八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

名残惜しまれる川原湯温泉駅と新駅周辺整備工事

 夕暮れ時の川原湯温泉駅shuku
 夕暮れ迫る川原湯温泉駅の駅舎の扉に「営業休止のお知らせ」が貼ってありました。
 JR東日本は、吾妻線を三週間後の10月1日、八ッ場ダム事業で建設された新線に付け替えると発表しています。現在の線路の利用は9月24日で終了の予定です。(詳細はこちらをご覧ください。↓)
 https://yamba-net.org/wp/?p=7636
 

 川原湯温泉駅やダム水没予定地を走る吾妻線は、どこをとっても絵になることから、鉄道ファンの ”撮り鉄” はもちろん、一般の観光客がデジカメや携帯で写真を撮っている姿も日に日に増えています。

駅前の桜shuku
青梅shuku
 黒い屋根と白い壁の木造りの川原湯温泉駅は、多くの観光客に親しまれてきました。駅前には、梅と桜の木があります。駅舎の左手に植わっている桜はだいぶ枝を伐られてしまいましたが、それでも春になると花を樹冠いっぱいに咲かせます、初夏には駅舎右手の梅の古木に青い小梅がたわわに実ります。

 かつては駅前にドライブインや土産屋、飲食店が軒を連ねていました。八ッ場ダム事業の補償基準が締結された2001年以降、住民は次第に転出してゆきましたが、それでも数年前までは,
紅葉の時期など名勝・吾妻渓谷がお目当ての観光客で大賑わいでした。

 川原湯温泉駅の移転に伴い、JR東日本では現在、キャンペーンを実施しています。
 http://www.jreast.co.jp/takasaki/news/docs/20140822_6_1.pdf

 記念入場券売り場shuku
 小さな駅の構内では、「川原湯温泉駅&吾妻線の四季写真展」を開催中です。
 9月1日には、12月31日までの期間限定で記念入場券の販売を開始しましたが、午前11時には用意していた700枚を完売するほどの人気でした。
 温もりのある川原湯温泉の駅舎や吾妻線の風景は、都会の喧騒を逃れてこの地を訪れる観光客にとって、どこか懐かしい風情があり、大がかりな観光戦略が取りこぼしている観光客のニーズにしっくりとマッチするようです。

 メッセージ版shuku

 構内にはメッセージカードとサインペン、掲示板も用意されており、一人ひとりの観光客の思い思いのメッセージが掲げられていました。

メッセージ (9)shuku
「吾妻渓谷のハイキング楽しかった。今までありがとう」
「新線になる前に奈良から来ました。とてもよい駅舎がなくなってしまうのが残念です。」
「都会にはない駅で、とても良いふんいきで好きなのに、沈んでしまうのは残念です。神奈川県」
「亡き母に代わってきました。昭和20年、疎開していたそうです。」(注:第二次大戦中、東京・淀橋区の明星小学校の学童疎開を川原湯温泉が受け入れた。)

メッセージ (6)shuku
「何度も来てます。吾妻渓谷も歩きました。王湯も行った。温泉玉子も作った。とっても楽しかった。また来ます。川原湯温泉大好き」
「駅が無くなっちゃうのは、とてもさみしいです。最後に紅葉の景色を見たかったです。素敵な駅でした。」
「15年ぶりくらいに来ました。すてきな雰囲気の駅舎がダムの底に沈むのがとても寂しくなりました。思い出をありがとう。長い間お疲れさま!」

メッセージ (4)shuku
「川原湯駅の駅舎は、群馬の文化財として残したい。地元の鉄より」
「何年ぶりだろう。久しぶりに来ました。吾妻渓谷とこの駅舎がなくなるのはホントに残念です。」
「子供の頃に来たきり、約40年ぶりに来ました。当時のことはよく覚えていないけれど、たぶんあの頃のままなんだろうなあ。もしダムができなかったら、まだまだここにあり続けたのだろうか」
「新線に変わる前に来られてよかったです。この駅のことを忘れないようにしたいです。」
「こんなに素晴らしい駅舎がダムに沈んでしまうなんて・・・。初めて来ましたが、改めて素晴らしい駅舎です! from 立川」

 新駅と駅前広場と町道shuku
 10月1日に川原湯温泉の新駅が開業する予定の上湯原の代替地では、駅舎や線路の準備はできていますが、駅前広場や町道はまだ整備中です。
 町道整備は10月1日には完了しないと言われ、駅前広場に降り立った観光客は、以前からある急坂を上りあげて、付け替え県道に向かうことになりますが、付け替え県道も工事中です。

新駅と富澤さんの土地shuku 
 線路脇で整備中の町道周辺では、大同特殊鋼の有害な鉄鋼スラグが埋め立てられていることが明らかになっており、大きな火種を抱えている状態です。問題の鉄鋼スラグは、フッ素などの有害物質に加え、水を含むとふくらむ性質があり、スラグを撤去しないと、地盤が変形する可能性が指摘されています。

 桜沢砂防工事shuku
 背後の山では、おびただしい砂防工事が行われています。新駅の脇(上流側)を流れる桜沢は、これまでに何度も土石流が発生した場所だけに、大がかりな砂防工事が延々と続いています。

 川原湯温泉駅が吾妻渓谷と温泉街に近い現在の駅舎を廃止して、周辺整備が終わっていない新駅へ急いで移転しなければならないのは、現在の駅舎が八ッ場ダムの水没予定地にあるだけでなく、JR吾妻線が八ッ場ダムの本体工事予定地を走っているためです。
 吾妻渓谷の線路の頭上では、八ッ場ダム本体左岸上部掘削のために、10万立方メートルの山の土を掘削する本体準備工事が進められています。この工事では落石防止網を2,500平方メートルも使用することになっています。列車が工事現場の下を走らなくなれば、工事がしやすくなることは確かです。

 佐藤建設の重機と新駅 (2)shuku
 しかし、新駅周辺は地質がもろく、地元では土砂災害の記憶が語り伝えられてきた土地です。砂防工事が続き、地すべり対策工事もまだ始まっていない現時点では、とても安全性が確保されているといえる状態ではありません。
 本当にこのまま吾妻線を付け替えてしまって大丈夫なのでしょうか?
 
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