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石木ダム工事現場で住民とトラブル? 長崎県が記者会見

 昨日、石木ダム現地の情報を伝える共同通信の記事が配信され、全国の幾つかの地方紙でも報じられました。
 これは石木ダムの事業者である長崎県とダム予定地の住民一人との間に起きたトラブルを伝えるものでしたが、実際にトラブルが発生したのは20日以上も前の先月8月14日であったということです。

◆2023年9月4日 共同通信
https://nordot.app/1071284304809214075?c=39550187727945729
ー石木ダム工事現場に侵入疑い 長崎県が被害届提出ー

 長崎県川棚町で、県と同県佐世保市が建設を進める石木ダムの、周辺の道路工事現場に、事業に反対する住民が小型のショベルカーに乗って侵入したとして、県は4日、公務執行妨害の疑いで県警に被害届を提出し、受理されたと発表した。

 県によると8月14日午後、建設中の迂回道路に、ショベルカーに乗った男性が立ち入り道路脇ののり面を掘削。県職員が退去を求めたが7分ほどとどまった。男性は威嚇するようにアームを振り回し、先端部のバケットが職員の肘に接触した。けがはなかった。

 男性は妨害行為を繰り返してきたという。侵入があったのは県が任意で買収した土地で、周囲には強制収用された土地も散在する。

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 石木ダム事業は、13世帯の現地住民の反対運動が続いています。すでに2019年には強制収用の明け渡し期限となり、道路の付け替えなどの関連工事が進められ、毎年本体工事の予算も計上されていますが、住民が事業用地から立ち退かない限り、本体工事着工は事実上不可能です。そこで長崎県は、今年に入ってから田んぼの水路を破壊して田植えができないようにするなど、住民の生活を直接脅かすようになりました。

 上記の記事を読むと、住民がダムの工事を妨害し、県職員を威嚇するためにショベルカーを乗り入れたように受け取れますが、記事配信直後、長年石木ダム予定地に通ってきた写真家の村山嘉昭さんがツイッターに以下の投稿をされました。

 ここで伝えられている住民の話から受ける印象は、全国に配信された記事が伝えた「トラブル」とは、およそ異なるものです。
 「トラブル」発生から20日以上もたってからの長崎県による今回のマスコミへの働きかけは、住民への世論の支持を絶つことを目的としたものとでも考えない限り、理解不能です。
 半世紀以上続くダム事業による被害者は明らかに現地住民ですが、ここでは加害者の長崎県が一人の住民にシャベルカーで脅される被害者になっています。

 記事配信の数時間後となる昨日午後、長崎県はトラブルの経緯と警察への被害届提出を伝える記者会見を行いました。
 記者会見後、各社が一斉に報道しましたが、どの記事も当事者住民に取材した気配はありませんでした。

 

◆2023年9月4日 NHK長崎放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20230904/5030018849.html
ー石木ダム工事現場で危険行為 県が公務執行妨害の疑いで被害届ー

 川棚町で建設が進む石木ダムの工事現場に、建設に反対する住民がショベルカーで侵入し、県職員に危険な行為を行ったとして、県は、公務執行妨害の疑いで警察に被害届を出したことを明らかにしました。

 県が開いた会見によりますと、先月、川棚町で建設が進む石木ダムの工事現場に、建設に反対する住民の男性が小型のショベルカーに乗って侵入し、工事用の仮設道路ののり面の一部を掘削したということです。

 現場では、当時、工事は行われていませんでしたが、県の事務所にいた職員が現場に設置されたカメラに男性が映っているのに気づき、事務所の職員4人が現場に駆けつけました。

 その際、男性に現場から出て行くように促すと、男性は、ショベルカーの先端にあるバケットを振り回したということです。

 バケットは職員1人の右ひじに接触しましたが、けがはなかったということです。

 県は、川棚警察署に通報した上で、男性が県職員に危険な行為を行ったとして、今月1日、川棚警察署に公務執行妨害の疑いで被害届を提出しました。

 県土木部河川課の田中良一企画監は、「工事現場で事故があると、県も、住民もお互い困ると思うので、危険な行為については常に注意をしていく」と話しています。

◆2023年9月4日 17:56  産経ニュース 
https://www.sankei.com/article/20230904-4TMFV4RZHZNOBPDVRC66RIOOJI/
ー長崎・石木ダム、工事現場に反対住民がショベルカーで侵入か 県が被害届提出ー

 長崎県川棚町で、県と同県佐世保市が建設を進める石木ダムの、周辺の道路工事現場に、事業に反対する住民が小型のショベルカーに乗って侵入したとして、県は4日、公務執行妨害の疑いで長崎県警に被害届を提出し、受理されたと発表した。

 県によると8月14日午後、建設中の迂回道路に、ショベルカーに乗った男性が立ち入り道路脇ののり面を掘削。県職員が退去を求めたが7分ほどとどまった。男性は威嚇するようにアームを振り回し、先端部のバケットが職員の肘に接触した。けがはなかった。

 男性は妨害行為を繰り返してきたという。侵入があったのは県が任意で買収した土地で、周囲には土地収用法に基づき強制収用された土地も散在する。県は今月1日、川棚署に被害届を出した。

 県の担当者は4日、記者会見を開き「事故が起こらないよう、今後も危険な行為には注意したい」と話した。

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 巨大ダム事業をめぐる行政と住民との激しい対立が何十年も続いている現場の報道は、少なくとも両者に取材して、事実を見極める必要があるのではないでしょうか。一方の主張のみを一斉に報道するのでは片手落ちです。

