本日、国交省関東地方整備局とJR東日本高崎支社に以下の公開質問書をファックスしましたので、お伝えします。
* 国交省関東地方整備局から届いた回答を以下のページに掲載しています。
https://yamba-net.org/wp/?p=9141
* 国交省の回答に対する当会のコメントを以下に掲載しています。
https://yamba-net.org/wp/?p=9461
—————
2014年9月12日
国土交通省関東地方整備局長
越智 繁雄 様
八ッ場あしたの会
代表世話人 大熊 孝ほか
八ッ場ダム・上湯原地区代替地の整備に鉄鋼スラグが使われたことによるJR吾妻線・川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全性に関する公開質問書
八ッ場ダム予定地では代替地や道路等の整備に大同特殊鋼の有害な鉄鋼スラグが使われたことが大きな問題になっています。この鉄鋼スラグはフッ素や六価クロムなどの有害物質を含むだけでなく、水分を含むと膨張する性質があります。そのため、再生砕石として鉄鋼スラグが使われた道路や擁壁などでは有害物質が徐々に流出する危険性があるだけでなく、鉄鋼スラグの膨張により、構造物が変形していくことも心配されています。
実際に国道17号バイパスの前橋市上細井町付近の擁壁が盛り上がってきているのはこの変形によるものと考えられます。また、付替国道145号線の茂四郎トンネル上流側出口付近で道路表面が凸凹になっていて、「この先段差あり」という表示板が置かれたのも同様の原因によるものだと推測されます。これらの問題を解決するには、有害な鉄鋼スラグの撤去工事が必要です。
この鉄鋼スラグが再生砕石として使用されたのは、S建設工業㈱が元請か下請で工事を行ったところと再生砕石を提供した工事とされており、その中に上湯原地区代替地の整備工事も含まれています。上湯原地区ではJR吾妻線の川原湯温泉・新駅付近で擁壁工事や流路工など様々な工事が行われてきました。この擁壁の空隙を埋める裏込砕石に、鉄鋼スラグを含む再生砕石が使われたとの指摘があります。
このことは、川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全を考える上で、きわめて深刻な問題を投げかけています。
この問題について下記のとおり、質問しますので、真摯にお答えくださるよう、お願いします。ご回答は、9月19日(金)までにFAXまたはメールでお送りください。
記
1 JR吾妻線・川原湯温泉・新駅付近の線路の山側に設置された擁壁の規模と工事期間について
JR吾妻線・川原湯温泉・新駅付近の線路の山側に非常に長い擁壁(写真下)が設けられていますが、この擁壁の規模(長さ、高さ、深さ)と工事の期間を示してください。この工事は何期かに分けて行われてきましたので、それぞれの工事に分けて示してください。
2 上記の擁壁工事の工事業者について
上記の擁壁工事を受注した工事業者名を明らかにしてください。年度によって業者が異なる場合は、年度ごとに業者名を示してください。
3 上記の擁壁工事の裏込砕石の納入業者について
上記の擁壁工事において擁壁裏側の空隙部を埋めるために使用した裏込砕石の納入業者の名前を明らかにしてください。年度によって業者が異なる場合は、年度ごとに業者名を示してください。
4 上記の擁壁工事の裏込砕石に使われた再生砕石について
別紙の資料1(注:文末)は、川原湯温泉・新駅付近で平成24年度に行われた上湯原地区代替地整備工事(S建設工業㈱が受注)の資料で、その3枚目は擁壁工事の断面図です。この断面図を見ると、擁壁の裏込砕石にはRC-40という再生砕石が使われています。RC-40は通常はセメントコンクリートなどの建設廃材を破砕して再生した粒度0~40mmの再生砕石です。
S建設工業㈱が近年、元請か下請の工事で使った再生砕石は大同特殊鋼㈱の有害な鉄鋼スラグを混ぜたものである可能性が高いと指摘されています。鉄鋼スラグは逆有償取引で、販売額より高額な引き取り料が大同特殊鋼から支払われるため、S建設工業㈱が鉄鋼スラグの再生砕石を用いたと報じられています。今年2月19日の衆議院予算委員会でも茂木敏充経済産業大臣が「大同特殊鋼の聞き取り調査の結果、平成二十一年の七月から二十四年の六月まで、販売価格より高い費用を引き取り手に支払ういわゆる逆有償取引が行われたことを確認した」と答弁しています。
