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石木ダム事業、長崎県が強制収用した土地で初の工事

 長崎県の石木ダム事業は、事業用地の13世帯の住民がダムに反対しており、県内だけでなく全国の支援者が状況を見守っています。

 長崎県はすべての事業用地の強制収用手続きを済ませていますが、抵抗する住民らはこれまで通り、田畑を耕して元の土地に暮らし続けています。
 膠着状態が続く中、先月、長崎県が強制収用した土地で初めて工事を行い、緊張が走りました。
 長崎県の強引な工事着手については、公共事業における強制収用を定義づけている土地収用法において、事業認定告示日から10年たっても全部の土地を事業に利用していない場合は買い戻す権利(買受権)が生じるという規定との関連を疑う声があります。しかし、長崎新聞の以下の報道によれば、長崎県はこれを否定しています。

 反対住民らを支援する長崎県の市民団体「石木川まもり隊」が経緯と顛末を詳しく伝えています。
 以下のブログの解説によれば、今回長崎県が工事を始めた土地は、まだ強制収用されずに残っていた土地でした。長崎県は突然始まった工事に住民は抗議し、測量のやり直しを求めたところ、長崎県は改めて話し合うと住民に約束したそうです。ところが、その話し合いがなされないまま、いきなり工事が始まりました。しかし、住民や支援者ら30人が体を張って工事を阻止し、このありさまがマスコミ各社に報道されたこともあってか、結局、長崎県は工事は中断せざるを得なくなり、測量のやり直しをすることになったということです。
 石木ダム事業における長崎県と住民との対立の歴史は、このように県が強硬姿勢で事態を突破しようとするたびに住民の抵抗にあい、事業が行き詰るという状況の繰り返しです。

 〇工事を止めろ!約束を守れ!
  https://ishikigawa.jp/blog/cat05/8515/

 〇測量の約束
  https://ishikigawa.jp/blog/cat05/8518/

◆2023年3月1日 NHK長崎放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20230301/5030017342.html
ー川棚町の石木ダム建設 県が強制的に収用した土地で工事開始ー

 川棚町で建設が進む石木ダムをめぐって、長崎県が、法律に基づき地元の住民から強制的に収用した土地で、工事を始めていたことが明らかになりました。
県によりますと、収用した土地で工事が行われるのは初めてだということです。

 長崎県と佐世保市が川棚町で建設を進めている石木ダムをめぐっては、県の収用委員会がダム建設に必要なすべての用地を強制的に収用できるようにする裁決を下し、4年前、用地の所有権が地権者から国に移り、すでに家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きができるようになっています。

 こうした中、長崎県は先月20日から、収用した土地で、ダム本体の一部の掘削工事を開始したことを明らかにしました。

 県によりますと、これまでは任意で取得した土地で工事が行われていて、地元の住民から収用した土地で工事が行われるのは初めてだということです。

 工事が行われている川棚町の建設現場では、雨が降る中、工事を行わせないよう住民などが重機の周りに座り込む様子が見られました。

 住民のひとり、岩下すみ子さんは「これまでの強制測量、強制収用と同様に今回もまた強制的なやり方で、『これが公共事業なのか』と言いたい。権力をかざすのではなく、住民側としっかり話し合いをしてほしい。私たちの望みはここで暮らしたい、この自然を残したい、ただそれだけです」と話していました。

◆2023年3月1日 長崎新聞
https://nordot.app/1003482275767779328
ー石木ダム収用地で初工事 長崎県、買受権との関連否定ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県は28日、土地収用法に基づき強制収用した事業用地で工事に着手したと明らかにした。これまでは任意取得した土地で進めてきており、収用地では初めて。反対住民は現地で作業を阻止しようとするなど抵抗した。
 県河川課によると、2021年9月に本体工事として初めて着工したダム堤体左岸部の一部に収用地があり、今月20日ごろから掘削を始めた。19年に収用裁決された山林で、所有権は既に国に移っている。家屋や耕作地はない。
 収用地について、同法は事業認定告示日から10年後に「全部を事業の用に供しなかったとき」に買い戻す権利(買受権)が生じると規定。石木ダムは9月で10年となるため、昨年12月に朝長則男市長が懸念し、大石賢吾知事に収用地での着工を迫った経緯がある。
 県は工事が進んでいるとして「買受権は発生しない」との見解。今回の着工については「工程に沿って進める中で、そこに収用地が含まれていた。買受権が発生するから着手したわけではない」と関連性を否定した。市水道局水源対策・企画課は「県から詳細な説明を受けておらず、買受権にどのような影響が出るか現時点では分からない」とコメントした。

https://nordot.app/1003486145428127744
ー「工事を止めろ」一時騒然 石木ダム収用地初着工 反対住民、体張り抵抗ー

◆2023年3月2日 長崎新聞
https://nordot.app/1003838555883601920
ー「工程に沿って進めている」知事 石木ダム収用地の工事着手でー

◆2023年3月1日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASR316RQBR31TOLB007.html

◆2023年3月1日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230302/k00/00m/040/052000c
ー長崎・石木ダム 13世帯住民座り込み 収用地で県が工事着手ー

(一部引用)
「県によると、2月20日にダム本体の建設に向け、収用地内の山林で掘削工事を始めた。

 13世帯の一人、岩下秀男さんが所有していた土地では、28日朝、工事が始まった。事前連絡はなかったため、着工を知った住民たちは通常座り込んでいる2カ所から現地に駆けつけた。1日は朝から住民や支援者ら約30人が集結して座り込み。工事関係者とのにらみ合いが続き、時々、パワーショベルが動き出すと住民が移動して掘削を阻止した。」