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草津町で温泉熱発電導入へ

 草津町が温泉熱発電を導入することが15日の地元紙一面トップで報じられました。
 これまで草津町周辺では、自熱発電の話はあったものの、温泉への影響が懸念されたことから開発が進みませんでした。熱発電に利用されるのは、草津温泉の中でも1970年代と新しく開発された万代鉱(ばんだいこう)源泉です。

 草津白根山麓の硫黄鉱山閉山にともない、1975年から利用されるようになった万代鉱源泉は、その豊富な湯量により、草津温泉の発展に大きく寄与してきました。新たに整備された巨大な露天風呂や温泉プール、ホテル、リゾートマンションなどは、この源泉を活用したからこそ可能になりました。他の源泉より高温で融雪や温水にも利用されきた万代鉱源泉ですが、ヒ素を多く含み、酸性度も他の源泉より高いことから、もともと刺激の強い草津の湯の中でも特に皮膚への刺激が強いといわれます。
 草津温泉の下流に国家プロジェクトである八ッ場ダムを建設するにあたり、国と群馬県は1960年代、川を流れ下る温泉の酸性度をやわらげ、ダム建設を可能とするために中和事業を開始しました。当時はまだ流れていなかった万代鉱源泉が加わることにより、中和生成物を貯める目的で建設された品木ダムには、長年の間にヒ素が濃縮・沈殿してきました。完成から60年たつ品木ダムは中和生成物と土砂で満杯となり、常に浚渫を行い続けなければならない状態ですが、浚渫物に基準値を超えるヒ素が含まれているため、浚渫物は品木ダムの集水域以外に投棄できないという問題があります。

 万代鉱源泉の発電への利用は、全体の3分の1とされ、「再利用を考えたい」との草津町長の言葉が上毛新聞で紹介されていますが、品木ダムに流入する温泉水に変化はないのでしょうか?
 

◆2025年11月15日 上毛新聞 (紙面より転載)
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/809743
ー草津町が温泉熱発電 県が採算性を確認 源泉活用、26年度に完成へー

 再生可能エネルギーの普及拡大を目指す県は14日、群馬県草津町が湧出量と温度が県内トップの万代鉱源泉を活用した温泉熱発電設備の導入を決めたことを明らかにした。県が事前に調査を行った結果、十分な発電量が得られることや設備投資に対する採算性があることを確認したという。町によると、2026年度中の完成を目指している。

 県と町によると、万代鉱源泉の温度は95度と高く、湧出量も毎分9千㍑を誇る。この特徴を生かし、水より沸点が低い媒体を熱してその蒸気でタービンを回す発電方法「バイナリー発電」の設備を県内で初めて導入する。電力は湯畑のライトアップや街頭、避難所の非常用電源などへの活用を検討している。

 町では現在、万代鉱源泉の温泉のうち3分の2をホテルや旅館で浴用として使い、残りの3分の1は放流している。発電に箱の放流分を活用する地中の熱を使う自熱発電は掘削が必要なため温泉の温度や湧出量への影響が懸念されるが、温泉熱発電の場合はその心配がないという。

 県は6月中旬から3カ月ほどかけて万代鉱源泉について調査。毎分2千㍑を活用すれば一般家庭約125世帯分に相当する約50万㍑時の年間発電量を得ることができ、強酸性の温泉による配管の腐食といったメンテナンス面を考慮しても採算性があると判断した。

 県によると、湧き出る未利用の温泉を活用した発電は、新潟県の松之山温泉や長崎県の小浜温泉で例があるが、全国的にもまだ珍しいという。

 山本一太知事は14日の定例会見で「全国有数の温泉県で温泉熱を再生可能エネルギーに使用できることはうれしく思う。専攻地域の情報提供などを通じて町を支援し、県内の他地域でも可能かどうか検討したい」と話した。

 草津町の黒岩信忠町長は上毛新聞の取材に「草津の温度が高い温泉だからこそ可能で、エコが求められる時代のニーズに合った発電方法。発電に使用した温泉を無駄にせず再利用できる仕組みも考えたい」と展望した。(林哲也)
 

◆2025年11月16日 讀賣新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20251115-OYT1T50153/
ー草津温泉で熱発電導入へ、源泉温度94度のうち15度分を利用…群馬県調査「採算性ある」ー

 群馬県は14日、草津温泉(草津町)の「 万代鉱ばんだいこう 源泉」で温泉の熱を使った「バイナリー発電」の可能性を調査した結果、採算性が確認されたと発表した。草津町が発電設備の導入を決めたといい、実現すれば県内で初めて。県は他の源泉でも導入の可能性を探る。

 県が三井金属資源開発(東京)に委託して6~9月に行った調査では、未利用の湧水のうち毎分2000リットルを活用することで、年間約50万キロ・ワット時の発電が可能だという。投資額は15年あれば回収でき、採算性はあるという。

 この源泉は町が管理し、湧出量は県内で最も豊富な毎分約9000リットルを誇る。このうち3分の2はホテル・旅館での利用などに充てられている。温度は県内で最も高い約94度で、このうちの15度分の熱を活用する想定で調査。強酸性のため、設備の耐久性も確認した。

 温泉熱を使った発電は、新たな掘削が必要な地熱発電と異なり、温泉への影響の心配がない点がメリットだ。山本知事は14日の定例記者会見で、「温泉の熱を再生可能エネルギーとして活用できることが判明し、大変うれしい」と語った。

 町では発電した電力を湯畑のライトアップや避難所の非常用電源に使うことを想定している。