JR吾妻線・川原湯温泉・新駅付近に設置された長い擁壁の裏込砕石に使われた再生砕石の内容とその使用量を工事期間の年度ごとに明らかにしてください。
【資料1】以下をクリックすると資料が開きます。
資料1H24上湯原地区代替地整備工事
5 国道17号バイパスの前橋市上細井町付近の擁壁が盛り上がっていることについて
国道17号バイパスの前橋市上細井町付近の擁壁が盛りあがっており、これも鉄鋼スラグを含む再生砕石が擁壁の裏込めに使われたからではないかとの報道がされています(新聞記事を参照)。この付近の擁壁の裏込めに使われた再生砕石の内容と、その納入業者を明らかにしてください
6 付替国道145号線・茂四郎トンネル上流側の道路表面の凸凹について
前書きで述べたように、付替国道145号線の吾妻渓谷区間に造られた茂四郎トンネルの上流側出口付近では道路表面が凸凹になっていて、4ページの写真2のとおり、9月3日時点では「この先段差あり」という表示板が置かれ、その後、へこんだ部分にアスファルトを敷く修復工事が行われました。道路表面が凹凸になった原因は、この付近の付替国道の上層路盤に鉄鋼スラグを含む再生砕石が使われたからだと推測されます。この付近の路盤や路床に使われた再生砕石の内容と、その納入業者を明らかにしてください。
7 JR吾妻線川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全性について
上述のとおり、JR吾妻線川原湯温泉・新駅付近の山側に設置された擁壁の裏込砕石に鉄鋼スラグの再生砕石が使われた可能性が高いのですが、その場合は川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全性を確保する上で、きわめて深刻な問題が生じます。
擁壁が上記5,6で述べたように変形すれば、鉄道の安全性に関わる重大な問題となり、鉄鋼スラグの撤去工事が必要となり、そのために列車の運行そのものを見直すことが必至となります。吾妻線は沿線住民の生活の足であると同時に、観光路線としてきわめて重要な交通網です。撤去工事による長期間の運休は、ダム予定地と上流の草津温泉などに甚大な影響を及ぼします。
10月1日から新しい吾妻線が運用開始となりますが、その前に、川原湯温泉・新駅周辺の安全性を確認するため、少なくとも周辺の擁壁の裏込めなどに鉄鋼スラグを含む再生砕石が使われたか否かの調査を行う必要があります。その上で鉄鋼スラグが使われているのであれば、撤去工事を実施することを優先し、調査と対策工事が終わるまで新吾妻線の運用開始を延期すべきです。このことについて国土交通省の見解を示してください。
以上
(写真1)JR吾妻線・川原湯温泉・新駅付近の線路の山側に設置された非常に長い擁壁
(2014年7月15日撮影)
毎日新聞 2014年8月6日 東京朝刊
「八ッ場ダム建設:国道「路床」にも鉄鋼スラグ 使用不可部分9000立方メートル、行方不明」より
(写真2)付替国道145号線の茂四郎トンネル上流側の道路に表示されている「この先段差あり」(2014年9月3日撮影)
—
2014年9月12日
東日本旅客鉄道株式会社 高崎支社
支社長 黒岩雅夫 様
八ッ場あしたの会
代表世話人 大熊 孝ほか
八ッ場ダム・上湯原地区代替地の整備に鉄鋼スラグが使われたことによるJR吾妻線・川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全性に関する公開質問書
JR東日本が10月1日から新・吾妻線の開通を予定している八ッ場ダム予定地では、代替地や道路等の整備に大同特殊鋼の有害な鉄鋼スラグが使われたことが大きな問題になっています。この鉄鋼スラグはフッ素や六価クロムなどの有害物質を含むだけでなく、水分を含むと膨張する性質があります。そのため、再生砕石として鉄鋼スラグが使われた道路や擁壁などでは有害物質が徐々に流出する危険性があるだけでなく、鉄鋼スラグの膨張により、構造物が変形していくことも心配されています。
