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長崎県の事業評価監視委員会、石木ダム事業の増額と工期延長を承認

 長崎県の事業評価監視委員会は、長崎県から諮問されていた石木ダムの事業費増額と工期延長を認める答申を行いました。
 石木ダムは長崎県が管理する川棚川の洪水調節と佐世保市への都市用水の供給を目的としています。県の委員会は県の管轄である「治水」(川棚川の洪水調節)について検討したことになっていますが、石木ダムの集水域が川棚川水系全体の集水面積の僅か11%しか占めておらず、半世紀以上かけて進めようとしている治水対策としてあまりに治水効果が低いことには触れようとしません。

 石木ダムのもう一つの目的である「利水」に関しては、佐世保市が検討することになっていますが、こちらもダムを推進する佐世保市の方針を委員会が黙認する形式的な手続きが予定されており、石木ダムに反対する市民団体は本来の「事業評価」を求めています。

◆2024年9月3日 長崎新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/b46fc0266973fe028631e6e5ec84862bffc7d6ff?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20240904&ctg=loc&bt=tw_up
ー総額420億円、完成7年遅れ…石木ダム、長崎県の方針を承認 県評価監視委ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画している石木ダム建設事業について、県公共事業評価監視委員会(友広郁洋委員長)は2日、総事業費を約1・5倍の420億円に増額し、完成時期を7年遅れの2032年度とする県の方針を認める意見書を大石賢吾知事に提出した。
 同委員会は先月、長崎市内で治水面から同事業の費用対効果などを審議。県は増額や工期延長の理由に、資材価格の高騰や建設業界における働き方改革、反対住民らによる抗議活動などを挙げ、事業継続が承認された。ダムのもう一つの目的である利水については佐世保市が検討する。
 意見書では自然災害が近年頻発化、激甚化しているとして「必要性は高く、事業継続は妥当」と評価。計画期間内での完成を求める一方で「事業効果や技術的な面などについて、事業に反対する住民との話し合いの場を設け説明を尽くしてほしい」との意見も付け加えた。
 意見書を受け取った大石知事は報道陣に対し「現地住民の理解を得ることが重要との考えは変わらない。最近の自然災害の状況を踏まえた事業効果の説明や話し合いの場を得るため、あらゆる努力を続ける」と述べた。

◆2024年9月4日 朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/articles/ASS933VHNS93TOLB009M.html
ー石木ダム再評価「賛否両派で審議公開を」 市民団体が佐世保市に要請ー

 長崎県佐世保市が今年度実施する石木ダム(同県川棚町)建設事業の再評価について、反対派の市民団体が3日、ダムの専門家らを委員とする事業再評価監視委員会を設けて完全公開で行うよう、市に要請した。

 市水道局によると、事業は県と市が国の補助を受けて進めていて、原則5年ごとに事業を再評価し、国に報告している。

 市は利水目的分として事業費の35%を負担し、国から半額の補助を受けている。今年度は県が治水面で再評価を終えた後、その結果も踏まえて、利水面での費用対効果などを審議する。

 市民団体は要請で、市が過去2回の再評価で諮問した市上下水道事業経営検討委員会ではなく、賛成反対双方のダムの専門家を含む事業再評価監視委員会を新設し、完全公開して透明性を確保することなどを市に求めた。(上沢博之)

◆2024年9月3日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20240903/ddl/k42/040/295000c
ー「石木」建設現場を見学 熊本・川辺川ダム反対団体 川棚ー

 国が熊本県球磨(くま)川の支流・川辺川に建設を計画している国内最大規模の流水型ダムに反対する住民団体が2日、川棚町の石木ダム建設現場を見学した。

 1966年に計画が発表された川辺川ダムは、2008年に就任した蒲島郁夫前知事が白紙撤回を求め、09年に民主党政権が計画中止を決定。多数の死者・行方不明者が出た20年7月の九州豪雨の被害を受けて蒲島氏は建設容認に転じ、自公政権で流水型ダムの建設が決まった。

 見学したのは「ダムによらない復旧・復興を求める人吉・球磨の会」などのメンバー11人。石木ダムの水没予定地に暮らし、ダム建設に反対する川棚町議の炭谷猛さん(73)が現地を案内した。炭谷さんは建設予定地は地盤が悪く人口減少で水需要も減っているなどとして、治水、利水両面で石木ダムは不要だと強調した。

 見学した一行は石木川の小ささに驚き、「ここにダムを造って機能するのか」と疑問を呈した。人吉・球磨の会の林通親(みちちか)代表(75)は「私たちは大きな公共事業が住民の分断を生むことを経験したが、地方がさびれていく構図がここにも見られる。石木ダムの実情を直接聞けて良かった」と語った。【綿貫洋】

◆2024年9月3日 テレビ長崎
https://news.yahoo.co.jp/articles/fd78b11d794655309186b504d3e304a1b1c418dd
ー石木ダム反対運動で市民5団体が要望書 現地には「川辺川ダム」反対メンバーもー

 県と佐世保市が2032年度の完成を目指している東彼杵郡川棚町の石木ダム事業について建設反対を求める市民グループが3日、佐世保市に要請書を提出しました。
 石木ダム建設に反対する5つの市民グループは佐世保市水道局を訪れ、担当者に要請書を手渡しました。

 要請書では事業評価監視委員会の設置や市の方針に賛成・反対両方の立場の委員を選ぶこと、それに審議の完全公開の3点を求めています。
 市民グループは佐世保市に対し、10月2日までに文書で回答するよう伝えました。

 一方、2日 石木ダムの建設予定地には熊本県の川辺川ダムの建設反対運動メンバー11人が訪れました。
 川辺川ダムは石木ダム同様、計画の発表から約半世紀たっていますが、未だに完成していません。
 
〈ダムによらない復旧・復興を求める人吉・球磨の会〉 林通親 代表
 「大きな公共工事は住民の中に分断を生む。そういうむごいことをダムは起こしていく」

 川棚町町議会議員 炭谷猛さん
「権力による押し付けは今も昔も変わらない。(ダムを)考え直す時が来ていると私は思う」

 川辺川ダムの建設に反対する市民グループは石木ダム周辺の住民と情報共有を図り、今後、運動を発展させたいとしています。