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長良川のアユ、減少進むもレッドリスト削除(岐阜新聞)

 ダムや堰によって川の自然な流れを妨げれば、川の生態系は大きな影響を受けます。1995年に運用が開始された長良川河口堰は、こうした影響を懸念する反対運動がとりわけ大きかった巨大事業です。
 特にアユやアマゴをめぐっては、市民運動やアウトドア関係者、漁業者、環境問題に取り組む研究者など多くの人々が様々な形で反対運動を展開しました。反対運動は巨大事業を止めることはできませんでしたが、国はその後、河川法を一部改正し、河川事業において環境に配慮することを義務付けることになりました。しかし、改正河川法は次第に形骸化し、問題山積の公共事業が今も全国各地で進められています。
 以下の記事によれば、長良川のアユもアマゴも危機的な減少にもかかわらず、レッドリストから削除するとのことです。環境破壊の実態から目を背ければ、当座は問題を先送りできるということなのでしょうが、これでは未来世代に対してあまりに無責任です。
 
◆2023年3月26日 岐阜新聞
https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/211456
ー遡上減少もレッドリスト削除「長良川の鮎」放流と識別困難 漁業関係者の反発背景、岐阜市ー

 絶滅の恐れのある野生生物を記した2015年版の「岐阜市版レッドリスト」で「準絶滅危惧」とされた長良川の鮎(天然遡上(そじょう))が、8年ぶりの改訂でリストから削除されたことが、改訂検討委員会関係者への取材で分かった。清流長良川の象徴で、後に世界農業遺産にも認定された「県の魚」のリスト入りを巡る漁業関係者からの強い反発が背景にあるとみられる。掲載の23年版レッドデータブックは27日に公表される。

 改訂版は削除の理由を「水産上の管理が優先し、放流個体か天然個体であるかの判断が困難」と記載。鮎が漁業権魚種で、種苗放流が義務付けられるなど水産利用が顕著なことが考慮されたとみられ、選定に当たり市側から専門調査部会に該当種を外す方針が示された。同様の理由で、「絶滅危惧Ⅱ類」(絶滅の危険が増大)だったアマゴ(サツキマス)も削除された。

 長良川の鮎は、1995年の長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)の運用開始頃から漁獲量が減少に向かった。15年版は、漁業者によって卵が河口堰まで運ばれ、人工ふ化で遡上数を維持している状況を踏まえ、存続基盤が脆弱(ぜいじゃく)な「準絶滅危惧」に分類。これに対し、流域7漁協でつくる長良川漁業対策協議会が「鵜飼や漁、観光に影響が出る。漁師の話も聞いていない」と反発し、撤回を求めていた。

 県水産振興室によると、92年に1029トンあった長良川流域の鮎の漁獲は前回リスト作成年の15年段階で311トンまで落ち込み、21年は231トンとさらに低迷。冷水病やカワウの食害、遊漁者の減少も影響したとみられている。

 個体数を確保する放流は年400万匹ペース(県推定値)で続けられてきたが、天然の遡上数は15年の719万匹(同)が22年には1割強の74万匹(暫定値)まで急激に落ち込んだ。天然鮎を取り巻く現状は「危機的状況に陥りかねない」(同室)ほどで、サツキマスも、96年に1438匹(河口堰管理所調べ)あった岐阜市中央卸売市場の長良川産入荷数が、昨年はわずか3匹にとどまるほど減少している。

 23年版レッドリストは、専門調査部会の選定を基に22年度、3回の改訂検討委員会で見直し作業を進めてきた。

 長良川の鮎の生態に詳しい古屋康則岐阜大教育学部教授(動物生理生態学)は「岐阜市が何の目的でレッドリストを作っているのかが問われる。漁業権魚種で種苗放流が義務付けられているという観点なら除外は仕方ないと思うが、放流は長期的に見れば個体数を減らすという論文も出ており、リストに掲載しないとしても市としてきちんと現状の記録を残してほしい」と話している。