来年度の国交省の概算要求が発表されました。「防災」を名目に、公共事業費が17%増えました。
来年度予算は閣議決定で、公共事業などの政策経費をおよそ10%抑える方針になっているのですが、次の特別枠があって、国交省はそれを目一杯使うことにしたようです。
●財務省 平成26年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について 平成25年8月8日 閣議了解
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2014/sy250808.pdf
(6) 新しい日本のための優先課題推進枠
平成26年度予算においては、予算の重点化を進めるため、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月11日閣議決定)及び平成25年度予算の重点である防災対策、成長による富の創出、暮らしの安心・地域活性化のほか、「経済財政運営と改革の基本方針」(平成25年6月14日閣議決定)及び「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)等を踏まえた諸課題について、「新しい日本のための優先課題推進枠」を措置する。
このため、各省大臣は、(1)ないし(5)とは別途、要望基礎額に100分の30を乗じた額の範囲内で要望を行うことができる。
—転載終わり—
八ッ場ダムも「利根川の洪水調節」が主目的ですから、「防災」のための事業です。
しかし八ッ場ダムの治水効果については、国交省の説明に様々な専門家が科学性のなさを批判しており、また最近の集中豪雨では、都市圏での内水氾濫や土砂災害が多発しており、ダムではこれらの災害を防ぐことはできません。本当に「水害を防ぐこと」を最優先するのであれば、老朽化した堤防の補強など他にやるべきことはいくらでもあります。
八ッ場ダムについては、予定地の地質が脆弱であることから、湛水による地すべりの可能性も危惧されています。
将来世代への借金で造られるダムなどの大型施設は、維持管理費も莫大なものとなります。ダムは100年の寿命を見込んでいますが、ダムを撤去する費用は予定されていません。
「新しい日本のための優先課題推進枠」のおかげで、戦後復興期の1952年に計画された八ッ場ダムの本体工事費も計上されることになったのでしょうか。
以下の記事は、消費税増税と抱き合わせの公共事業費増額の問題を指摘しています。
◆2013年8月28日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308270634.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308270634
ー「防災」掲げ、道路・ダム 公共事業費5.2兆円 国交省概算要求ー
国土交通省は27日発表した2014年度予算の概算要求で、今年度当初予算より17%多い5兆1986億円の公共事業費を盛り込んだ。防災やインフラ(社会基盤)の老朽化対策が主な名目だ。ただ、道路やダムなどの建設費の増額も求める。安倍内閣の経済政策「アベノミクス」を機に、公共事業が拡大傾向に転じようとしている。
今回、安倍内閣が重視する政策は「特別枠」として多く要求でき、公共事業も「防災」などの名目で増やせる。国交省が求めた17%増の公共事業費も、枠に沿ってめいっぱいの額だ。
「増やせると言われて上限まで求めるのは当然だ」(国交省幹部)。約1兆2400億円分を特別枠で要求した。同じような事業でも、一部を「防災」関連に看板を替えるなどして全体の要求がふくらんだ。
たとえば、道路予算の要求は全体で1兆5371億円と、今年度より15%増えている。うち一部は「災害で不通になった道路の代替ルートを確保する」「効率的な物流ネットワークを強化する」という名目で特別枠に盛り込んだ。
整備新幹線の建設費も822億円と17%多く要求した。今年度まで3年間は706億円だったが、全体で17%増まで要求できる枠に合わせ、「着実に整備を進めるため」(鉄道局)として増額している。ダム建設も今年度より5%多い1122億円を求めた。
00年代から削減傾向が続いた公共事業費だが、アベノミクスで拡大が打ち出された。政府全体では、13年度当初予算で前年度より7千億円多い5・3兆円(うち国交省分は4・5兆円)と増加に転じた。
国交省は今回の概算要求で「真に必要な事業の予算を確保する」という。「めいっぱい要求する」ことが先に来ているため、年末の予算編成では額面通りに受け止められるかどうかはわからない。
ただ、来年4月の消費増税が予定通りに実施されれば、景気対策として補正予算が組まれる可能性もある。公共事業への大盤振る舞いに拍車がかかりかねない。
(木村聡史)
■ 国土交通省が予算要求した主な事業 ※( )内の%は今年度比の伸び率
◇古いインフラ(社会基盤)の維持管理や更新/3731億円(27%)
◇自治体の防災対策を支援する「防災・安全交付金」/1兆2227億円(17%)
◇「災害時の代替ルート確保」が名目の道路整備/4802億円(21%)
◇公共施設などの耐震化・津波対策/1234億円(24%)
◇水害などに備えたダムのかさ上げや堤防の整備/2972億円(18%)
◇整備新幹線の建設費/822億円(17%)
◇羽田空港の滑走路延伸など/147億円(19%)
◇中古住宅の取引やリフォーム促進/80億円(798%)
◇サービス付き高齢者向け住宅などの建設/789億円(46%)
◇訪日外国人の誘致強化/72億円(26%)