石木ダム事業をめぐり、現地住民による反対運動が半世紀以上続いている長崎県。事業者である長崎県は、予算の執行率をアピールして事業が進んでいるように見せかけていますが、13世帯の住民を強制的に立ち退かせない限り、ダム建設は実質的に不可能です。
ダム本体の建設予定地には、住民らが建てた「団結小屋」があります。大石賢吾知事は開会中の県議会の答弁で、「「支障となる物件の撤去について、県民を守る立場の知事として責任ある判断をしなければならない」と述べ、行政代執行の可能性を示唆した。」とのことです。しかし、長崎新聞の報道にあるように、住民は「来春の知事選に向けた大石知事のパフォーマンス。」と、知事発言の意図を見透かしているようです。石木ダムに反対する議員連盟も大石知事への抗議声明を発表しました。
住民の運動を支えるために、長崎県内の市民運動がパンフレット配布などの活動に奔走しています。全国の皆さんの応援が何より大きな力になっています。
◆2025年9月30日 長崎新聞
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=3344541c30a74a0c809f5a406e1e7aaf
ー長崎・石木ダム建設予定地の「団結小屋」 県が撤去要請へ…反対住民「体を張ってでも阻止」ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町で進める石木ダム建設事業で、県はダム本体(えん堤)の建設予定地にある「団結小屋」の撤去を反対住民に要請する方針を今月の定例県議会で明言。大石賢吾知事はこれに先立ち、一般質問で「支障となる物件の撤去について、県民を守る立場の知事として責任ある判断をしなければならない」と述べ、行政代執行の可能性を示唆した。団結小屋は反対運動のシンボルとも言え、住民は「体を張ってでも阻止する」と反発している。
団結小屋は約40年前、抜き打ちで強制測量した県側の動きを見張るために反対住民らが建てた。トタン張りの外壁には「ダム絶対反対」「返り血も浴びる」などの看板が掲げられている。
当初は住民が交代で寝泊まりして警戒。やがて平日の昼間に高齢女性10人前後が集うようになった。しかし現在は、その多くが亡くなり、支援者の応対やアトリエ、トイレなどで利用されている。
ダムの完成時期は当初から遅れ、2032年度を予定。県によると、総事業費は420億円を見込み、進捗(しんちょく)率(事業費ベース)は52・3%=昨年度時点=。大石知事は8月下旬、宮島大典佐世保市長と波戸勇則川棚町長を伴い、工事現場を視察。報道陣に早期の完成を目指す姿勢を改めて示す一方、行政代執行による強制撤去については「最終手段」とした。
「だから何だって言うんです」。半世紀近く反対運動を続けてきた岩永正さん(74)は、鋭いまなざしをダムの工事現場に向ける。
岩永さんら反対住民の男性たち7人は、団結小屋の真向かいのビニールハウスでローテーションを組み、工事の監視を続けている。岩永さんは「自分も含め後期高齢者ばかり。体力的にきつい。それでも、孫が『じいちゃんの作った新米はおいしい』と喜んでくれる」と、古里での暮らしを守ることの意義を強調する。
団結小屋撤去の要請があった場合、反対住民全体としてどう対応するかなどは議論していないと言うが、岩永さんは「知事にはやるなら、やってみろと言いたい。重機の下に潜り込んででも阻止する」と徹底抗戦の構えを崩さない。
同じく70代の男性も「来春の知事選に向けた大石知事のパフォーマンス。話にならない」と一笑に付した。
行政代執行の可能性について県側は、定例県議会での答弁で「可能性について問われれば、肯定も否定もしないという状況。13世帯の理解を得て、事業を進めることが最善との考えは変わらない」と従来の姿勢をあらためて述べている。
◆2025年10月2日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20251002/ddl/k42/040/236000c
ー川棚・石木ダム「団結小屋」 県の“撤去”示唆に抗議 建設反対議連 住民ら「丁寧に説明を」ー
県と佐世保市が川棚町で進める石木ダム建設事業で、見直しを訴える県議らでつくる「石木ダム強制収用を許さない議員連盟」が1日、県庁で記者会見。ダム本体(えん堤)工事の予定地にある反対住民の「団結小屋」について、撤去を求める県が行政代執行の可能性も示唆したことに抗議した。
大石賢吾知事は9月16日の一般質問で「支障となる物件の撤去について、責任ある判断をしなくてはならない」と答弁。また、同24日の観光生活建設委員会で県は「物件」について、団結小屋と説明した。
反対住民らによると、団結小屋は約50年前に県を監視するために建てた。当時は泊まり込みで警戒した反対運動の象徴的な建物。土地収用法に基づき、県が19年から小屋を所有し、任意で住民側に撤去を要請してきた。
「議連」の共同代表、堀江ひとみ県議(共産)は「(県側は)工期を守るため、団結小屋の撤去は緊迫した状況にある」と、述べた。
建設予定地に住む岩下すみ子さん(76)は「強行手段で訴えるよりも、人口減少の中、新規水源を求める矛盾などを、より丁寧に説明するほうが必要では」と、県を批判した。【柳瀬成一郎、百田梨花】
◆2025年10月2日 長崎文化放送
https://www.ncctv.co.jp/news/article/16067550
ー石木ダム反対運動のシンボル「団結小屋の撤去は許さない」 大石知事の行政代執行示唆発言に抗議ー
