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ダム建設で一部が水没 熊本県五木村に100億円規模の財政支援へ

 川辺川ダムの水没予定地を抱える五木村は、2008年に休止された川辺川ダム計画には賛成していましたが、現段階では新たな流水型・川辺川ダム計画への賛否を明らかにしていません。
 (参考記事➡「「二度とぶれないで」五木村長インタビュー」(朝日新聞、2022年8月23日)

 熊本県はさる1月21日、五木村を訪れ、村の振興に100億円規模の新たな財政支援を講じる方針を提示しました。
 ダム事業では犠牲になる水没予定地域に対して、補償金や地域振興事業を大盤振る舞いして同意を取り付けるのが通例で、「札束で頬を叩く」などと揶揄されます。新たな川辺川ダム計画でも同じ手法がとられているようです。

 以下の地元初の報道によれば、熊本県は蒲島知事が川辺川ダム計画の白紙撤回を表明した08年度に、旧・川辺川ダム事業で疲弊してきた五木村の支援を目的として、総額10億円の県の振興基金を創設。11年度には村の生活再建のために50億円の予算を組み、国道や公園の整備などに利用してきたということです。五木村の水没予定地では、住民のほとんどが地区外に転出したり、周辺に造成された代替地へ移転しましたが、ダム中止の可能性が高まったことで、見捨てられた土地を再び利活用する計画が進められてきました。
 ところが、2020年の球磨川水害をきっかけに新たな川辺川ダム計画が立案されたことで、水没予定地は再び利用できない土地となり、しかも今度は洪水時のみ貯水する「流水型」(穴あき)ダムとなるため、かつて検討されたダム湖観光の可能性もありません。このため、熊本県は基金の10億円増額を五木村に伝達し、さらに今回の財政支援定時に至りました。

 提示された100億円のうち、50億円は村の基金に積み立て、観光振興や村道整備などの対策に村が主体的に使えるようにするとのことです。熊本県は早くも23年度に10億円を用意し、翌年度以降は基金の使用状況に応じて段階的に交付する方針のようです。また残りの50億円については、国の川辺川ダム関連事業のうち未整備の付け替え道路事業の中止などで不要になる県負担金を財源に見込んでおり、今後、国、県、村の三者で使い道を協議する方針とのことです。

 しかし、24日付の熊本日日新聞の続報によれば、ダム受け入れと引き換えの熊本県の財政支援の申し出について、五木村は慎重な姿勢です。「木下村長は「内々の話。県が策定中の村の振興計画が示されているわけではなく、コメントできない」と述べ、県の支援の提示に対する評価を避けた」、とのことですし、岡本精二議長は「突然提示されたばかりで何とも言えない。3月にまとまる振興計画の中身を見てからでないと…」と慎重な言い回しに終始」、元村長の「西村久徳議員は「村の人口減少の食い止め方といった具体策が見えない。金額はまあまあの数字と思うが、本来は振興内容を決めて金額を提示するべきだ。順番が逆だ」と指摘」しているとのことです。

◆2023年1月22日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/923670
ー五木村振興、新たに100億円 県の支援、知事伝達 23年度から20年間でー

 球磨川支流の川辺川への流水型ダム建設に伴い、貯水時に一部地区の水没が想定される五木村の振興に向け、県は21日、総額100億円規模の新たな財政支援を講じる方針
を村側に提示した。支援期間は2023年度からおおむね20年間を想定。・・・(以下略)

◆2023年1月24日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/925564
ー五木村振興「評価まだ早い」 ダム建設、県100億円支援で村長ら 「計画見てから」「順番が逆」ー

 球磨川支流の川辺川への流水型ダム建設に伴う地域振興を目的に、蒲島郁夫知事から総額100億円規模の財政支援をする方針が伝えられた五木村では、前向きに捉える声もある一方で、「提案を評価するのは時期尚早」といった慎重な受け止めが相次いだ。  …(以下略)

◆2023年1月22日 TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/287684?display=1
ーダム建設で一部が水没 熊本県五木村に100億円規模の財政支援へー

 ダム計画に翻弄される熊本県五木村に、県が100億円規模の財政支援をする方針を示したことがわかりました。

 球磨川の支流、川辺川にダムが建設されると村の一部が水没する五木村(貯水時)

 この川辺川のダムをめぐっては2008年に熊本県の蒲島知事が白紙撤回したものの3年前の豪雨を受け、国と県は去年8月流水型ダムの建設を柱とする球磨川の整備計画を策定しました。

 五木村の関係者によりますと21日、県がダム計画に翻弄される五木村に対し100億円規模の財政支援をする方針を伝えたということです。

 これは来年度から概ね20年間での支援額です。

 今年3月中には、国と県が村の振興計画をまとめる予定で、その計画で使われる見込みです。

 一方、五木村はまだ計画がまとまっておらず額が妥当かも含め、今後県とやり取りを続けたいとしています。

◆2023年1月22日 テレビ熊本
https://www.fnn.jp/articles/-/474618
ー五木村振興に100億円支援へ 熊本県が村に方針示すー

 蒲島知事は、川辺川での流水型ダム建設に伴い、一部水没が想定される五木村の振興に向けて、新たに100億円規模の財政支援を行う考えを明らかにしました。

【蒲島知事】
「50億円はより五木村の人の希望に沿った使い方で。後の50億円はどうしてもやらないといけない。(五木村への)県の事業がありますので」

 TKUの取材に対して、蒲島知事は21日、五木村を訪れ、村の振興に向けて100億円規模の財政支援を行う考えを村に示したと明らかにしました。

 100億円規模の財政支援は、来年度から約20年の期間で検討され、このうち50億円は村が主体的に活用できるようにする方針です。

 蒲島知事は、「これまでダムに翻弄されてきた五木村の人々への自身の覚悟と信念」と述べ、「使い道については自由度を大きくしたい」と話しました。