水資源・環境学会のブックレットシリーズ『環境問題の現場を歩く』の二冊目として、「長良川河口堰と八ッ場ダムを歩く」が刊行されました。
★長良川河口堰と八ッ場ダムを歩く (水資源・環境学会『環境問題の現場を歩く』シリーズ2)
http://www.seibundoh.co.jp/pub/search/039119.html
前半の長良川河口堰については、同学会の創設メンバーである伊藤達也氏が、後半の八ッ場ダムについては、「学会員の中で現在、最も学術的生産性の高い」(本書「はしがき」より)梶原健嗣氏が担当しておられます。お二人とも長良川河口堰と八ッ場ダムの問題にこれまで精力的に取り組んできており、ブックレットの解説も「現場を歩く」というキャッチフレーズにふさわしく、臨場感あふれるものとなっています。
一方で、科学的な裏付けとなるデータを平易な解説と共に提示しており、これらの問題に初めて出会う読者にとって、格好の入門書となりそうです。図表や現場の写真も豊富です。
■内容紹介
《目 次》
はしがき i
Ⅰ 長良川河口堰を歩く(伊藤達也) 1
1.長良川河口堰へ行く 1
2.長良川河口堰問題とは何だったのか 6
3.長良川河口堰のその後 11
4.長良川河口堰の現在 14
5.長良川点描 23
Ⅱ 八ッ場ダムを歩く(梶原健嗣) 31
1.はじめに―八ッ場ダムとの出会い 31
2.八ッ場ダムとは 31
3.ようこそ、ダムに沈む温泉へ 35
4.カスリーン台風と「洪水の資源化」 41
5.中和事業による計画の「復活」 44
6.計画改定と住民訴訟 49
7.司法判断 51
8.政権交代とダム事業の中止表明 52
9.現地ガイド 55
10.おわりに 55
なお、梶原氏は6月に「水資源・環境学会叢書」として、「都市化と水害の戦後史」を出しておられます。
水害が頻発し、これまでになく「治水」の必要性が叫ばれる昨今ですが、あふれる情報の中で科学的な検証に堪える事実を探し出すのは容易ではありません。本書は単行本ですので上記のブックレットのように手軽ではありませんが、国土交通省の河川行政から距離を置いた真に学術的な研究成果です。ご一読をお勧めします。
成文堂ホームページより
http://www.seibundoh.co.jp/pub/search/039025.html
★水資源・環境学会叢書8 「都市化と水害の戦後史」
税込定価:6,050円(本体5,500円)
判 型:A5判上製
ページ数:268頁
■内容紹介
《目 次》
序章 なぜ都市化と水害の戦後史なのか 1
第1節 社会現象としての水害 1
1 水害頻発化の時代 1
2 「自然の猛威」だけでは語れない 3
第2節 都市化と都市型水害の変容 7
1 都市化の多義性 7
2 変容する「都市化」の意義 14
第3節 本研究の構成 15
第1章 高度経済成長前期までの都市型水害 19
第1節 高橋裕の指摘の意義 19
1 狩野川台風以前の東京水害 19
2 高橋裕の「都市型水害論」 27
第2節 都市空間の面的拡大と水害 33
1 阪神大水害 33
2 狩野川台風 48
第3節 伊勢湾台風~工業化と都市型水害 62
1 水害の概要 62
2 名古屋市の被害と工業化 69
3 干拓地・旧輪中集落の被害 83
第2章 高度経済成長後期と都市型水害 91
第1節 大東水害 91
1 近代大阪の発展と都市化・郊外化 91
2 昭和47年7月豪雨と大東水害 104
第2節 地方都市の「都市型水害」 128
1 土砂災害 128
2 長崎大水害 131
3 2014年広島土砂災害 152
第3章 平成の時代と都市型水害 165
第1節 地下水害の時代 165
1 福岡水害と地下水害 165
2 東海豪雨 177
3 地下水害の特徴と対策 192
第2節 ゲリラ豪雨 202
1 時間50mm豪雨の増大 202
2 東京都の新しい水害対策 211
終章 都市型水害とその変遷 217
第1節 これまでの議論のまとめ 217
1 大都市内部・近郊の都市型水害 217
2 地方都市にまで広がった都市型水害 220
3 平成期と都市型水害 221
第2節 都市化の多義性 222
1 素因のレベルで現れる都市化 222
2 被害のありように現れる都市化 224
3 戦後都市型水害の類型 225
第3節 終わりに 226