2月20日に行われる長崎県知事選では、県が推進しようとしている石木ダムの是非が重要な争点の一つとして浮上しています。
半世紀以上前に計画された石木ダムの予定地では、13世帯の住民がダム建設に反対して強制収用手続き後もこれまで通りの生活を営んでいますが、現職の中村知事は行政代執行も辞さないという姿勢です。
これまで自民党の全面的な支援を受けてきた現職に挑む新人の大石賢吾氏(元厚生労働省官僚の医師)は、石木ダムに反対する住民と直接対話すると語っているということですが、ダム建設への賛否は明らかにしていません。自民党は中村知事と大石氏の支援に分かれており、保守分裂の様相です。さらに、石木ダム事業の見直しを公約とする宮澤由彦氏(東京の食品コンサルティング会社社長)も知事選に参戦しました。
〈参考記事〉
〇「長崎県内政局」(長崎新聞、2022年1月2日)
〇「知事選 現新の動き相次ぐ 中村氏決意表明、大石氏に推薦状」(長崎新聞、2022年1月11日)
地元紙のアンケート調査によれば、石木ダムを巡って県民の世論は、反対意見の方が多いものの、「判断できない」という意見が半数近くもあるとのことです。ダムの必要性について、長崎県のPRが本当なのか、直接ダム問題に関わりのない県民には判断が難しいということでしょうか。石木ダムに反対する住民や市民団体は、公開討論会を求めてきました。県民の判断材料を提供するためにも、公開討論会が必要と思われます。
◆2022年1月9日 長崎新聞
https://nordot.app/852721469611524096?c=80503611818704904
ー長崎県知事選 県民500人アンケート<4> 石木ダム・反対3割、賛成2割 4割超「判断できない」ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダムは、事業採択から半世紀近く経過しても完成していない。2019年に全用地が強制収用されたが、住民13世帯は今なお水没予定地で暮らし抵抗を続けており、知事選でも争点の一つになる見通しだ。長崎新聞社が県民500人にアンケートすると“反対派”は3割で“賛成派”の2割を上回った。
六つの選択肢で質問。「反対」「どちらかと言えば反対」と答えたのは計30.8%。「賛成」「どちらかと言えば賛成」は計20%だった。
建設目的は川棚川の治水と佐世保市の利水だ。これに対し▽人口減少で社会状況が変わった▽自然を壊すべきではない-といった理由で「必要性に疑問」「不要」とする反対論が目立った。長崎市の40代会社員男性は「今まで(水は)賄えている。人口減少で今後需要があるのか」と効果に懐疑的。「住民の気持ちを逆なでするような姿勢が目立つ」(諫早市・40代アルバイト女性)など県の対応を疑問視する声も少なくなかった。
一方、賛成した北松佐々町の30代会社員男性は「県北地域の水源確保という面で必要。水がないと企業誘致もままならない」と強調。大村市の40代会社役員男性は「長い目で見て減災につながるのであれば必要」と答えた。対馬市の70代団体役員男性は「(水没予定の)住民は古里への思いがあると思うが、地域住民の安全安心を考えたら、やはり必要」とした。
残る選択肢のうち「計画を聞いたことはあるが判断できない」としたのは41.8%に上り、問題を縁遠く感じる人が多数いた。そもそも「計画の存在を知らない」層も7.4%いた。
当事者である佐世保市、川棚町の住民はどうか。
同市の回答者に限ると36.7%が賛成した。給水制限が264日間に及んだ1994年の「佐世保大渇水」の苦労を経験した人も多く、50代自営業男性は「『今足りているから』ではなく、備えとして必要」と訴えた。ただ、同市にも反対層は26.7%存在。30代自営業男性は「税金の無駄。水不足でもないのになぜ必要なのか。もっと他のことに使って」と求めた。
同町も賛否が割れ、50代主婦は「ダムの話はあまりしないようにしている。穏便に進めてほしい」と複雑な心境を吐露した。
県は昨年、水没予定地の住民と話し合いの機会を探ったが実現しなかった。「佐世保市民としては必要性を感じるが、反対住民としっかり話し合ってほしい」(30代団体職員女性)などの意見もあった。