八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムモニタリング委員会(第三回)の説明資料

 国土交通省は八ッ場ダム建設による環境影響を調査検討するために、専門家等からなる「八ッ場ダムモニタリング委員会」を設置しています。
 第一回の委員会は八ッ場ダムの試験湛水が開始される直前の2019年9月4日に開催されました。2021年2月9日の第2回に続いて、今年2022年2月10日に第3回委員会が開催されました。

 委員会の資料は、国土交通省関東地方整備局利根川ダム統合管理事務所のホームページに掲載されています。
 https://www.ktr.mlit.go.jp/tonedamu/tonedamu00563.html

 八ッ場ダムモニタリング委員会は二年後には終了し、環境影響の調査検討は他のダムと同様、フォローアップ委員会の役目となりますが、フォローアップ委員会は5年に一回開かれるのみです。

 また、第3回委員会は今年2月に開かれましたが、その説明資料が掲載されたのは、5か月も後の7月になってからでした。

第三回 八ッ場ダムモニタリング委員会 説明資料 (2022年2月10日)
 https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000834994.pdf

 上記資料は国土交通省から委託された業者が形よくまとめたものですので、この資料から八ッ場ダム建設による環境影響の実態を把握するのは困難ですが、現時点ではこれ以外の資料は公開されていません。

 参考までに資料の一部を掲載します。

〇11ページ
 水質調査の項目では、BODの説明に「令和2年においてダム下流域のダム放流口地点、岩島地点及び原町 本川地点で一時的に濃度が上昇した。」という記述。ダム湖の水質は、概して時間の経過とともに悪化していくが、ダムが完成した2020年(令和2年)において、ダム湖の水質が富栄養化で悪化した可能性がある。
 八ッ場ダム上流の草津白根山麓ではヒ素を含む温泉水が湧き出しており、温泉水が流れ下る白砂川などが吾妻川に合流する。このため、ヒ素濃度も調査対象となっている。
 

〇33ページ
 保全対象種とされるアサマシジミ(群馬県・絶滅危惧Ⅰ類)は、ダム建設後確認されていない。

〇35ページ
 猛禽類は鳥類の生態系ピラミッドの頂点にあり、森林生態系の豊かさの指標とされる。八ッ場ダム周辺の岩場は全国的にも数少ないイヌワシ、クマタカ(ともに絶滅危惧ⅠB類、イヌワシは国の天然記念物)の営巣地であったが、関連事業の進行につれて減少。イヌワシは1999年に巣立ちが確認され、2012年まで断続的に繁殖活動が確認されたが、その後は確認されていない。

〇39ページ、45ページ
 絶滅が危惧される植物37種について、移植、播種により保全が図られた。ダム完成後、確認された14種はとりあえず保全に成功したということになるが、ダム湛水前、水没地に自生していた状態とは大きく異なることは想像に難くない。また、たとえ一旦は移植できたとしても、移植地が自生地と同じ環境でないならば、いずれ消失する可能性がある。
 ダム完成後、確認されていない植物23種ーミルフラスコモ、マツバラン、キンモウワラビ、コハナヤスリ、ミョウギシダ、マダイオウ、カワラアカザ、フクジュソウ、ナガミノツルキケマン、ヤシャビシャク、オオヤマカタバミ、オオツルウメモドキ、ハナビゼリ、アキノギンリョウソウ、ホソバツルリンドウ、カメバヒキオコシ、バアソブ、アギナシ、ギンラン、キンラン、シロテンマ、ジガバチソウ、ハクウンラン。
  
 

〇46ページ
 植物の重要種を個体監視対象とし、湛水前後の確認の結果を示している。27種のうち未確認の17種は、ナガホノナツノハナワラビ、マダイオウ、カワラアカザ、エンコウソウ、ハンゲショウ、ヤマシャクヤク、サイカチ、コフウロ、サワルリソウ、ニッコウヒョウタンボク、カワラニンジン、ノニガナ、キンラン、ジガバチソウ、スズムシソウ、オオバノトンボソウ、ヒトツボクロ。

〇57ページ
 八ッ場ダム周辺では、ダム関連事業の進行とともにハリエンジュ(ニセアカシア)など外来種が繁茂するようになり、駆除対策が実施されている。