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長崎県の石木ダム、事業費1.5倍の420億円、完成7年延期2032年度末へ

 石木ダム事業を推進する長崎県は、8月2日に開催した公共事業評価監視委員会において、事業費を135億円増額し、工期を7年延長する計画変更案を諮問しました。
 事業評価監視委員会は本来、問題のある公共事業の見直しを可能とするために設置されていますが、ダム行政においては事業者(石木ダムの場合は長崎県)が自らの意に沿う、いわゆる御用学者を委員に選ぶため、事業の進行にお墨付きを与えることしかしません。今回の委員会でも、予定通り長崎県の計画変更案は了承され、「事業継続妥当」とされました。
 石木ダム事業の工期延長は、これで10回目となります。石木ダムに反対する長崎県の市民団体では、公共事業の再評価を御用委員会に任せているわけにはいかないと、市民による再評価監視委員会を立ち上げています。

➡(参考)石木川まもり隊ブログより 「「市民による石木ダム再評価」を実施します!」

 
◆2024年7月30日 長崎新聞
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=621bc7da4ae14658a75a6c6d4f6bd445
ー石木ダム事業費420億円へ 長崎県が検討 完成時期は2032年度末までの方向ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県が総事業費を現行の約1・5倍の420億円に増額し、完成時期についても7年延長し2032年度末までとする方向で検討していることが29日、関係者への取材で分かった。来月2日に開く県公共事業評価監視委員会に諮問する見通し。
 同事業は1975年に国が採択。現在の総事業費は285億円、完成時期は2025年度末までとなっており、承認されれば総事業費は135億円の増額となる。予定地の13世帯が現在も建設に反対しており、完成目標は当初の1979年度から、これまでに9回にわたって延長されている。
 公共事業は一定期間ごとに再評価が行われ、同事業は同監視委で治水面の費用対効果などが検証される。2019年度の前回の再評価では、22年度としていた完成目標を3年延長し25年度とすることを同監視委が承認。それから5年が経過し、本年度の再評価の対象となっている。
 同事業の費用や完成時期を巡っては、大石賢吾知事が6月の県議会一般質問で人件費や資材価格の高騰、建設業界における働き方改革、地元住民らによる抗議活動などの影響を踏まえ、「見直し作業を行っている」と答弁していた。
 ダムのもう一つの目的である利水については、県の検証結果を受け本年度内にも佐世保市が実施する。
 同事業は現在、ダム本体工事の一部や県道付け替え道路の工事が進められている。一方、事業に反対する13世帯の住民と大石知事との話し合いは途絶えたままとなっている。昨年12月に話し合いを求めるため大石知事が現地を訪れた際、住民側は「信頼関係がない知事とは話し合いができない」などとして面会に応じなかった。

◆2024年8月2日 長崎文化放送
https://www.ncctv.co.jp/news/article/15374172
ー石木ダム完成年度7年延長 事業費も135億円増額ー

 県と佐世保市が東彼・川棚町に建設を進める石木ダムについて、県の公共事業を再評価する委員会は2025年度としていた完成年度を7年延期する方針を決めました。
石木ダム建設事業の工期の延長は国が1975年に事業を採択して以降10回目です。

県土木部河川課:
「石木ダムは川棚川の抜本的な治水対策のため必要不可欠な事業であり、早期に完成させる必要があるため、『事業継続』でお願いしたいと思っております」

 2日に開かれた県公共事業評価監視委員会で、5年前(2019年)に2025年度としていた完成時期を7年延期し、2032年度にする方針が承認されました。県は延期の要因について、建設工事が反対住民の座り込みなどの妨害の影響で遅れたことや建設業の働き方改革の対応のためとしています。
 また前回(2019年)の事業再評価以降、消費税率が変わったことや、資材価格や人件費の高騰、今後の物価上昇や予見できない事業費の変動に備えるため、総事業費は現行の285億円から135億円増額し、420億円となる見込みです。
 石木ダム建設予定地の川原地区では、2019年に土地の明け渡し期限が過ぎた後も、建設に反対する13世帯が暮らしています。

石木ダム反対住民・岩下すみ子さん:
「まだ私たちは住んでるんですよね。そういう住んでる地権者の声は今までも全然反映されない。怒り心頭ですよ。もう震えます」

 委員会は県に住民との対話を進めてほしいと述べました。

◆2024年8月2日 テレビ長崎
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20240802011
ー石木ダム7年延長の2032年完成、事業費135億円増やす考え示す 住民「私たちの声聞いて」ー
 長崎県東彼杵郡川棚町の石木ダム建設事業をめぐり、県は事業費を現在より135億円増やし完成時期を7年延長した2032年とする考えを示しました。

