国土交通省関東地方整備局は同局利根川ダム統合管理事務所のホームページに今年3月11日に開催した第五回八ッ場ダムモニタリング委員会の資料(議事概要と委員会資料)を公開しました。
以下のページには、2019年から開催されてきた過去四回の委員会資料も掲載されています。
★利根川ダム統合管理事務所ホーム > ダムの情報 > 八ッ場ダム
> 八ッ場ダムモニタリング委員会
https://www.ktr.mlit.go.jp/tonedamu/tonedamu00563.html
以下の文字列、あるいは画像(委員会資料の表紙)をクリックすると、委員会資料が表示されます。
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2024/07/aee74fb8e46e0a73e04170d0ff0a42b2.pdf
ダム建設におけるモニタリング調査は、「ダムの湛水開始による環境変化を把握することを目的」(委員会資料3ページ)としています。ダム建設による環境影響は長い歳月の間に顕在化してゆくものですので、本来このような調査は長期間にわたって行わなければ本当の環境影響を判断することはできないはずですが、国土交通省は短期間の調査を制度化しており、八ッ場ダムもこの制度に沿って行われます。委員会資料3ページによれば、モニタリング調査の行程は次のように決められており、今年度の事後評価によってモニタリング調査は終了するようです。
2017年4月~2023年3月 モニタリング調査
2023年度 補足調査
2024年度 事後評価
それ以降、フォローアップ調査(河川水辺の国勢調査(ダム湖版)など)に移行する。
◇画像=委員会資料3ページより
◇資料10ページ
「〇流入河川与喜屋でpHが令和元年11月より、環境基準を跨ぎ変動している。流入河川に比べ、貯水池上層でpHが高くなっている。pHの上昇により植物プランクトンが利用できるリンが増え、 富栄養化現象が発生する可能性があることから今後も監視が必要である。」
(与喜屋:ダム上流の地名)
「〇令和2年1月以降、ダム放流口及びダム下流域におけるヒ素はダム建設前に比べ低い値で安定している。ただし、底質中に蓄積されていると考えられることから、今後も監視が必要である」
酸性河川の吾妻川に八ッ場ダムの建設が可能となったのは、1965年から始まった吾妻川の中和事業の成果であった。中和事業では草津白根山麓から流下する吾妻川支流の強酸性河川に石灰を投入し、大量の中和生成物を品木ダムに沈殿させ、ダム湖の上積みを下流に流しているが、運用を開始してから半世紀以上が経過している品木ダムには温泉水に含まれるヒ素が濃縮して沈殿し、大水の際に吾妻川に流下する問題が生じていた。委員会資料の上記の記述によれば、品木ダムから溢れたヒ素は八ッ場ダムに流れ込み、八ッ場ダムの湖底に堆積している。
◇資料68ページ
「吾妻峡景観・植生調査については、ハリエンジュ群落が経年的に 確認されており、今後の分布拡大が懸念される。」
◇資料75ページ
「渓畔林群落の確認状況をみると、ダム湖周辺では、ヤナギ林等が増加し、ケヤキ林等が減少していた。」
◇資料87ページ
上流からダム貯水池に流れ込む土砂は、ダムの容量を減少させ、「利水」や「治水」に支障をきたすため、ダム計画では100年間の堆砂量を堆砂容量として予測している。しかし八ッ場ダムの場合は、ダム運用開始前の2019年10月に襲った東日本台風により大量の土砂が流入した結果、2022年度までに既に堆砂容量の19%の堆砂量に達してしまっている。
◇資料88ページ
「藻類及び付着泥の剥離を目的に、令和4年9月2日にフラッシュ放流(最大放流量50m3/s、放流継続時間約3時間)を実施 した。」
八ッ場ダムではダム観光の一環としてフラッシュ放流が行われているが、その目的は「藻類及び付着泥の剥離」である。
八ッ場ダムは国指定名勝・吾妻峡に建設された。渓谷は岩肌と急流、周辺の自然林が織りなす景観が見事なことから、文人墨客に愛され、観光スポットとして人気を博してきたが、ダム建設により渓谷上流部1/4は水没し、3/4だけがダム直下に残っている。吾妻峡の独特の景観は、岩肌を洗う洪水によって保たれてきたが、洪水がダムに貯留されるようになったため、岩に生える藻類や付着した泥を洗い流すために人工的にダムから放流を行っている。令和4年9月2日に辞ししたフラッシュ放流は、最大放流量50m3/s、放流継続時間約3時間であった。
◇動植物のモニタリング調査地点を示す図が表示されていると思われる以下のページは黒塗りとなっている。
資料31,43,49,59,70,75ページ
以下の画像=31ページ