八ッ場ダムほか全国のダムの堆砂状況(2021年3月末)

 川の流れを遮るダムは、水とともに上流から流れ込む土砂を貯め込みます。土砂が貯まると貯水容量が減ってしまいますので、ダム計画ではダムの寿命を100年とし、100年の間にたまる土砂の想定量を計画堆砂容量として確保します。八ッ場ダム計画では堆砂容量が1750万㎥とされました。

 このほど阿部知子衆院議員事務所が国土交通省所管の全国のダムの堆砂状況を示す最新データ(令和2年度末)を入手し、提供してくださいました。

全国のダム堆砂状況一覧(令和2年度末時点)のサムネイル 右の画像、あるいは以下の文字列をクリックすると、データが拡大表示されます。各ダムの堆砂量と共に、ダムのある水系、河川名、管理者名、総貯水容量、堆砂容量が掲載されています。

国交省所管の治水等多目的ダムの堆砂状況一覧(令和2年度末時点)
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2022/05/890bd9bb2325f8df260a133ef82a4470.pdf

 国土交通省のこのデータによれば、八ッ場ダムの堆砂量は、ダム運用開始から一年後の昨年3月末時点で299.5万㎥に達していました。これは八ッ場ダム計画における年間平均計画堆砂量17.5万㎥の17年分になります。

 情報開示資料と阿部知子事務所の入手データによる八ッ場ダムの堆砂量の経過は以下の通りです。


 2019年10月 台風19号襲来
 2019年12月  251万㎥

 2020年11月末 274万㎥ 
 2021年3月末  299.5万㎥

 大量の土砂が流れ込んだ原因は、2019年10月の東日本台風豪雨とされますが、台風襲来後も想定量を大幅に上回る土砂が流れ込み続けていることがデータの推移から読み取れます。台風直後の2019年12月の堆砂量は堆砂容量の14%超に達し、それから一年足らずの2020年11月までに23万㎥増え、その4か月後の2021年3月末までに更に25.5万㎥の土砂が上流域から貯水池に流れ込んできたことになります。
 八ッ場ダムの上流域は火山性のもろい地質からなっており、かねてより堆砂の想定が甘いと指摘されてきました。
写真右上=八ッ場ダム貯水池で行われている土砂掘削作業。2021年8月27日撮影 

 堆砂は川の流れが止まるダム湖上流端から進行します。八ッ場ダム貯水池の上流端周辺(写真右、4/23撮影)には、長野原町庁舎、JR長野原草津口駅など公共施設が集積しています。
 堆砂が進むと水害の危険性が高まるため、八ッ場ダムを管理する国交省関東地方整備局はダム湖の水位が下がる洪水期(7月~10月初旬)に土砂を掘削・除去する作業を行っていますが、大雨が降るごとに土砂は流れ込みます。

国交省所管の治水等多目的ダムの堆砂状況一覧(令和2年度末時点)-2のサムネイル 右の画像は、2019年度末の全国のダムの堆砂状況として国土交通省が今年1月に開示したデータです。画像をクリックすると全15ページが拡大表示されます。堆砂がダム計画の想定よりはるかに速く進んでいるダムが全国各地にあることがわかります。(このリストには、2019年度末完成の八ッ場ダムは含まれていませんが、県営ダムや電力会社のダム等のデータも見ることができます。)

 このページで取り上げたダムには青印をつけました。堆砂量が堆砂容量を超えているその他のダムには黄色の印をつけました。
 北海道の二風谷ダムは、ダム計画時よりはるかに速く堆砂が進行したため、ダム完成後に堆砂容量を大幅に引き上げています。堆砂容量が設定されていない発電ダム、堆砂が著しく進行していながらリストに含まれていない品木ダム(群馬県中之条町)のようなケースもあり、このリストだけではわからないこともありますが、堆砂の進行は水害の危険性を高め、貯水というダムの役割を損なうものであるだけに、全国のダムの実態を全体として確認することは重要です。

 首都圏では、八ッ場ダムに次ぐ高額な事業費をかけて建設された宮ヶ瀬ダム(相模川水系、2001年竣工)が完成から約20年ですが、すでに堆砂容量1000万㎥の約50年分の堆砂量(514.5万㎥)に達しています。
 そのほか、国直轄の利根川水系の下久保ダム(1968年)、川治ダム(1983年)、荒川水系の二瀬ダム(1961年)も堆砂量が堆砂容量を超えています。どのダムも上流域からの流入土砂が多く、堆積土砂の除去作業が追いつかない状態です。

 八ッ場ダム上流の嬬恋村では、2019年の東日本台風豪雨で各所で土砂崩れが発生しましたが、一昨日にも崩落が発生し、吾妻川沿いの国道が通行止めになりました。
 関連記事を転載します。

◆2022年5月10日 上毛新聞
ー嬬恋橋の岩盤崩落で通行止め 10日午前7時からー

 県中之条土木事務所は9日、群馬県嬬恋村の国道144号嬬恋橋の橋台近くの岩盤の一部が崩落したため、橋を10日午前7時から通行止めにすると発表した。
 同事務所によると、8日未明、コンクリート吹き付けの岩盤が崩落する様子が現場付近のカメラで確認された。原因は調査中だが、2019年の台風19号の影響も考えられるという。
 村によると、橋は周辺に村役場や学校などがある中心部の主要道路。熊川栄村長は「一刻も早い復旧とともに、国道144号の負担を減らすためにも上信道の早期建設を望んでいる」と話した。