国土交通省は現在、首都圏を流れる多摩川の治水方針を定める河川整備基本方針の改定を行う審議会を開いています。
多摩川流域では、2019年10月に襲来した令和元年東日本台風(台風第19号)によって、東京都世田谷区玉川で溢水による浸水被害が発生した他、各地で内水等による浸水被害がありました(浸水面積0.7ha、浸水家屋40戸のほか、多摩川・浅川の21カ所被災)。このため、多摩川水系河川整備基本方針の改定が必要という判断がなされました。
第3回の案内が国交省のHPに掲載されましたので、お知らせします。
★多摩川水系及び関川水系の2つの河川整備基本方針についての審議
https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_001152.html
報道発表資料より
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このたびの基本方針改定のポイントは、石原地点(中流部の治水基準点、東京都調布市)の基本高水流量が8700㎥/秒から10100㎥/秒に引き上げられることです。
「基本高水流量」とは、200年に一度程度の大洪水の際、流域に降った雨が自然な状態で川に流れ出る水量として計算式で算出されます。これに対して、人工的な施設で洪水調節を行ったと想定した場合の流量は「計画高水流量」と呼びます。河川整備基本方針で設定された基本高水流量と計画高水流量をもとに、河川整備計画で個別具体的な洪水調節のための事業が位置づけられることになっていますから、基本高水流量が引き上げられれば、それだけ多くの治水事業が必要になります。
従来の多摩川水系の河川整備基本方針では、石原地点の基本高水流量は8700㎥/秒、計画高水流量は6500㎥/秒、その差は2200㎥/秒です。この基本方針に従えば、国は2200㎥/秒の洪水調節を行える人工的な施設を造らなければならない筈ですが、従来の多摩川水系の河川整備基本方針には、「なお、 2,200m /sec3にに見合った洪水調節施設の具体的な施設については、さらに、詳細な技術的、社会的、経済的見地から検討した上で決定する」と書かれているだけで、具体的な今後の計画はありません。
(多摩川の上流には小河内ダムがありますが、小河内ダムは東京都の水道専用の貯水池であって、治水機能はありません。)
今後の改定により、多摩川水系の基本高水流量は10100㎥/秒へと大幅に引き上げられることになりますが、はたして、それを担保する具体的な治水対策はあるのでしょうか。
「基本高水」という机上の数字をもとにした治水対策そのものが破綻しているのではないでしょうか。
〈参考〉国土交通省ホームページより
〇「多摩川水系河川整備基本方針の変更について」 <説明資料>(2022年11月18日、第1回審議会資料)
〇多摩川水系河川整備基本方針 本文新旧対照表(2022年12月23日、第2回審議会資料)