雪解け水がたまる新緑の季節は、ダムの水位が一年で最も上がる時期です。八ッ場ダムではこの季節、ダム堤の高い位置から放流する点検放流が行われます。地元自治体では2年前より、ダム湖観光の一環として、ふるさと納税の返礼品目にこの点検放流の見学が組み込まれました。点検放流の見学は、ダムが建設された群馬県の長野原町とダム事業で数十世帯が立ち退きを余儀なくされたダム下流の東吾妻町の住民、および両自治体にふるさと納税をおさめた人が参加できることになっています。
かつてダム事業は「税金の無駄遣い」として納税者の批判の対象となり、マスコミでしばしば取り上げられましたが、国土交通省が「ダムマイスター」、「ダムカード」など様々なキャンペーンを繰り広げてきたことが奏功し、近年はダムの愛好家が増えています。ダム愛好家にとって、スケールの大きな放流ショーは人気のイベントとなっているようです。けれども「ふるさと納税」自体は、本来公共の様々な事業を行う自治体への納税額が減少するという深刻な問題を引き起こしています。
◆2025年5月25日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/682843
ー落差100メートル 水ごう音 八ツ場ダム点検放流(群馬・長野原町)ー
八ツ場ダム(群馬県長野原町)の年1度の点検放流が24日行われた。ダムのファンや地元住民約500人が落差100メートルから大量の水が流れ落ちる迫力を楽しんだ。
カウントダウンの後、四つの「クレストゲート」から順に水が流れ、辺りはごう音に包まれた。今年は雪解けの水が多く、毎秒15トンを放流した。新潟県から訪れた佐藤和彦さん(58)は「迫力があって美しい」と満足そう。
放流は同町と下流の東吾妻町の町民、両町にふるさと納税をした人に限定して公開された。
◆2025年5月25日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20250525-OYTNT50012/
ー八ッ場ダム、年に1度の豪快な放流…ふるさと納税返礼企画ー
群馬県長野原町の八ッ場ダムで24日、高さ116メートルの堤体最上部からの放流が見られるイベントが開かれた。イベントはふるさと納税の返礼品として企画され、県内外から訪れた約550人が迫力満点の放流を楽しんだ。
今回使われたのは、ダム満水時に緊急放流するために開ける「クレストゲート」で、年に1回、点検のための放流が行われる。この特別な放流を多くの人に見てもらおうと、長野原、東吾妻両町が2年前から企画している。
この日は、毎秒15トンの水が豪快に放流され、見学者は笑顔でカメラを向けていた。千葉県市原市の女性会社員(38)は「ゲートの開閉の瞬間が見られて興奮した。勢いもあって良かった」と喜んでいた。
写真=満水の八ッ場ダム貯水池。6月末には水位を人為的に28メートル下げて大雨に備える「洪水期」となる。2025年5月20日、水陸両用バスの発着所、「湖の駅丸岩」より撮影。