげず、これまでと変わらぬ暮らしを続ける石木ダム予定地の13世帯の住民。ダム事業を強行する長崎県は、住民との”対話”を求め、「対面での協議に応じた場合は、当日に限り工事は止める」との条件を住民に文書で提示したとのことです。
県の再三の執拗な働きかけについて、「知事の期満了が近いからか」「現在は見送っている本体工事着手に向けた地ならしでは」といぶかる住民もいるとのことです。
◆2021年7月1日 NHK長崎
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20210701/5030011886.html
ー石木ダムで知事と反対住民の話し合い 3回目の事前協議提案ー
長崎県は、中村知事と石木ダムの建設に反対する地元住民との直接の話し合いに向けて、具体的な条件を確認するための事前協議の場を設けるよう改めて提案する文書を、30日付けで地元住民13世帯に宛てて送りました。
こうした文書を送るのは、今回で3回目です。
長崎県は、中村知事と石木ダムの建設に反対する地元住民との直接の話し合いに向けて、具体的な条件を確認するための事前協議の場を設けるよう提案してきましたが、住民側は、その前提として工事を即時中断するよう求めていて、両者の事前協議は見通しが立っていません。
こうした中、長崎県は、事前協議の場を設けるよう改めて提案する文書を30日付けで地元住民13世帯に宛てて送りました。
こうした文書を送るのは、今回で3回目です。
文書では、住民側が工事の即時中断を求めていることを念頭に、事前協議に応じる場合には、その当日に限ってすべての工事を止める方針を明らかにしています。
そのうえで、住民側に対し、協議に応じるのかどうか、7月12日までに回答するよう求めているほか、協議に応じない場合には、工事中断の範囲や時期などの具体的な条件について、同じく7月12日までに文書で回答するよう求めています。
◆2021年7月2日 西日本新聞
ー水没予定地世帯に3度目の提案ー
1日午後、長崎県川棚町の石木ダム建設に伴う水没予定地の全13世帯に文書が届いた。差出人は県土木部。中村法道知事との話し合いに向けた事前協議を申し入れる内容だった。文書が送られてきたのは5月下旬から3回目。過去2回は住民側が工事の中断を訴えて実現しなかった。今回は対面での協議に応じた場合は「当日に限り、工事は全て止める」と付け加えた。
「工事が進む中で(抗議の座り込みを続ける)現場を離れることはできない」という住民側の主張を踏まえた提案。一方で、県としては事業を進める必要があり、文書は「話し合いだけが長引き、事業の進(しん)捗(ちょく)が図られないのは避けるべきである」とくぎも刺す。対面での協議を望まない場合は、話し合いの条件を文書で回することも求めた。
「協議するとしても、公開で行うかどうかが個人的に気になる。回答は住民で話し合って決める」と岩本宏之さん(76)。
知事は住民との話し合いを模索する考えを表明しているが、近年、ここまで繰り返し働き掛けることはなかった。異例とも言える県の対応を「(来年3月の)知事の任期満了が近いからか」「現在は見送っている本体工事着手に向けた地ならしでは」といぶかる住民もいる。(岩佐遼介)
石木ダム 長崎県と同県佐世保市が、治水と市の水源確保を目的に、同県川棚町の石木川流域に計画。1975年度に国が事業採択した。当初完成予定は79年度。移転対象67戸のうち川原(こうばる)地区の13戸は立ち退きを拒否し、計画撤回を求めている。2019年5月に県収用委員会が反対地権者に土地の明け渡しを命じた裁決を出し、同年9月に土地の所有権は国に移転。同年11月の明け渡し期限後、県の行政代執行による強制収用の手続きが可能になった。