さる1月16日、球磨川支流の川辺川に建設することになった流水型ダムが環境に与える影響について評価する熊本県の審査会の第2回会合が開かれました。
流水型川辺川ダム事業は、2008年に白紙撤回された旧来の川辺川ダム事業が環境アセスメント法の施行(1999年)より前に開始されたという理由で、環境アセス法の対象になっていません。熊本県の蒲島知事は川辺川ダム計画に懐疑的な県民世論に配慮する形で、環境アセス法に準じた手順で流水型川辺川ダムの環境アセスメントを行うことを事業者(国土交通省)に要望し、国交省がこれを受け入れました。
その経過と今後については水源開発問題全国連絡会に掲載されている「流水型川辺川ダムの環境アセスの現状と今後について」をお読みください。
国が行う環境アセスについては、県知事が意見を述べる機会が何回かあります。先ごろ開かれた熊本県の審査会は、県知事の意見案を作成するために開催されています。すでに第1回会議が2022年12月25日に開催されています。
環境アセスは、環境配慮レポート、環境影響評価方法レポート、環境影響評価レポート(案)、環境影響評価レポートという手順で行われていきます。現在は環境影響評価方法レポートの段階です。しかし、この手続きは流水型川辺川ダムに関して環境アセスも行ったというポーズを示すだけのものです。結論が「環境に配慮すれば、流水型川辺川ダムを推進してよい」となることは目に見ています。手続きだけは多いのですが、ダム推進をもっともらしく見せるためのセレモニーにすぎません。
何ともむなしい話ですが、わが国のダムを巡る環境アセスメントは、本来の役割である環境保全の役にはまったく立っていません。
◆2023年1月17日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/918152
ー国蓄積データを要求 流水型ダム計画で県審査会ー
2020年の熊本豪雨で氾濫した球磨川の支流・川辺川に国が建設する流水型ダムが環境に与える影響について評価する県の審査会の第2回会合が16日、熊本市中央区の熊本テルサであり、審査会長の松田博貴・熊本大大学院教授が「国のデータをもらわないと環境への影響は評価できない」と指摘した。
地下水などに詳しい松田会長が提供を求めたのは旧川辺川ダムの建設を見越し、川の流れを切り替えるため造られた仮排水路など既存施設のデータ。松田会長は「国はいろんなデータを蓄積しているはず」として、「情報をもらわないと、何が環境に影響を及ぼす可能性があるのか評価できない」と述べた。
ほかの委員からは「せせらぎの音や日差しの変化などにも配慮が必要だ」「工事中に仮排水路を魚が通るのは難しいのではないか」といった意見が出た。
蒲島郁夫知事はこれらの意見を踏まえ、国が環境影響評価の手法について取りまとめた「方法レポート」への意見を国土交通省に提出する。
次回は、国の「準備レポート」が公表された後に開く。(元村彩)
◆2023年1月17日 テレビ熊本
https://www.fnn.jp/articles/-/471968
ー川辺川流水型ダム計画 熊本県の審査会が国公表のレポートについて意見交わすー
川辺川に建設される流水型ダムの環境への影響を評価する熊本県の審査会の会合が16日開かれ、国が公表したレポートについて意見を交わしました。
川辺川の流水型ダムをめぐって国交省は、環境アセス法と同等の環境影響評価を行うとして、法律に準じたレポートを作成しています。
16日の会合では委員から意見が出され、審査会の松田博貴会長が「旧ダム計画で造られた仮排水路など既存施設のデータが一切ない。これでは何が環境に影響を及ぼす可能性があるのか評価できない」と指摘し国にデータの提供を求めました。
蒲島知事は、審査会での意見を踏まえ「レポート」に対する意見を国交省に提出する方針です。