 翌朝の報道も長崎県の主張が中心でした、その中でテレビ長崎は、記者会見で長崎県の担当者が「シャベルカーを運転していた住民は)用水路を元に戻そうとしていたのではないかとみています。」と伝えています。また、長崎新聞は当事者住民ではないものの、別の住民の意見として、「水路の土砂を除き、田畑の水を確保しようとしたのでは。県は住民に対し、野菜も米も作るなという非人道的なことを求めており、被害届は住民に対する圧力。男性は威嚇はしていないと思う」と話したことを伝えています。

◆2023年9月5日 長崎新聞
https://nordot.app/1071594348339495218?c=39546741839462401
ー石木ダム 工事現場に反対住民侵入 重機でのり面掘削か、長崎県が被害届提出ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画している石木ダム建設事業で、県は4日、建設に反対する住民男性が小型のショベルカーで工事現場に侵入し、道路ののり面を掘削したとして、川棚署に被害届を出したと発表した。同署は公務執行妨害の疑いで調べている。
 県によると男性は8月14日午後2時25分ごろ、ダム建設時に使えなくなる県道の迂回(うかい)道路工事現場に侵入し、のり面を掘削。県石木ダム建設事務所の職員4人が気付いて現場に駆けつけ、作業をやめて出て行くよう注意した。その際、男性はショベルカーのアームを振って威嚇し、先端のバケット部が男性職員1人の右肘に接触したという。けがはなかった。
 男性は同50分ごろ現場から退去。県は今月1日に同署に被害届を提出した。県河川課の田中良一企画監は「重機が職員に接触するという危険な行為は非常に悪質で、警察に届け出るべきと考えた」と述べた。
 現場は今年3月、耕作地に土砂が投入された付近。別の住民男性は「水路の土砂を除き、田畑の水を確保しようとしたのでは。県は住民に対し、野菜も米も作るなという非人道的なことを求めており、被害届は住民に対する圧力。男性は威嚇はしていないと思う」と話した。

◆2023年9月4日 19:43 テレビ長崎
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20230904007
ー建設現場に侵入し無断で掘削…石木ダム反対住民、公務執行妨害で長崎県が被害届ー

 東彼杵郡川棚町の石木ダムの建設現場で、反対住民が重機で侵入し、道路の法面を破壊したなどとして、県は警察に被害届を提出しました。

 県によりますと、8月14日、石木ダムの建設に反対する住民の男性1人が道路の建設現場に小型の重機で侵入し、法面の一部を無断で掘削したということです。

 侵入に気付いた県の職員が4人で約15分後に現地に到着し、その場から離れるよう注意しました。

 男性は重機を左右に動かして威嚇し、その時にバケット部分が職員1人の右ひじに接触したということです。

 職員にケガはありませんでした。

 県土木部河川課 田中良一 企画監 「重機が職員に接触するという危険な行為が行われ、非常に悪質。当然警察に届け出るべきものと考え、被害届を提出した」

 県は「公務執行妨害」にあたるとして、9月1日付けで川棚警察署に被害届を提出していて、受理されています。

 現場は国有地で、入口には柵や立ち入り禁止を示す看板が設置されていました。

 ダム建設の中で住民が使う水田につながる用水路が壊されていることから、県は男性が用水路を元に戻そうとしていたのではないかとみています。

◆2023年9月5日 読売新聞 九州発
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20230904-OYTNT50254/
ー石木ダム反対派が重機で現場掘削、アーム先端を振り回して職員を威嚇…長崎県が被害届ー

 長崎県と同県佐世保市が同県川棚町に建設を計画している石木ダムを巡り、県は4日、建設に反対する住民の男性が、小型重機で建設現場を掘削した上、職員を威嚇したとして、長崎県警川棚署に1日付で被害届を提出したと発表した。同署が公務執行妨害容疑で調べている。

 発表によると、8月14日午後2時25分頃、ダム建設に伴う付け替え道路と、既存の県道とを結ぶ 迂回うかい 路の工事現場となっている国有地に、男性が小型重機で侵入し、道路ののり面を掘削した。

 石木ダム建設事務所の職員4人が現場から出るよう注意したところ、住民は重機のアーム先端にある「バケット」を左右に振り回し、職員を威嚇。その際、職員の右肘にバケットが接触したという。けがはなかった。

 県河川課の田中良一企画監は「これまでも妨害行為はあったが、今回は重機で現場を破壊しようとしたばかりでなく、職員を威嚇するなど悪質で警察に届け出るべきものと判断した」と話した。

◆2023年9月5日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20230905/ddl/k42/040/337000c
ー石木ダム建設地、重機で侵入疑い 県が被害届提出ー

 県は4日、川棚町で建設を進める石木ダムの工事現場に住民とみられる男性が侵入し、仮設道路ののり面を掘削したとして、川棚署に被害届を出したと発表した。提出は1日付。男性はダム建設に反対しているとみられ、同署は公務執行妨害容疑で調べている。

 県河川課によると、8月14日午後2時半ごろ、男性が小型重機で工事現場に侵入し、のり面の一部を掘削したという。監視カメラで確認した県のダム建設事務所職員4人が駆け付けて退去を促した。男性は重機のアームを振って威嚇し、バケットが職員1人の右肘に接触したという。職員にけがはなかった。

 県河川課は「安全管理を徹底したい。危険な行動には注意をしていく」としている。【松尾雅也】