消費税増税が政策課題としてクローズアップされる陰で、国交省は来年度の概算要求に八ッ場ダムの本体工事費を要求しました。
政府はダム湛水による地すべり等を防ぐためのの安全対策費用、ダムの維持管理費用、ダムの撤去費用の見通しを明らかにしないまま、迷走する61年目のダム計画を推し進めようとしています。
消費税増税によって財政再建を図ると説明していますが、公共事業の更なる肥大化によって、財政はこれまで以上に悪化するのではないでしょうか。
今朝の毎日新聞社説は、国民の多くが抱いている疑問を代弁しているようです。
◆2013年8月30日 毎日新聞社説
http://mainichi.jp/opinion/news/20130830k0000m070145000c.html
ー公共事業 「旧来型」復活許されぬー
2014年度政府予算の各省庁の概算要求が今月末で締め切られる。安倍政権の経済政策、アベノミクスが進める成長戦略や防災を旗印に、道路やダム、土地改良のための農業農村整備事業といった公共事業費の要求額が膨らんでいる。高齢化に伴って社会保障費が1兆円近く増えることも加わって、一般会計の要求総額は過去最大規模になる見通しだ。
00年代から削減傾向が続いてきた公共事業費だが、安倍政権発足直後の12年度補正予算で大幅に上積みされ、13年度当初予算で増加に転じ、その流れが続いている。今回の概算要求では、重点施策に名を借りた「旧来型」の公共事業など、多岐にわたる分野で事業費拡大の動きが加速していることに強い危惧を抱く。
各省庁は今月初めに閣議了解された概算要求基準に従い要求する。来年4月の消費増税の最終判断が出ていないため税収見通しが示されず、全体の予算規模が示されていない。その中で各省庁には公共事業や教育、防衛などの政策に充てる裁量的経費を13年度当初予算より10%削減して要求するよう求めた。そのうえで、成長戦略や防災などに重点配分する特別枠を設け、各省庁が削減後の金額の30%分、総額約3兆6000億円まで要求できるようにした。
国土交通省が要求する公共事業費は、13年度当初予算より17%増になる。本来は減らすはずの公共事業を増やせるのは、特別枠をめいっぱい使い、「災害時の代替ルート」を名目とした道路整備、水害に備えるダムや堤防のかさ上げといった防災がらみの事業費を増やすためだ。
自民党は災害に強い国土づくりを7月の参院選で公約に掲げており、歳出圧力を強めている。特別枠いっぱいに膨らむ要求を見ると、重点化、効率化が図れているのか疑問だ。各省庁の要求を財務省が査定して年末に予算案を策定するが、きちんと絞り込めるのか心配になる。
とくに懸念されるのは、来年4月に消費税が8%に増税されることを当て込んで予算を拡大させる動きだ。消費増税法には景気条項と呼ばれる付則がある。消費増税が実現すれば「財政の機動的対応が可能になる」として、成長戦略や防災など経済成長に向けた施策を検討するとの規定だ。税と社会保障の一体改革に関する自民、公明、民主3党の合意を受けて法律に盛り込まれた。
今まさに、消費増税の是非をめぐり政府の集中点検会合が開かれている。そこでは増え続ける社会保障費の痛みをどう分かち合い、財政健全化への道筋をつけるかが議論されている。消費増税を求めておいて、一方で公共事業の大盤振る舞いでは国民の理解は得られない。