大石知事は県と佐世保市が東彼・川棚町に建設を進める石木ダムについて9月、県議会で行政代執行の示唆とも取れる発言をしました。これを受け、反対派の議員連盟が抗議の会見を開きました。
大石知事(9月16日):
「来年度中の本体工事発注に支障となる物件の撤去について、県民を守る立場にある長崎県知事として責任ある判断をしなければならないと考えています」
9月、県議会一般質問でこう答弁した大石知事。石木ダムを巡って県は「2032年度の完成を見据えると、来年度中にダム本体工事の発注が必要」とし、住民が工事を見張るために建てた「団結小屋」を撤去する方針です。
大石知事は「住民の理解を得る努力は最後まで続けていく」と強調する一方、行政代執行の可能性については否定していません。
これを受け、1日、建設に反対する全国の国会議員や県議、市議など約100人でつくる「石木ダム強制収容を許さない議員連盟」が緊急会見を開きました。
石木ダム強制収容を許さない議員連盟 堀江ひとみ共同代表:
「団結小屋の撤去が時間の問題となっている緊迫した状況であることをぜひ知っていただきい。『団結小屋の撤去は許さない』というこの声を、共に大きく広げていただきたい」
県は、知事と13世帯の反対住民との面会を調整しています。
◆2025年9月24日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20250924/ddl/k42/040/208000c
ー石木ダムは必要か? 問題点を市民ら議論ー
県と佐世保市が川棚町で建設を進める石木ダムの問題点を議論するパネルトーク「どうする! 石木ダム」が23日、長崎市興善町の市立図書館多目的ホールであり、約150人が参加した。長崎市の市民団体「石木川の清流とホタルを守る市民の会」などでつくる実行委の取り組み。
石木ダム事業の問題点を指摘し続ける元国土交通省防災課長の宮本博司さん(72)が「雨の降り方によっては、支川のダムからの流量が本川のピークと重なり、流量を増やす可能性がある」などと問題点を指摘した。
パネルトークでは、元滋賀県知事、嘉田由紀子さん(75)が「行政代執行で住民を追い出すのか。人としての知事の判断こそが求められる。非人道的なダムなどいらない」と、県の姿勢を批判した。
質疑応答では「ダムの税負担の問題提起や知事へのアクションをどんどん進めるべきだ」などの意見が出た。【柳瀬成一郎】
◆2025年9月1日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/AST803TB9T80TOLB006M.html
ー長崎県知事、石木ダム建設「理解を得たい」 進捗状況など視察ー
長崎県などが進める石木ダム(川棚町)の建設現場を8月31日、大石賢吾知事が視察した。水没予定地の住民のうち13世帯が事業に反対してダム本体工事は足踏みしているが、県道の付け替え工事などは進む。住民側の技術的な疑問に県が答える説明会で知事の参加を求める声も出ており、出席に備えて工事の進捗(しんちょく)状況などを視察した。
大石知事は宮島大典・佐世保市長、波戸勇則・川棚町長とともに視察。担当職員から、各付け替え道路の位置関係などを写真で説明された後、ダム本体左岸部の掘削工事や、橋脚が並ぶ県道の付け替え道路の建設現場などを見てまわった。
建設に合意し移転した世帯の代替墓地にも参った。反対派住民らにも面会を求めたが、拒まれたという。
県によると事業全体の進捗(しんちょく)率は、事業費ベースで52.3%(2025年3月末現在)。県道の付け替え道路の工事は長さ3.16キロのうち1.7キロが完成しているという。大石知事は視察後の取材に、「相当工事が進み、知事に就任した当時(2022年)とはかなり景色が変わった。石木ダムは県民の安心安全(治水)面でも、利水の面でも必ず必要。説明の場に直接参加して理解を得られる努力をしたい」と話した。
https://www.ncctv.co.jp/news/article/16004030
◆2025年9月2日 長崎文化放送
https://www.ncctv.co.jp/news/article/16004030
ー大石知事が石木ダム建設現場を視察 反対住民との面会は出来ずー
大石知事が県と佐世保市が建設を進める東彼・川棚町の石木ダム建設現場を視察しました。
公務としては2023年12月以来約1年8カ月ぶりに建設現場を訪れた大石知事。
大石知事:
「だいぶ景色が変わりましたね。目に見えて進捗が分かりますね」
視察では佐世保市の宮島市長や川棚町の波戸町長と、ダム本体の掘削現場や、水没する県道に変わる新しい県道の付け替え工事の進捗を約1時間確認しました。
一方で、ダム建設予定地の川原地区では2019年に土地の明け渡し期限が過ぎた後も建設に反対する13世帯が暮らし続けていて、知事は視察に合わせ面会を求めましたが、「会うつもりはない」と断られました。
大石知事:
「古里を思う13世帯の方々の思いがどれだけ大きいか、尊いかということは十分理解しているつもりではございますが、県民の皆様の安全安心、そして佐世保市の方々の水の確保ということからは、広域行政の責務としてしっかり完成をしなくてはいけないと思いを新たにしているところでございます」
昨年度末時点の工事の進捗率は総額420億円の事業費ベースで52.3%。2032年度の完成を目指しています。
県は今年に入りダム建設の技術的な疑問点に答える説明会を3回実施しています。反対住民らはこの説明会に知事の出席を求めていて、知事は出席する意向を示しました。