長崎県の担当者
「石木ダムは川棚川の抜本的な治水対策のため必要不可欠な事業であり早期に完成させる必要があるため、事業継続をお願いしたい」

 石木ダムは当初1979年の完成を目指していましたが、地権者などの反対でこれまで完成時期が9回変更されていました。
 長崎県の公共事業について再評価する委員会で、長崎県はダム事業の継続と完成時期を現在の2025年度から7年伸ばした2032年度とすること、事業費を現在の285億円から1.5倍の420億円とする方針を示しました。
 増額について長崎県は追加調査や建設業の働き方改革、資材の高騰などを理由に挙げています。
 委員から異論などは挙がらず長崎県の方針を承認しました。

 住民の岩下すみ子さん「私たちが求めているのは本当にこのダムが必要かを検証してほしいとういこと。もっと現地を見て、私たちの声を聞いて、そんなこともしないで何百億円の予算がついたらどんなことになるか」と話し、岩本宏之さんは「長崎県知事が話し合いによる早期完成を目指すのであれば、7年も伸ばさず代執行を早くしてくださいと。そこまで覚悟して戦っている」と述べています。

 委員会は長崎県に対し「地元住民への説明や意見の聞き取りが足りない」として、対話の場を設けるよう求めました。

◆2024年8月3日 長崎新聞
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=7811878787ec45ffab9735106433bb82
ー石木ダム事業継続承認 反対派「声反映されず」 推進派は工期延長に不満 長崎ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県公共事業評価監視委員会は2日、事業の継続を承認した。反対する市民団体が求めていた専門家からの意見聴取や現地視察の機会は設けられず、傍聴席からは抗議の声が上がった。一方、完成目標を7年遅らせる工期延長も決まり、水害や渇水の不安を訴える建設推進派からは不満も漏れた。
 「なんで認める結論になるのか」「おかしいじゃないか」。同委員会が事業を継続する県の方針を承認すると、傍聴席からは怒号が飛び交った。市民団体「石木ダム事業の公正な再評価を求める市民の会」のメンバーが立ち上がり、「委員会は県の御用機関ではない。事業を厳しくチェックする本来の職責を十分果たしてほしい」と訴える抗議声明を読み上げた。
 この日は、水没予定地の川原地区から十数名の住民が建設反対の座り込みを止めて傍聴に訪れた。同地区に嫁いで約50年になる岩下すみ子さん(75)は「(反対する)住民の声は反映されず、人権無視のやり方。委員は現地も訪れない。本当に悔しい」と語気を強めた。反対する住民の岩永正さん(72)も「(県が委員会から)お墨付きをもらうための会だった」と落胆した。
 一方、佐世保市では渇水への不安を訴える住民がいる。「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長は「一日も早い完成を求め続けてきた。完成目標がまた延び、残念の極みだ」と話した。
 事業継続の承認について、県と佐世保市は「現時点での(知事と市長の)コメントは控える」。川棚町の波戸勇則町長は推進する立場から「水源地域住民の理解なくして進展はない。大石賢吾知事には(反対住民と)早期に話し合いの場をつくってほしい」と要望するコメントを出した。
 委員会終了後、友広郁洋委員長は「審議は尽くされた」と強調。反対派からの抗議を踏まえ「住民の理解が最優先。(その点は)県に意見書を出す中でまとめたい」と述べた。

◆2024年8月3日 長崎新聞
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=d4f565a1458b41a78e0fdebca061a7c2
ー石木ダムの事業継続を承認 総額420億円、完成7年遅れ 長崎県評価監視委ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で県は2日、総事業費を現行の約1・5倍の420億円に増額し、完成時期を7年遅れの2032年度とする方針を県公共事業評価監視委員会(友広郁洋委員長)に諮問し、事業継続が承認された。事業費の見直しは07年度以来で、完成時期の延長は当初目標の1979年度から10回目の延期となる。
 石木ダム建設事業は治水と利水を目的に県と佐世保市が共同で進めている。評価監視委は県が実施する公共事業について、一定期間ごとに再評価。2日は長崎市内で、治水面の費用対効果などを審議した。
 県は増額の理由について、資材高騰など社会的要因が約37億円、工事が進んだ結果、地盤補強が必要な範囲が当初想定より広がるなど事業の進捗(しんちょく)に伴うものが約67億円と説明。このほか、工期延長やリスク対策費の追加を挙げた。
 7年間の完成遅れについては、建設に反対している地元13世帯の住民らによる抗議活動の影響、建設業界における働き方改革への対応を理由に挙げた。
 増額後の治水面の費用対効果について、県は管理を含む費用約468億円に対し、事業の便益は約519億円で「1・11」と試算。現行の「1・21」より下方修正するとしたものの効果は見込めるとした。評価監視委は今後、議論の内容を踏まえ大石賢吾知事に事業の継続を承認する意見書を提出する。
 新たな工程表では付け替え道路工事を30年度、ダム本体工事を31年度までに完了させ、32年度に試験湛水(たんすい)を実施する。増額により、負担額(国の補助を除く)は県が約137億円、佐世保市が約82億円となる。
 会場には反対住民や支援者ら45人が傍聴に詰めかけ、事業継続が承認されると不満の声が上がった。