国土交通省が熊本・阿蘇に建設中の立野ダムの堤体打設が完了し、式典が開催されたとのニュースです。
熊本地震の被災地で本体工事が強引に進められた立野ダムをめぐっては、数年前まで反対運動の集会などのニュースもありました。少なくとも両論併記の記事が多かった印象がありますが、最近は推進側の情報のみの記事が殆どです。
立野ダム事業には、治水効果への疑問、自然破壊、地盤の悪い場所にダムを造る危険性などが指摘されてきました。まるで祝祭のように完了式典を伝えるニュースを見るにつけ、負の遺産となるこのダムについて、こんな情報のみでよいのだろうかと思います。
朝日新聞は以前は立野ダム問題をしっかりと伝えていたように思いますが、以下の記事を読むと、事業者と一体化しているように見えます。危険を伴うダム建設現場で働く人々に感情移入する気持ちはわからなくはありませんが、立野ダムが公共事業として抱えている問題にまったく関心を向けないのはなぜなのでしょうか。
◆2023年5月25日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASR5S6X51R5RTLVB00J.html
ー熊本・立野ダム完成へ着々 現場指揮官は「高名の木登り」の心得ー
◆2023年5月21日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/1052055
ー立野ダム、洪水調節可能に 熊本・南阿蘇村、大津町 本体のコンクリート工事完了で式典、見学会ー
国土交通省が白川上流で建設中の国営立野ダム(熊本県南阿蘇村、大津町)本体のコンクリート打設が完了し、現地で21日、式典があった。ダム本体は一部関連工事を残し、ほぼ完成。洪水調節機能を発揮できる状態となった。
流域4市町村などから約30人が出席。藤巻浩之九州地方整備局長は「阿蘇カルデラに降った雨は立野を出口に流れ出る。ここに建設されたダムの治水効果は大きい」とあいさつ。大西一史熊本市長が「雨の降り方が激甚化する中、治水は喫緊の課題。今後も国と連携して流域治水を進める」と述べた。
大津東小、南阿蘇西小の児童が、将来の夢などを書いた石をダム堤頂部に設けた穴に入れた後、生コンクリートが流し込まれ、打設が〝完了〟した。
県内外から応募した約100人がダム堤の下部付近や頂部を見学。大津町の阪梨正則さん(72)は「白川そばの田んぼが4年に1回漬かっていた。これで安心できる」と話した。
立野ダムは治水専用の流水型ダム。堤高87メートル、堤長197メートル。総貯水量1010万トン。本体に5メートル四方の穴が三つあり、普段は低い位置の穴から川の水が流下。大雨時は流れきれない水が自動的にたまる。総事業費は約1270億円。
2018年8月に本体着工、20年10月からコンクリート打設を進めていた。国交省は、堤頂部の橋桁や管理用エレベーターなどの関連工事を含むダム本体の完成を今月中としていたが、「23年度中」と訂正した。漏水の有無などを最終確認する試験湛水[たんすい]は11月に予定している。(中島忠道)
◆2023年5月22日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20230522/5000019080.html
ー白川上流の「立野ダム」 本体工事おおむね完了し記念式典ー
治水対策として南阿蘇村と大津町にまたがる白川の上流で国が建設を進めている「立野ダム」の本体工事がおおむね完了し、21日記念式典が行われました。
立野ダムは、阿蘇地域から熊本市内までを流れる白川の治水対策として流量の調節を行う「流水型ダム」で、南阿蘇村と大津町にまたがる白川の上流に国が建設を進め、このほど本体工事がおおむね完了し、21日現地で見学会が行われました。
ダムは高さおよそ90メートル、幅およそ200メートルで、放流するための穴が5メートル四方で3つ設けられていて、このうち1つは川の高さとほぼ同じところから常に水を流しています。
このあと、国や流域自治体の関係者などおよそ40人が出席して記念式典が行われ、地元の小学生が、将来の夢などを書いた記念の石をダム本体の最上部に設けた穴に入れた後、コンクリートが流し込まれ、打設工事が完了しました。
国土交通省によりますと、今後、最高水位まで水をためて安全性を確認する試験などを行ったうえで、本格的な運用の開始は来年度を予定しているということです。
見学した南阿蘇村の70代の男性は「昔の水害でたくさん雨が降ったことを覚えています。二度と水害が起きないよう、このダムが守ってくれることを願っています」と話していました。
立野ダム建設促進期成会の会長で熊本市の大西一史市長は「ダムだけですべてを守れるわけではなく、流域の皆さんにも災害に対する意識を持ってもらいたい」と話していました。
◆2023年5月21日 RKK熊本放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/1971c5fa98358a5dad3e1e8b1a327919c272bab6
ー「立野ダム」本体工事完了 来年度から運用へー
南阿蘇村で建設が進められている立野ダム本体の工事が21日完了しました。
立野ダムは、熊本市など白川下流域などの洪水防止を目的とした治水専用の流水型ダムで、国が1983年に事業に着手し、2018年から本体工事が進められていました。
21日のセレモニーでは、最後のコンクリートが流し込まれ、関係者がダム本体の完成を祝いました。
今後、水を溜めて安全性を確認する試験湛水が11月1日から始まり、来年度からの運用を目指します。
「我々下流域にとって大変安全で安心感を持つ施設がようやくできた。多くの人たちの命が守られる施設になってもらいたい」(立野ダム建設促進期成会会長 大西一史熊本市長)