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川辺川ダムの環境影響について、国交省が準備リポート案

 川辺川の新たなダム計画に関して、国土交通省が環境影響を予測した「準備レポート案」を作成し、学識者会議が検討したと報じられています。
 球磨川水系の川辺川ダム事業は、日本一の清流の河川環境が破壊されるとして、長年流域住民の反対が続いてきました。民主党政権時代に一旦はダム建設中止が決まった経緯もあり、国土交通省は事業復活に当たって環境保全にできうる限りの配慮をするとアピールしています。けれどもダム事業における環境影響調査では、事業見直しという選択肢はありません。ダム建設は河川環境を破壊せざるをえないため、様々な保全対策が考え出されますが、環境保全対策もダム事業の一環であり、自然破壊の本質をカモフラージュする役割を担います。

 五木村の水没予定地では、ダム事業で住民の殆どがふるさとを離れた後、ダム建設中止が決まったため、観光業による利活用が図られてきました。新たなダム計画では、河川環境への影響を最小限にするため、ダム堤の穴を通して川の水を流す流水型が採用されることになっていますが、水没予定地に建てられた観光施設も試験湛水時には冠水で一部使用できなくなることが予想されるとのことです。

◆2023年10月31日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/1218207
ー流水型ダムの試験湛水時、希少生物保全へ洞窟入り口に防水壁 熊本・川辺川 国交省が準備レポート案ー

 国土交通省は31日、熊本県相良村の川辺川に建設する流水型ダムが環境に及ぼす影響を調査、予測した「準備レポート」案を学識者の委員会に示した。ダム本体完成後の試験湛水[たんすい]で希少生物が生息する五木村の「九折瀬[つづらせ]洞」は大部分が冠水するため、洞窟入り口に防水壁を設けて保全するとした。

 国交省は2020年熊本豪雨を受けて流水型ダムを計画し、21年から環境影響評価(アセスメント)法と「同等」の調査に着手。準備レポートは法アセス4段階の手続きのうち3段階目に相当する。今後、委員会の意見を反映したレポートを完成させて公表し、知事や市町村長、住民らの意見を踏まえて最終段階「評価レポート」の作成に入る。

 九折瀬洞はダム上流にあり、昆虫類やコウモリが生息。国交省は試験湛水で長期間冠水するとして、入り口に擁壁を設け、洞窟内で昆虫類が冠水しない場所に移す方針も示した。

 レポートはほかにも水質や動物、植物、景観に与える影響と保全対策を明記した。建設予定地周辺に生息するクマタカやヤマセミに配慮し、騒音や振動の少ない機械や工法を採用。両生類の産卵場の整備や植物の移植も対策に含めた。

 ダムの貯水で水没が想定される五木村旧中心部の宿泊施設「渓流ヴィラITSUKI」は、関係者と協議して移設などを検討。公園「五木源[ごきげん]パーク」やカヤックもダム貯水後の維持管理を図るとした。

 レポート案は全8章約4千ページ。五木村役場で開いた環境保全対策検討委の第10回会合で示したが、「希少動植物の情報を精査する必要がある」として、この日の公表は一部にとどめた。

 国交省は環境影響評価の手続きを終えた後も、影響の最小化に向けて学識者による検討会を新たに設ける考えを示した。(臼杵大介)

◆2023年11月1日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/1218208
ー川辺川の流水型ダム建設、工事中の生物への影響を注意深く監視を 環境保全で委員ら要望ー

 国土交通省が川辺川に建設する流水型ダムを巡り、31日の環境保全対策検討委員会では学識者の委員から建設工事中に生物へ与える影響を注意深く監視するよう求める声が上がった。  国交省は2027年度にダム本体工事に着手する考えで、工期は9年程度…

2023年11月1日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASRB076BJRB0TLVB003.html
ークマタカなど希少種への影響も 川辺川流水型ダム 国交省が発表ー

 国土交通省は31日、川辺川への流水型ダム建設や、実際に水をためて安全性を確認する試験湛水(たんすい)などで予測される流域環境への影響と対策案を公表した。環境の変化により、希少種クマタカの繁殖成功率が低下したり、コウモリなどが生息する洞窟「九折瀬(つづらせ)洞」(五木村)の一部が生き物の生息に適さなくなったりすることが予想されるという。(以下略)
 

◆2023年10月31日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20231031/5000020528.html
ー球磨川治水対策の流水型ダム 試験湛水の影響を専門家に示すー

 3年前の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策で建設される流水型ダムについて、国は、ダムの強度などを確かめる「試験湛水」と呼ばれる工程を実施する際、環境にどのような影響が出るかなどを専門家でつくる委員会に示しました。

 球磨川の支流、川辺川に流水型ダムを建設する計画をめぐっては、工事を実施する国が流域の環境への影響の調査や予測などを行うことになっています。
 調査などを行うにあたって国が設けた委員会が31日五木村で開かれ、生物や河川工学に詳しい専門家が出席しました。
 委員会では国の担当者がダムの強度や安全性を確かめる「試験湛水」と呼ばれる工程を実施する際、ためた水を放流することで沈んだ土砂が巻き上がり、濁った水が下流に流れる可能性があると述べました。
 その対応策として、放流する水の速度を遅くすることで、水の濁りを抑制する効果が期待されると説明しました。

 これに対し委員からは「放流の勢いがなくなると、藻類に土砂がからめ取られるといった影響が出る可能性もある。必要であれば、対応策を練ってほしい」といった意見が出されました。

 また、国は31日、環境への影響の調査などで必要な4段階の手続きのうち、3つ目にあたる「環境影響評価準備レポート」の案を委員のみに示しました。
 今後、委員からの意見を踏まえ、レポート作成の作業を進めることにしています。