八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

公共事業の費用効果分析、人口減少反映を 財制審指摘(日経新聞)

 ダムなどの公共事業において、その妥当性を検討する際に用いられる費用便益分析で人口減少の影響が考慮されていないことを財務省が問題視していると、日経新聞が報じています。

 八ッ場ダムの主目的は「都市用水の供給」です。高度成長時代、水没住民の反対運動を押さえつけてダム事業を推進した根拠は、首都圏における水需要の増加でしたが、その後、人口が増え続けた首都圏においてすら水需要の減少傾向は既に1990年代から顕著でした。漏水防止対策や節水家電の普及、大量の水を使う工場が都心から地方へ、そして海外へと移動したことなどが影響したためです。
 八ッ場ダムが完成した今、首都圏も人口減少時代に入ろうとしており、水需要は減少の一途をたどっていますが、国土交通省が八ッ場ダムの事業評価を行う場合、八ッ場ダムの費用便益計算で人口減少の影響が考慮されたことは一度もありませんでした。過剰な水源開発の結果は、水道料金の値上げなどの形で今後も関係住民の負担となり続けます。

 現在、長崎県が推進する石木ダムも、同じ問題を抱えています。人口減少が進む佐世保市の水需要が今後増大し続けるという架空の前提に立っており、むろん費用便益計算には人口減少の影響は考慮されていません。先ごろの衆院補選で明らかになった、利権政治の温床が石木ダム事業を必要としていると言えます。
 石木ダムは長崎県の事業ですが、事業推進を支えているのは国土交通省だと言われています。財務省はこの問題全般について「国土交通省に対応を求める」ということですが、個別具体的な問題に目が向けられることはないのでしょうか。

◆2023年10月19日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA192F10Z11C23A0000000/
ー公共事業の費用効果分析、人口減少反映を 財制審指摘ー

 財務省は19日に財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、公共事業での投資額に対する経済効果の高さを推定する費用便益分析で将来の人口減少の影響が考慮されていない場合があると指摘した。国土交通省に対応を求める。

 費用便益分析は事業に着手するかどうかを判断する材料の一つで、国交省がマニュアルを策定している。道路や新幹線については人口減少の影響を織り込む内容になっているが、河川・ダム・港湾は反映されていない。

 分科会の会長代理で日本郵政の増田寛也社長は会合後の記者会見で「人口減少を加味して公共事業の効果を考えるべきだ。維持コストもふまえれば、事業をさらに慎重に選ぶことが重要だろう」と述べた。

 財務省は今後の公共投資の適切な規模を見極める必要があるとも指摘した。2023年度の建設投資額は官民あわせて70.3兆円の見通しで、10年度の41.9兆円から1.7倍に増えた。一方、建設技能者数は10年度〜22年度の間に331万人から302万人に減った。

 建設大手の手持ちの工事量は17カ月分程度で、この10年間で最も高い水準で推移している。22年度平均の職業別の有効求人倍率をみると、建設や土木は5倍を超えており、介護サービスの3.65倍より高い。すぐに着工できない状況にある。