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川辺川の流水型ダムの環境影響、国が五木村で説明会

 川辺川ダムの水没地を抱える熊本県五木村では、今月3,4日の両日、国土交通省が川辺川ダムの環境影響に関して住民向けの説明会を開きました。
 2020年の球磨川水害以降、熊本県の蒲島知事は国土交通省に協力して川辺川ダムを推進するようになりましたが、この春には引退することを表明しています。国土交通省はショックドクトリンさながらの手法で巨大ダム計画を蘇らせましたが、復興を目指す被災地では日本一の清流への影響を懸念する声が次第に高まってきています。
 ダムの水没地を抱える五木村と建設地のある相良村は、まだダムの受け入れ可否を明らかにしていません。蒲島知事は懸案の川辺川ダム建設について、退任前に両村の了承を得たい考えです。

◆2024年2月4日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20240203-OYTNT50182/
ー川辺川の流水型ダム「まだ安心できない部分が」…熊本県五木村で説明会、住民ら影響懸念ー

 国が川辺川で計画する流水型ダムについて、熊本県の五木村民を対象とした環境影響などの説明会が3日、村役場で開かれた。国土交通省の担当者らが30人に環境影響を最小限に抑えたとするダムの構造や運用方法、生態系への影響を説明。水没予定地を再現した大型模型実験施設の見学にも案内し、理解を求めた。

 昨年11月の環境影響評価準備リポートの公表を受け、木下丈二村長が村民向けの説明会を要望したことを受けて開かれた。

 同省川辺川ダム砂防事務所の斎藤正徳所長は、ダムの放流口5門を使い分けることで、魚類の移動経路を確保できると強調。洪水時に、山の斜面や平場に泥が流れ込むことを防ぐための対策も説明した。

 参加者からは「昔のようなたくさんの魚がいる川にしてほしい」「過去の豪雨の際にダムがあればどうなっていたのか知りたい」などの声が上がった。

 その後、村内の模型実験施設に移動。20年に1度の大雨を想定した水位まで水がたまると、一部の建物や橋が沈む様子が確認できた。見学にも参加した村民(50)は「まだ安心できない部分がある。環境面の影響はもっと深く知りたい」と話していた。

 木下村長は「見学に加え国からの丁寧な説明があった。住民の理解度を測っていきたい」とした。説明会と見学は4日も開かれる。

◆2024年2月6日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASS257GRCS25TLVB001.html
ー川辺川への流水型ダムめぐり、国が五木村で説明会ー

 川辺川への流水型ダム整備で環境はどう変わるのか。国土交通省はダム整備で一部が水没予定の熊本県五木村で村民に向けた説明会を開いた。3、4日で計約40人が参加した。

 国は昨年11月、環境影響評価法に基づく準備書に相当する「環境影響評価準備レポート」を公表し、熊本県知事や流域市町村長からの意見を募っている。説明会は木下丈二五木村長の求めで開かれた。

 3日の説明会では、川辺川ダム砂防事務所の斎藤正徳所長が、流水型ダムの構造や、ダム運用後の川辺川の濁りの予測結果などを説明した。

 準備レポートは、生物への影響を指摘する。例えば(1)工事の騒音などで希少種クマタカの繁殖成功率が低下する(2)実際に水をためて安全性を確認する試験湛水(たんすい)で流域にある洞窟「九折瀬(つづらせ)洞」の大部分が一定期間冠水することで希少な昆虫などが生息できなくなる――といった可能性だ。

 斎藤所長は、アユや洞窟への影響を踏まえ、水の濁りが少ない冬場に試験湛水を実施することや、十分な環境保全措置をとる考えを示した。

 説明会後は、村の久領地区につくった大型模型実験施設に移動。水没予定地などを60分の1で再現した長さ65メートル、幅50メートルの大型模型に、20年に1度レベルの洪水が起きた場合を想定して水を流し、橋や建物が水につかる様子や、水がひいた後に土砂がどこに堆積(たいせき)するのかなどを見学した。

 これまでの実験では水が引いた後、標高が低い平場に土砂が堆積しやすい傾向が確認されたといい、新たな平場の造成についても検討していくという。

 見学後、木下村長は「洪水対策や環境の問題はこの施設で把握できると思う」と感想を述べ、ダムの受け入れについては「(環境への影響だけでなく)平場の造成や村の振興など総合的に判断したい」と話した。(大貫聡子)

◆2024年2月2日 熊本朝日放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad5113a795f37bbe3d65bf4b689de0895750b5f0
ー有識者からリスク評価の指摘相次ぐ 川辺川の流水型ダムめぐりー

 熊本県の川辺川で計画が進む、流水型ダムの環境への影響は…
審査会が国のまとめたレポートについて、見通しの甘さを指摘しました。メンバーは国が製作した、五木村の地形を60分の1の縮尺で再現する大型模型を見学しました。熊本豪雨を上回る「20年に1度の大雨」が再現されると、増水した川の水が橋に勢いよくあたり、ダムの洪水調節によって観光交流施設が水没。ダムの上流部には土砂に見立てた砂がたまりました。
 国は、ダム建設に伴う環境への影響は少ないとする環境影響評価準備レポートを、去年11月に示しています。しかし2日の審査会では。

(環境影響評価審査会 松田博貴会長)
「生態系は植生が変わらないから、河床が変化しないから、平気だ、平気だ、平気だと。もうちょっと丁寧に検討しないと、生態系は河川の周辺で崩壊する可能性がすごく高い」

 審査会では、レポートが生態系の回復を前提にまとめられているなどとして、植物の環境が戻らなかった場合のリスク評価が必要だと指摘されました。
 今後、審査会の意見などをふまえて、蒲島知事が意見書をまとめることになります。