石木ダム予定地を抱える長崎県の川棚町で3月23日に集会が開かれました。この集会では、複数の治水の専門家が石木ダム計画の杜撰さを具体的に指摘したとのことです。
報道によれば、石木ダム計画は治水の基本である雨量などの基本的なデータに流域外の雨量を不正に利用し、ダム計画に有利な数字をつくりだしているようです。治水計画は河川工学の専門的な知識に基づいて組み立てられるため、一般の人々にとってその中身を判断するのは容易ではありません。聴衆は新聞記者を含め、今回の専門家らの指摘で改めて石木ダム計画の虚構に唖然としたのではないでしょうか。
この集会は地元住民と支援者による実行委員会と国会の超党派の議員連盟の共催で行われました。
ダム問題に取り組む国会の議員連盟は、かつて中村敦夫氏や保坂展人氏が国会議員であった頃、「公共事業チェック議員の会」という名称で活発に活動していました。しばらく休止状態が続き、国会におけるダム問題への関心も薄れていましたが、昨年12月に「「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」と改称して復活し、今回は先に川辺川ダム問題を抱える球磨川流域を訪ねた後、石木ダム予定地を訪れたとのことです。参加議員として嘉田由紀子参院議員、山崎誠衆院議員、野田国義参院議員のお名前が挙がっています。
◆2024年3月25日 長崎新聞
https://nordot.app/1144830851407282885?c=39546741839462401
ー「流域全体の治水、見直しを」 長崎・川棚でシンポジウム 石木ダム事業の是非考える ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業の是非を考えるシンポ「清流を守る 未来を守る」が23日、町公会堂であり、ダムの必要性や公共事業のあり方について意見を交わした。
反対住民や市民らでつくる実行委と、超党派の国会議員でつくる議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」が共催。約250人が参加した。
京都大名誉教授の今本博健さん(河川工学)、元国土交通省淀川河川事務所長の宮本博司さんは利水面の問題点を指摘。今本さんは「(建設計画を)中止し、川棚川流域全体の治水計画を抜本的に見直すべき」と主張。今後、地球温暖化に伴い、降雨量が増え、流量が治水計画の1.2倍に増加した場合「ダムは役に立たない。一刻も早くダムに代わる方法を考えて」と指摘した。
宮本さんも治水計画について、判断材料となる雨量や流量などのデータ検証が不十分で「ずさん」と強調。「住民に『立ち退いて』とお願いするのであれば、真剣にデータを出すべき」と再検証を求めた。
滋賀県知事時代に六つのダム建設を凍結・中止した同議連代表代行の嘉田由紀子参院議員は、現住家屋を強制撤去した行政代執行の例はないとし「非人道的で憲法違反。やるべきでない」と力説した。現地実行委員長で反対住民の岩下和雄さんは「ダムは不要。建設予定地には多くの土地がある。自然を壊すのではなく、生かすまちづくりを」と呼びかけた。
◆2024年3月25日 長崎放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/020b2318bebb031bce7caa166155f55fbe8e7a2a?source=sns&dv=pc&mid=other&date=20240326&ctg=loc&bt=tw_up
ー「治水計画はあまりにも杜撰」石木ダム反対市民らの集会で専門家が疑問呈するー
県と佐世保市が計画している石木ダムをめぐり、これに反対する住民や市民団体が開いた集会で、ダムの専門家がダムの必要性について疑問を呈しました。
石木ダム反対住民代表・岩下和雄さん
「本当に必要なダムかということを皆さんに今日は考えてほしい」
川棚町の公会堂で開かれた集会には、石木ダム建設絶対反対同盟の住民や反対運動を支援する団体の市民らが出席しました。
石木ダムは佐世保市の水対策と川棚川の水害予防のため県と佐世保市が川棚川支流の石木川に計画しているダムですが、住民の反対運動のため計画から半世紀経った今も完成していません。
集会では元国交省職員でダム行政に携わってきた宮本博司さんが講演しました。
宮本さんは県が策定した石木ダムの治水計画が杜撰と指摘し、石木ダムが大雨の際水害防止に機能するかどうか疑問があると話しました
元国交省職員・宮本博司さん
「この治水計画はあまりにも杜撰です。お願いします、立ち退いてくださいというのならもっと真剣にこの計画を作らないとだめです」
石木ダムは2025年度内での完成を目指していますが、ダム本体の工事はほとんど進んでおらず更なる事業長期化の可能性もあります。
◆2024年3月26日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20240326/ddl/k42/040/347000c
ー石木ダム「計画がずさん」 検証集会で批判相次ぐ 川棚 ー
川棚町で建設が進む石木ダムの必要性を検証する集会「清流をまもる 未来をまもる」が23日、同町公会堂であった。ダムの専門家や国会議員らの講演に250人が耳を傾けた。県民有志でつくる実行委員会主催。
長くダム建設に携わった元近畿地方整備局河川部長の宮本博司氏は石木ダムについて、流域平均雨量の算定が川棚川流域ではなく佐世保市の雨量を使っている▽ダムと下流の橋の洪水流量ピークが同時刻になっている――など計画の疑問点を指摘。「雨量、流量の検証がされていない。治水計画がずさん過ぎる」と批判した。
野田国義参院議員(福岡選挙区)は「政治とカネの問題の元凶は公共事業にある。無駄な公共事業の利権をただしていかなければならない」と訴えた。
最後は「未来を見据え、不要な事業は中止して教育や子育てに予算を増やす」とする集会宣言を採択した。【綿貫洋】