八ッ場ダムを抱える群馬県長野原町では、昨日19日に町長選が告示されましたが、立候補したのが現職の萩原氏のみであったため、無投票で当選が確定しました。
長野原町の最も重要な政治課題は、八ッ場ダム事業が本格的に始まった1960年代以来、一貫してダム問題でしたが、萩原氏が初当選した2014年には、すでにダム建設が既定路線となっていました。2020年のダム完成後は、ダム事業で整備されたおびただしい地域振興施設やライフラインの維持管理が新たな課題となっています。
長野原町は吾妻川流域と、浅間山麓の高原地帯という気候風土が異なる二つの地域からなっています。吾妻川流域の古くからの集落は、標高1000メートル前後の浅間高原に比較して生活しやすく、人口も多かったのですが、長年のダム事業の影響で人口が大幅に減少しています。国の巨大ダムを抱える長野原町では、今後も難しい舵取りが求められます。
◆2022年4月19日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/104365
ー長野原町長選 萩原氏が無投票で3選決めるー
萩原睦男氏(50)は、昨年12月の長野原町議会一般質問で正式に出馬を表明した。八ツ場ダム建設事業の総括の時期に町を導いた2期8年の実績を背景に、全町議に加えて商工会など各種団体から幅広い支持を集めたほか、自民、公明両党の推薦も得て万全の態勢を築いた。
萩原氏は19日、同町北軽井沢の選挙事務所で出陣式を開いた。第一声で、「町を良くしたい思いは誰にも負けない。長野原がもっと高く飛躍するため、もっと熱く取り組んでいく」と述べ、情報格差の解消や新たな観光スタイルの発信など八つの目標を掲げた。選挙カーには町議が交代で乗り込み、共に支持を呼びかけた。
午後5時過ぎに当選の一報を受けた萩原氏は「人を育て、つなぐことが最大のテーマ。八つの目標を乗り越え、この町の生きる力を育みたい」と意欲を見せた。
◆2022年4月20日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/104480
ー【解説・長野原町長選】人材育て活気もたらせー
長野原町長選は、萩原睦男氏が無投票で3選を果たした。町を翻弄(ほんろう)し続けてきた八ツ場ダムは2020年3月、計画から68年をかけて完成。町民の生活再建事業も一段落した。その節目の時期に、「オールながのはら」を合言葉にして地域振興に取り組んだ実績が信任された格好だ。
長らく問題とされてきたダムをブランドと捉え、観光スポットを整備。地域振興を担う一般社団法人を設立した。本年度中に認定を目指すバイオマス産業都市構想では町内事業者と連携し、豊富な農林畜産資源の活用を進めている。
ダム完成で町の環境が大きく変わる中、町長選は2期連続の無投票となった。政策論争は行われず、町民に選択の機会がなかった。他自治体でも「選べない選挙」が相次ぎ、地方政治の担い手不足は深刻だ。
2期8年を経て見えた町の課題について、萩原氏は「連携を深めることと、人を育てること」と指摘した。人口減が進む中、町づくりを「自分事」として捉えて動く人材の育成が急務だろう。町政に対する関心を高め、地域に活気をもたらせるか。誠実に政策を実行し、町民の負託に応えてほしい。