実際に国道17号バイパスの前橋市上細井町付近の擁壁が盛り上がってきているのはこの変形によるものと考えられます(新聞記事ー関東地方整備局長への公開質問資料参照)。また、付替国道145号線の茂四郎トンネル上流側出口付近で道路表面が凸凹になっていて、「この先段差あり」という表示板が置かれたのも同様の原因によるものだと推測されます(写真1ー注:関東地方整備局長への公開質問書の写真2)。これらの問題を解決するには、有害な鉄鋼スラグの撤去工事が必要です。
この鉄鋼スラグが再生砕石として使用されたのは、S建設工業㈱が元請か下請で工事を行ったところと再生砕石を提供した工事とされており、その中に上湯原地区代替地の整備工事も含まれています。上湯原地区ではJR吾妻線の川原湯温泉・新駅付近で擁壁工事や流路工など様々な工事が行われてきました。この擁壁の空隙を埋める裏込砕石に、鉄鋼スラグを含む再生砕石が使われたとの指摘があります。
このことは、川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全を考える上で、きわめて深刻な問題を投げかけています。
この問題について下記のとおり、質問しますので、真摯にお答えくださるよう、お願いします。ご回答は、9月19日(金)までにFAXまたはメールでお送りください。
記
1 事実経過について
別紙の資料1(注:関東地方整備局長への資料1参照は、川原湯温泉・新駅付近で平成24年度に行われた上湯原地区代替地整備工事(S建設工業㈱が受注)の資料で、その3枚目は擁壁工事の断面図です。この断面図を見ると、擁壁の裏込砕石にはRC-40という再生砕石が使われています。RC-40は通常はセメントコンクリートなどの建設廃材を破砕して再生した粒度0~40mmの再生砕石です。
S建設工業㈱が近年、元請か下請の工事で使った再生砕石は大同特殊鋼㈱の有害な鉄鋼スラグを混ぜたものである可能性が高いと指摘されています。鉄鋼スラグは逆有償取引で、販売額より高額な引き取り料が大同特殊鋼から支払われるため、S建設工業㈱が鉄鋼スラグの再生砕石を用いたと報じられています。今年2月19日の衆議院予算委員会でも茂木敏充経済産業大臣が「大同特殊鋼の聞き取り調査の結果、平成二十一年の七月から二十四年の六月まで、販売価格より高い費用を引き取り手に支払ういわゆる逆有償取引が行われたことを確認した」と答弁しています。
貴社はこのように上湯原地区で大同特殊鋼㈱の有害な鉄鋼スラグが再生砕石として使われたことをどこまで把握しているのでしょうか。このことに関して貴社が把握している事実経過を明らかにしてください。
2 JR吾妻線川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全性について
JR吾妻線・川原湯温泉・新駅付近の線路の山側に非常に長い擁壁(注:関東地方整備局長への公開質問書の写真1)が設けられています。この擁壁の裏込砕石に鉄鋼スラグの再生砕石が使われた可能性が高いのですが、その場合は川原湯温泉・新駅付近の鉄道運行の安全性を確保する上で、きわめて深刻な問題が生じます。
国道17号バイパスの前橋市上細井町付近の擁壁や、付替国道145号線の茂四郎トンネル上流側出口付近の道路表面のように、この擁壁が変形すれば、鉄道の安全性に関わる重大な問題となります。鉄鋼スラグの撤去工事が必要となり、そのために列車の運行そのものを見直すことが必至となります。吾妻線は沿線住民の生活の足であると同時に、観光路線としてきわめて重要な交通網です。撤去工事による長期間の運休は、ダム予定地と上流の草津温泉などに甚大な影響を及ぼします。
10月1日から新しい吾妻線が運用開始となりますが、その前に、川原湯温泉・新駅周辺の安全性を確認するため、少なくとも周辺の擁壁の裏込めなどに鉄鋼スラグを含む再生砕石が使われたか否かの調査を行うことを貴社は国土交通省に求める責任があるのではないでしょうか。その上で鉄鋼スラグが使われているのであれば、撤去工事を実施することを優先させ、調査と対策工事が終わるまで新吾妻線の運用開始を延期すべきです。このことについて貴社の見解を示してください。 以上