大戸川ダムの建設目的と付け替え道路工事

 八ッ場ダム事業では、ダム建設以外の関連工事に事業費の9割以上が投入されました。関連工事の中で最も多いのは水没する道路等の付け替えを名目として行われる工事です。
 関西の淀川水系では、一旦は中止とされたものの2021年8月の淀川水系河川整備計画の変更により大戸川ダム計画が復活することになりました。大戸川ダムも事業目的はダムそのものにあるではなく、関連工事の予算を確保することにあるようです。

 大戸川ダムは元々は利水と治水を兼ねた多目的ダムとして計画されましたが、水需要の減少により利水目的が失われました。2009年3月策定の淀川水系河川整備計画により、治水(洪水調節)専用の流水型(穴あき)ダムになりましたが、必要性が希薄なのでダム事業は10年以上凍結されていました。

 現在進められている工事は関連の付け替え道路工事であって、ダム本体工事がいつ始まるのかは決まっていません。

〈参考ページ〉
 国土交通省近畿地方整備局 大戸川ダム工事事務所ホームページより
 https://www.kkr.mlit.go.jp/daido/what/jigyo.html

大戸川ダムの目的

 これまでの目的(多目的ダム)
 大戸川ダムは、淀川水系工事実施基本計画で計画されたダム群の一つとして、大戸川の他宇治川、淀川本川の洪水調節、流水の正常な機能の維持、新たな水資源の確保、発電を目的とする多目的ダムとして、これまで整備してきました。

 これからの目的(河川整備計画)
 平成21年3月に策定された淀川水系河川整備計画により、利水の撤退等に伴って、利水容量を廃止した洪水調節専用目的の流水型ダムとして位置付けることになりました。

 なお、当面はダム本体工事に着手せず、中・上流部の河川改修の進捗状況とその影響を検証しながら実施時期を検討します。
また、これまで進捗してきた準備工事である県道大津信楽線の付替工事については、交通機能を確保できる必要最小限のルートとなるよう見直しを行うなど徹底的にコストを縮減した上で継続して実施します。

 なお、大戸川ダムの総事業費は1080億円程度となる見通しです。2010年当時の資料では大戸川ダムの総事業費は約740億円でしたから、1.43倍の増額です。今後、事業が進むにつれて、さらなる増額が予想されます。

◆2022年8月20日 乗りものニュース
https://www.goo.ne.jp/green/column/trafficnews-121501.html
ー「大津〜信楽」の”抜け道”が工事進行中 大戸川ダム工事で付け替え 隘路解消へー

 20年以上にわたる大工事も終わりが見えてきました。

信楽・水口方面への短絡ルート
 滋賀県南部の”奥地”・甲賀市信楽と大津市街をむすぶ道路が、大きく生まれ変わろうとしています。

 大津市街から四日市・名古屋方面へ向かう際、国道1号は草津・栗東方面へ大きく迂回しています。広大な田上山地が阻んでいるからです。

 その田上山地の谷間を抜けて甲賀市水口へショートカットするのが、信楽経由のルートです。大津から信楽までは県道・大津信楽線、信楽からは国道307号線が走っています。新名神の開通までは、このルートが大津側からの唯一の経路となっていました。

 その大津信楽線、大津側は大戸川の渓流沿いを縫うような道路で、やっとのことですれ違える幅しかない区間が長く続きます。それでいて先述のとおり抜け道になることから交通量も多く、トラック同士の離合で道路が詰まることも。また、大雨などで真っ先に通行止めとなる区間でもあります。

 この難所が、山の中腹を走る新ルートとして改良されます。まず、大津市平野町から新名神高架沿いを走るバイパスが2019年に開通。そこからは未開通で、山間部に入ると大戸川を南岸へ渡り、新3号橋で北岸に渡ると、ダムの上へ一気に標高を上げ、そこから中腹を縫うように信楽町黄瀬地区まで高架橋と切土で抜けていく計画になっています。

時代に翻弄された道路、どこまで進んだ?
 この工事の発端は「大戸川ダム」の建設事業で、ダム貯水池に沈む道路の付け替え道路として、整備が進められているのです。

 大戸川ダムは昭和40年代から調査が行われ、1989(平成元)年に事業化。川沿いの集落の移転も完了し、付け替え工事が始まったのが1999(平成11)年のことでした。

 しかし2008(平成20)年になり、当時のダム反対の機運も後押しした形で、淀川水系河川整備計画の策定にあたって大戸川ダムは凍結の方針に。付け替え道路の工事は、最小限のコストと構造で、細々と予算を付けて継続されることになりました。

 それから13年が経過した2021年。河川整備計画が新たに策定され、大戸川ダムは再び計画に加えられます。それとともに付け替え道路の工事も再開。ほとんど完成した状態で長期間残されていた高架とトンネルも、いよいよ舗装や電気設備の工事が着手され、現在に至ります。

 現在、道路本体が未完成となっているのは大津市街寄りの取付部、新2号橋〜新8号橋の数工区。切土・盛土や擁壁工事が同時進行で進められています。大工事となる計47か所の橋梁は、ほぼ形が見えている状況です。