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長崎県の石木ダム事業、佐世保市が5年に一度の「再評価」

 長崎県とともに石木ダム事業に参画する佐世保市において、石木ダム事業の再評価についての検討が行われ、事業継続が承認されたことが報道されています。
 しかし、佐世保市は他の全国の地域と同様、人口減少が進み、市の過大な水需要予測に反して、実際の水需要は下降してきています。
 以下の長崎新聞の報道によれば、再評価を行った委員からは、「(水需要)予測の妥当性について「変な見込みをしていないと感じる」などの意見が出て、了承した。」とのことですが、「変な見込みをしていない」と感じた根拠は何なのでしょうか?
 ダム事業の見直しの有無は、「再評価」の判断次第のはずですが、最初からダム推進の結論ありきの「再評価」の実態が問題山積のダム事業を後押しています。

 佐世保市の水道事業と今回の再評価について、石木ダムに反対する佐世保市の市民団体「石木川まもり隊」がブログで大変詳しく解説しています。
 https://ishikigawa.jp/category/blog/cat09/
 

◆2025年1月22日 長崎新聞
https://nordot.app/1254633475046867861?c=39546741839462401
ー長崎県の石木ダム建設事業、第三者委が初会合 5年に一度の「再評価」ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設を巡り、市の利水面の事業再評価が21日始まった。市から再評価の審議を諮問された市上下水道事業経営検討委員会が2043年までの水需要予測の妥当性を話し合い「日量約4万トンの新規水源確保が必要」とする市の主張を了承した。審議を傍聴した反対派は「予測は過大だ」と反発した。

 市は国の補助を受けるため、適宜の再評価を義務付けられている。検討委は識者ら9人でつくる第三者機関。2020年の前回も諮問を受けて審議し「石木ダム事業の継続を是認する」との結論を出した。21日の初会合で委員長の横山均・県立大教授は「ゼロベースから予断を持つことなく審議したい」と述べた。

 会合で市水道局は、渇水などの非常時の備えを含めて確保しておくべき計画取水量を日量11万7702トンと推計。現状、市が保有する河川やダムの水源を合わせても7万7千トンで「約4万トンの新たな水源確保が必要」とした。予測の妥当性については「必要最小限の数字」と強調した。

 用途別の水需要予測についても審議。全体の6割以上を占める生活用水は人口減少を見込む一方、渇水ではなかった年度のほとんどで需要が増加傾向を示していることや全国平均との兼ね合いなどを根拠に、微増で推移すると主張。業務・営業用水は、ハウステンボスの今後の設備投資などを挙げ「増加傾向を見込んでいる」とした。

 委員からは予測の妥当性について「変な見込みをしていないと感じる」などの意見が出て、了承した。今後、石木ダムの代替案の有無や費用対効果を審議し、意見をまとめる。

◆2025年1月22日 長崎文化放送
https://www.ncctv.co.jp/news/article/15595716
ー将来の水需要予測に反対派から疑問の声…佐世保市で石木ダム再評価委員会ー

 県と佐世保市が川棚町に建設を進める石木ダムを巡り、建設事業の再評価を行う第三者検討委員会が佐世保市で開かれました。

「佐世保市上下水道経営検討委員会」は、5年ごと、もしくは社会の経済情勢の変化に応じて、事業を再評価するもので、2020年以来5回目の開催です。委員会は市の諮問を受けた大学教授や公募で選ばれた市民など第三者の9人で構成します。初回は将来の水需要に関する予測が審議されました。

市水道局は現在の安定水源量を1日最大7万7000トンとして、20年後には最大11万7702トンの水が必要になると説明。不足する4万702トンを補う必要があるとし、委員の賛成で承認されました。この水需要予測に対し、別室で傍聴していた反対派の市民からは疑問の声が上がりました。

石木川まもり隊・松本美智恵さん:
「持続可能な社会をどうやって構築していくかという発想とは真逆の発想の水需要予測だったと思います。石木ダム事業が計画されて今年でちょうど50年なんですよね。50年作られてこなかったということはそれほど必要がなかったということになると思う」

 石木ダムを巡っては、去年8月に開かれた県の公共事業評価監視委員会で、完成時期が2025年度から2032年度に7年延期されました。総事業費も物価上昇などの影響で285億円から135億円増加し、420億円になる見通しです。

 次回は来月中に開き、水源確保の代替案や建設費の費用対効果について審議する予定です。

◆2025年1月22日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/AST1P4QRLT1PTOLB00LM.html
ー石木ダム建設の利水事業、再評価を諮問 佐世保市「新規水源が必要」ー

◆2025年1月22日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1306516/
ー長崎県の石木ダム、事業着手から半世紀 行政の説明に感じる不十分さと曖昧さー

 長崎県の石木ダム建設事業は水没予定地の一部住民の反対が根強く、事業着手から半世紀が経過する今もなお完成していない。この間の人口減など周辺環境の変化を踏まえ、佐世保市の市民グループは新たなダムは不要として事業の見直しを求めているが、県と市はさまざまな理由を示して「必要」との見解を維持している。

▶ 長崎県の石木ダム建設事業、第三者委が初会合 5年に一度の「再評価」

 行政側が掲げる理由の一つがダムの老朽化。市内6カ所のダムのうち4カ所は戦前に建設されたもので老朽化が著しい上に、土砂が堆積して貯水力が低下し「水源不足」に拍車をかけているという。

 土砂を取り除けばよさそうだが、それにはいったんダムを空っぽにしなければならないと市は説明する。大戦時の空襲で、もともとの地形を示す図面が失われており、地形が分からないまま水を張った状態で浚渫(しゅんせつ)すると、地盤を損傷してダムに水がたまらなくなる恐れがあるという。ただ、空っぽにできるほど水の供給に余裕はなく、改修工事をするにも新たなダムが必要というのが市の論法。市議会で水道局長がそう答弁し、市民に配る冊子にも書いている。

 このほど市民グループが論法の一部を崩す「発見」をした。老朽ダムの一つで、明治期に旧海軍が造成した山の田ダム(佐世保市桜木町)の堤防の断面図などが、2016年に市教育委員会が出したダム調査報告書に掲載されていたのだ。図面には「佐世保市水道局蔵」との説明もある。

 市は「うそ」をついていたのか。

 確認すると、調査報告書はダムの日本遺産登録に向けてまとめたもので、掲載図面の一部は確かに水道局にあったが、大半は防衛省防衛研究所が保管していた。図面の内容と現在の地形などが必ずしも一致しているとは言えず、文化財としての価値を示す材料にはなっても、これをもって工事ができるわけではないという。「図面がないから工事ができない」との議会答弁については、「老朽化したダム全般について述べたもので、図面がある山の田ダムに限った説明ではない」(水道局担当者)と応じた。

 市民グループは「ない」としてきたものが「あった」ことで不信を深める。第三者である記者としては、うそとまでは言えないが、説明が不十分で曖昧だとは感じる。だがそもそも、半世紀前に計画したダムが未完であること自体が異例だ。21日に始まった専門家による第三者委員会では、誰が聞いても納得、理解できるような明快な議論と、執行部からの説明を期待したい。(重川英介)