半世紀前から続く長崎県の石木ダム事業は、ダム予定地に暮らす13世帯の住民の反対運動が全国から注目されています。佐世保市は不足する水道用水のために石木ダムが必要だと主張して事業費を負担し続けています。
さる2月14日に5年ごとに行われてきた事業の再評価が「有識者」を集めて審議されました。佐世保市は現時点で水不足にはなっておらず、また全国の他の自治体と同様に今後の人口減少、水需要の減少が見込まれますが、今回も最初から佐世保市の意向通り、「事業継続妥当」という結論でした。
石木ダムに反対し、地元住民を支援してきた佐世保市の市民団体「石木川まもり隊」はブログで大変詳しく今回の再評価について解説し、「多くの委員が50年経ってもできない石木ダム、10回も工期延長してきた石木ダム、それを「異常な公共事業」だと指摘しながら、それでも継続するという。その論理が理解できません。」と書いています。
★石木川まもり隊ブログ「異常だと批判しながら「事業継続」?」
知れば知るほど、必要性がない石木ダム。事業推進の理由は「利権」と「惰性」以外に考えられるでしょうか。
関連記事を紹介します。
◆2025年2月18日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/AST2K55HMT2KTOLB00FM.html
ー人口減でも「新規水源は必要」、石木ダム建設の水需要予測とはー
人口は減っても、1日4万立方メートルの新規水源は必要だ――。水道水源用に石木ダム建設を進める長崎県佐世保市が、2043年度までの水需要予測を公表した。「過大」との批判もある。どんな予測なのか。
石木ダムは、県が治水、市が利水目的で同県川棚町に建設中の多目的ダム。市は今年1月、国庫補助を継続して受けるため、国が定める5年に1度の事業の再評価を、市上下水道事業経営検討委員会(9人、委員長=横山均・長崎県立大教授)に諮問し、水需要予測を説明した。
予測は石木ダムの給水エリアを、佐世保市内の佐世保地区(合併前の旧市)と旧町地区(合併前の小佐々、鹿町、江迎の一部)に設定。43年度に必要な取水量を1日11万7700立方メートル(以下、立方㍍を省略)とした。
(以下略)
◆2025年2月16日 長崎新聞
https://nordot.app/1263355711494390749?c=39546741839462401
ー石木ダム建設 事業継続おおむね了承 利水再評価検討委 長崎県ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設を巡り、市の利水事業を再評価する2回目の会合が14日、市役所であった。審議した第三者の市上下水道事業経営検討委員会は、ダム以外の代替案や費用対効果を検討した上で市水道局の「石木ダムの事業継続が妥当」とする対応方針案をおおむね了承した。
委員9人のうち6人が出席。「(市内既存ダムなど)施設の老朽化が限界に来ており、もう待てない」「絶対にダムを完成させてほしい」と石木ダムの早期建設を促す意見が相次いだ。検討委員長の横山均・県立大教授は石木ダムの費用対効果が高いことに着目しながら「やる気と覚悟がないと(再評価を)また5年後もやりましょうとなる。こういう公共事業は異常だ」と指摘した。
審議で市水道局は、石木ダムで賄う予定の水源量(1日約4万トン)の代替として14案を検証したことを報告。このうち、地下水を取水する案は「有力な地下水を発見できていない」と説明した。海水淡水化施設を整備する案も「不適」とした。その上で「石木ダムに代わる新たな代替方策の立案可能性はない」と結論づけた。
費用対効果については、石木ダムの建設費と50年間の維持管理などの全事業費を約1061億円と試算。ダム整備で得る便益額(渇水時の給水制限による被害額)は約5868億円と算定し効果が大きいとした。検討委は次回以降の会合で結論をまとめ、答申する。
傍聴は初会合同様、別室で受け付け、ダム建設に反対する市民団体などが審議を見守った。市民団体代表の松本美智恵さんは、県が佐々川の遊休水利権の活用を認めれば代替案になり得ると主張。費用対効果は「過大だ」と指摘した。
◆2025年2月16日 テレビ長崎
https://news.yahoo.co.jp/articles/c5480338fd55b1e49ec4d9923521d1af06dd1791
ー石木ダム建設めぐる利水事業再評価検討委【長崎県佐世保市】ー
東彼・川棚町の石木ダム建設をめぐり、佐世保市の利水事業を再評価する第三者委員会の2回目の会合が開かれ、多くの委員からダムの早期完成を望む声が上がりました。
委員会は学識経験者などで構成され、14日は、石木ダム建設以外で佐世保市の水源が確保できる可能性と事業への投資効果を検討しました。
石木ダムは、事業の効率性などを高めるため、5年に1度の事業再評価が国から義務付けられていて、市はこのうち利水事業の再評価を上下水道事業経営検討委員会に諮問しています。
審議の中で、市水道局は既存ダムの再開発や海水の淡水化など14の代替案を示し、20年後に不足するとされる4万トンの水源確保には、事業継続が妥当であり、高い投資効果も確認できると説明しました。
また、委員の多数がダムの早期完成を望む考えで、横山均委員長も「数字上は事業が妥当と判断する」と述べていて、次回の委員会では国への答申についてさらに審議する予定です。
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〈参考記事〉
2022年8月16日の朝日新聞記事
「11水道事業者、ダム取水せず 人口減や節水進み、需要予測外れる 維持費、年2億円近く」