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国交省、川辺川ダムの環境影響評価に関する「準備レポート」公開

 ”日本一の清流”として知られる熊本県の川辺川に計画された国のダム建設は、河川環境に取り返しのつかないダメージを与えることが懸念されています。
 多くの批判をかわすため、国は環境影響評価(いわゆる環境アセスメント)を丁寧に行うことになっており、このほど、環境影響評価の準備書に相当する「準備レポート」が国土交通省のホームページに公開されました。

◆国土交通省九州地方整備局 川辺川ダム砂防事務所ホームページより
 川辺川の流水型ダムに関する環境影響評価準備レポート
 https://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/dam/kankyou_torikumi/jyunnbi_report.html

 準備レポートは5000ページ余りもあり、これを短縮した要約書も370ページ以上あります。ダム行政における環境影響評価はダム建設を見直すという選択肢が最初から除外されていますので、環境に対する配慮や対策は、魚道の整備や動物の産卵時期の工事一時停止、住処を移すなど、場当たり的なものとならざるを得ません。

 上記のページにあるように、国土交通省ではこの準備レポートの縦覧期間を設けて、流域住民が意見書を提出できることになっています。しかし、ダム行政におけるこうしたパブリックコメントは「聞き置くだけ」と言われるように、形式的であるのが通例です。残念ながら、たとえダム建設に反対する住民が大部の国の文書を読み込み、正鵠を射た指摘を行ったとしても、ダム事業者がそれを聞き入れる可能性があると住民が期待することはできません。
 地元紙では、川辺川ダム建設に反対してきた市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表のコメントとして、「レポートを見てもダムの詳細が分からず、環境への影響が評価できるのか疑問が残る。分量が膨大で専門用語も多い。国交省は市民が理解できるよう分かりやすくまとめ、説明責任を果たすべきだ」(11/28付け熊本日日新聞)との指摘を紹介しています。

 関連記事を転載します。

◆2023年11月28日 共同通信
https://nordot.app/1101887628268208573?c=39550187727945729
ークマタカ、繁殖率低下懸念 川辺川ダムの環境影響を公開ー

 国土交通省は28日、熊本県の球磨川支流に建設予定の川辺川ダム計画を巡り、環境影響評価(アセスメント)の準備書に相当する「準備レポート」を公表した。ダム工事で、絶滅危惧種クマタカの生息環境などが変化し、繁殖成功率が低下する可能性などを示した。騒音を抑えるなど対策を取ると説明している。

 約5千ページの準備レポートによると、建設予定地の周辺に生息するクマタカのうち5ペア、ヤマセミでは、4ペアに影響を及ぼす可能性があるとした。

 川辺川ダム砂防事務所によると、クマタカやヤマセミの産卵時期は工事を一時中断するほか、上流部の洞窟内では一部の陸上昆虫のすみかを移すことを検討している。

◆2023年11月28日 熊本朝日放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba22d0423dc202b116286a2dc19c5b5cc871ab57
ー川辺川ダム環境アセス 国が準備レポート公表 熊本ー

 国土交通省が、熊本県の川辺川に建設する流水型ダムの環境への影響についてレポートをまとめ、28日公表しました。
 この環境影響評価準備レポートは、法に基づく4段階の環境アセスメントの3段階目で、ダムによる水質や生態系への影響などを予測したもです。
 今月28日から来月28日までホームページに公開するほか、県庁など23カ所の施設で縦覧もできます。
 ダム建設後の水質については、洪水調節が必要な規模の雨が降ると一時的に濁りますが、環境への影響は小さいとしています。
 また、流域の生態系については、瀬や魚道の整備で、アユの生息域は維持できるとし、影響のある生物は、移植するとしています。
 国は12月、人吉市や五木村など7ヵ所で説明会を開き、住民らの意見を来年1月11日まで募集します。

◆2023年11月28日 くまもと県民テレビ
https://news.yahoo.co.jp/articles/f64dc70821ca74ea08f4e747e4c610095e4fa7f6
ー「環境保全に適正な配慮」川辺川の流水型ダムの環境影響評価準備レポート公開ー

 3年前の熊本豪雨の治水対策として川辺川に建設される流水型ダム。その工事などが環境に及ぼす影響をまとめた国の環境影響評価準備レポートが公表されました。一般の人たちも自由に見ることができます。

 球磨川支流の川辺川に建設される流水型ダム。普段は水をためず、大雨が降った場合に水をためて下流に流れる水の量を調節します。国と熊本県は、「洪水被害」と「環境への影響」を減らすことを目的にダムを整備することにしています。

 そして28日、九州地方整備局は環境影響評価準備レポートを公開しました。流水型ダムの建設工事や洪水調節などが流域の環境に及ぼす影響と対策について、国が5070ページにわたりまとめました。

国の環境影響評価準備レポート公表

 例えばアユについては、ダムに試験的に水をためると川の水量が減り、エサ場や産卵場となっている瀬が縮小するため対策として瀬を整備するとしています。また希少生物が生息するダム上流部の五木村にある九折瀬洞は、ダムに水をためると洞窟内の大部分が冠水するとしています。その対策として一時的に洞窟を塞いだり、昆虫やコウモリなどを洞窟内の冠水しない場所に移植するとしています。

 準備レポートでは、総合評価として「環境に及ぼす影響は実行可能な範囲でできる限り回避または低減され、環境の保全について配慮が適正になされている」とまとめられています。

■熊本県 蒲島郁夫知事
「一番最後に流水型ダムがあって、初めて全体がコントロールできる。極限まで安全だと極限まで考えられた治水の対策だと理解してもらえるように、我々も努力していかないといけない」

 この準備レポートは11月28日から12月28日まで、熊本県内22か所、福岡県の九州地方整備局とそのホームページで公告・縦覧され、来年1月11日まで意見を募集します。

◆2023年11月28日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20231127-OYTNT50083/
ー川辺川「流水型ダム」調査結果や環境保全対策まとめる…国交省が評価へ「準備リポート」ー

 国土交通省は、熊本県・球磨川の支流・川辺川で計画する流水型ダムについて、これまでの調査結果や環境保全対策をまとめた「環境影響評価準備リポート」を公表した。同県人吉市など関係7市町村で12月16~21日に住民向けの説明会を開く。来年1月11日まで環境保全についての意見も募る。

 準備リポートの作成は環境影響評価(環境アセスメント)の手続きの一環。参考資料を含め約5000ページで、大気や水環境、生態系などの項目ごとに環境への影響や保全対策をまとめた。今後、住民や知事、国交相の意見を反映させ、「環境影響評価リポート」として完成させる。

 準備リポートは12月28日まで、県庁や流域市町村の役場など23か所で閲覧できる。意見書は閲覧場所で受け取るか、川辺川ダム砂防事務所のホームページから入手し、郵送やファクス、メールで送る。問い合わせは同事務所(0966・23・3174)へ。

◆2023年11月28日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASRCW6VT7RCWTIPE00P.html
ークマタカなど希少種にも影響か 川辺川ダム、試験湛水や工事騒音でー

 3年前の熊本豪雨の治水対策として川辺川に建設される流水型ダム。その工事などが環境に及ぼす影響をまとめた国の環境影響評価準備レポートが公表されました。一般の人たちも自由に見ることができます。(以下略)